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第56話

日生を無事に家まで送り届けて僕も凛太郎と合致した。 「おひさー」 「凛太郎!会いたかった!」 「相変わらずキモいな、お前」 今日は居酒屋!居酒屋と言えばお酒! ヤケ酒してやる!まあ僕お酒弱いけど。 「乾杯!」 「ああ、乾杯」 僕はビールが飲めないからカシスオレンジ。 凛太郎は見た目通りビール。 乾杯をしてカシスオレンジを半分ほど流し込んだ。 「プハ〜!うまい!」 「カシスオレンジでプハ〜とか言ってんじゃねえよ」 「別にいいじゃん。ビール飲めないもん」 「まだまだお子ちゃまだな」 お子ちゃまかもしれないけどこう見えて枝豆とたこわさ大好きだからね? 枝豆とたこわさが好きなら大人でしょ。 「で、マネージャーの仕事はどうなんだよ」 凛太郎はどうしてこうも聞いてほしいことを聞いてくれるんだ?天才か? 「聞いてよー。日生と莉羽が共演することになっちゃってさ。来週の火曜に顔合わせがあるんだよー」 「それのなにが不満なんだ?」 「はあ?元恋人と会うんだよ?気まずくない?会いたいけど……気まずいじゃん」 枝豆とたこわさを口の中へと放りこんでいく。 凛太郎は唐揚げとポテト。よっぽど凛太郎の方が子供な気がするけど……そこはあえてスルーで。 「気にすることないだろ」 「気にするでしょ。元恋人だよ? あー!!!そうだ!!!」 僕の大声のせいで凛太郎は掴んでいた唐揚げをポトッと落とした。 「な、なんだよ」 「莉羽の恋人にキモオタって言われたんだよ!酷くない?急にだよ?」 「……間違いではないだろ。てかあいつ彼女いたんだな。失恋したな可哀想に」 そんなことを言ってくる凛太郎にギロリと鋭い目線を送り付けてやった。 「別にいいし。奪うだけだし」 「なにが奪うだよ。そんな度胸もないくせに」 正論すぎてぐうの音も出ない…… 「尊い莉羽様になんであんな女が……」 「ファンやめたんじゃなかったのかよ」 「あっ……。そんなこと言ったっけ?」 「言ってたぞ。思い出したら辛くなるとかで」 僕はなんでもかんでも凛太郎に話しすぎだろ! 僕のバカ!凛太郎はズケズケと言ってくるからたまに心臓を抉り取られそうになるんだよ! 「この業界を選んだのは僕だけどやっぱりしんどくなっちゃう。思い出すから」 「まあ思い出すっていっても未だにあのアイドルに褒められた絵の夢、追いかけてんのお前じゃん」 「……まあそうだね」 確かに結局、莉羽との思い出を消したくないのは僕の方だ。 この三年『莉羽のことは諦める』と100回は口にしたかもしれない。 それなのにまだなにかの可能性を待っている僕は……

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