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第57話

『〜〜♩ 君の瞳に〜……――』 たまたま見ていた看板に目を惹かれて劇場へと入っていくと人形のような綺麗な顔をしている男の子が踊っていた。 「綺麗だ……」 まるで世界が変わったような感覚がした。 白い肌、透き通った瞳、声。 全てが美しかった。初めて虜になった瞬間だった。 持ってきていたスケッチブックでその子を描いた。 『描かなきゃ』そう思わされたから。 「なに書いてんの?」 「うわっ!!びっくりした……な、なにも書いてない!」 その男の子は僕にそう声をかけてきた。 『キモイ』と思われるかもしれないという恐怖心から描いていた絵を急いでリュックにしまいこんだ。 近くで見れば見るほど綺麗で美しくて眩しかった。 「キミ名前は?」 「高月揺瀬……」 「俺は速水莉羽。来週も来てくれるよね?」 「莉羽……うん!見に来るね」 その日から僕は毎週のように莉羽がいる劇場へと足を運んだ。 他のメンバーもいたのにも関わらず僕の目に映るのはいつも莉羽だった。 会いに来る度やっぱり思うことは『綺麗』『美しい』だった。 初めて莉羽を見た瞬間からファンになっていた。 そんなある日、LieNがネットニュースで話題になりそこから莉羽は遠い存在となっていった。 チケットも取れないほどの人気アイドルとなってしまった莉羽はもうこの劇場で見れないんだとショックを受けたと同時に『よかった』とも思った。 莉羽を追いかけ続けて二年目の時、莉羽がインストを開設したと聞いて速攻フォローをしにいくとフォローが返ってきた。間違いかもしれないと真実を聞くために握手会へ行くとあの時の莉羽がいた。 やっぱり美しくて綺麗で緊張で上手く話せなかった。 「あー……キミ劇場の時も来てくれた子だよね?」 僕のことなんて忘れているだろうと思ってたのに莉羽は覚えてくれていて余計に莉羽の虜になった。 ずっと尊くて仕方ない、そんな相手―― * * * * * * 〜〜♩ 「え、ゆ、夢……?」 夢を見た。莉羽と出会った時の夢。 そんな夢を見たせいでやっぱり尊い存在だと再び思わされてしまった。 「昨日どうやって帰ったっけ」 あまり飲んだつもりはないはずなのに、どうやって帰ったのかもわかないほどには飲んだらしい。 「なんで今あんな夢見ちゃうかね〜」 『忘れなきゃ』と何回も思うのに心の奥底ではいつも莉羽がいて、前に進ませてはくれない。 「ずるいよね〜。僕、別にいちごミルク好きじゃないのになあ」 冷蔵庫をあけるといちごミルク。 莉羽のためにストックしていた物と新しく買ってきた物。 「賞味期限、三年前って……」

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