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第58話
「か、顔合わせだ……」
日生と莉羽のBLドラマ撮影のための顔合わせが今日行われる。
横で喜んでいる日生とは逆に僕は緊張で吐きそうだ。
「マネージャー!なに緊張してるの?」
「うう……なにもない……」
「ほらほら!マネージャーがちゃんとしてくれないと」
「う、うん……」
そうだ、僕がちゃんとしなきゃいけない場面じゃないか……!
だけど……本当にどんな顔をして会えばいいんだ……?
いや寧ろ三年も会ってないとなると僕って気付かないかも……?
コンコンッ
監督が指定した場所のドアの前でゴクリと唾を飲み込んでいざ参る!
「こ、こ、こんにちは〜……。一緒に共演させて頂くことになった飯田日生と日生のマネージャーをさせて……――」
顔を上げると莉羽が驚いた顔をしてこちらを見ていた。
『なんでいるんだよ?』と鋭い視線。
「初めまして。速水莉羽のマネージャーさせて頂いております。葛西と申します」
「あ、日生のマネージャーの高月です。本日はよろしくお願い致します」
「こちらこそ。初共演楽しみです」
「アハハ……」
やばいやばい……!莉羽の目が燃えている。
『てめえぶっ殺すぞ』って顔をしてる。
うう……怖い……死にたい……無理だ……
「莉羽くんー!俺、一緒に仕事したかったんだよ!よろしくね」
「俺もご一緒できると聞いて嬉しかったです。今回はよろしくお願いします」
相変わらずのアイドルスマイルだ。
ああ……神様仏様閻魔様。僕を助けて頂けないでしょうか……?
「……高月さんでしたっけ。いきなりの質問で申し訳ないんですがなぜマネージャーを?」
視線に怯えていると莉羽が話しかけてきた。
それだけでも喜ばしいことなのになぜか……怖い。笑ってるのに笑ってない。
「ああ……そ、その……――」
「俺に会うためだよね?ね、マネージャー?」
「え?あ、う、うん?」
きっと日生なりの手助けだったんだと思う。
日生のおかげでこの場は切り抜けられそ――
「へえ。俺じゃなくて?」
え、え、えっと……な、なんで?
なんでそんなこと言うの……!期待しちゃうって。
「えっと……り、り、莉羽さん……?」
「ふーん。俺、莉羽さんなんだ?」
じゃあ莉羽って呼んじゃっていいの?
普通に話しちゃってもいいの?そうなの?
「え、なになに?二人まさか知り合いだったの?」
「知り合いってより〝深い仲〟ですよね?ね?高月さん?」
莉羽は一体僕にどんな答えを求めているんだああああ……!!!!
でもなんか……普通に接してもいいならよかった。少し……安心だ。
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