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第60話

「それじゃ僕達も失礼しま――」 監督も帰ったし僕達も帰ろうとドアノブに手をかけた瞬間、僕の手は莉羽の手に包まれていた。 「えっと……?」 「高月さん。久しぶりに会ったんだし少しお話しませんか?」 日生の方をチラッと見るとプクーと頬を膨らませていた。 「あ、日生を送り届けなきゃならないので後でもよろしいでしょうか?」 「後でって……どうやって連絡とるつもりですか?俺達、連絡知らないですよね?」 た、確かに……莉羽と別れて着拒もされていたし、LIMEもブロックされ、インストのフォローも外された。 僕達には連絡手段がないのだ……! 「……連絡先、教えて頂けませんか?」 きっと莉羽はこの言葉を求めていたんだろう。 ニヤリと口角をあげて「いいですよ」なんて言っていた。 こうして僕達はまたLIMEを交換しあった。 「それじゃ後で連絡しますね!あ、ドラマの方ですが……よろしくお願い致します!失礼します」 ドアを思いっきり閉めた瞬間、頬が緩んだ感覚がした。 だって莉羽とまた連絡とれるなんて奇跡じゃないかー!!! この嬉しさを誰に伝えればいい?やばい……嬉しすぎる。 「マネージャー」 「――」 幸せ!幸せ!やっぱ僕は莉羽が好きだ!アハハ! 「マネージャーってば!!」 「ん?な、なに?」 嬉しさのあまり日生の存在を忘れてしまっていた。 僕はなんて酷いマネージャーなんだ。 「莉羽くんと会うの?」 「う、うん?まあ久しぶりだし」 「えー嫌だなあ。俺とはプライベートで会ってくれないくせに」 またそんなことばかり言って。 日生は僕がマネージャーに決まった時からベタベタと甘えてくる。 「マネージャーがいないと無理!」とか最初は駄々をこねていたくせに今となっちゃ人気俳優にまでのぼりつめちゃって。 それでも僕に対する態度は変わらない。 まるで莉羽に対する僕じゃないか……って、ま、まさかそんな感じ……!? いやないか。日生って誰に対してもこんなだし。 「ちょくちょく会ってあげてるじゃん」 「嫌だ!莉羽くんと会うのが気に入らない」 「アハハ〜……今度焼肉行こう?ね?」 「焼肉よりマネージャーがいい」 こんな時どうやって上手く交わせばいいんだ……? 「はいはい、また今度時間とってあげるから」 「……絶対だよ?約束してくれる?」 「うん、約束ね。とりあえず帰ろう」 「嘘ついたらもう俺仕事行かないから!」と拗ねていたけどなんだかんだ聞き分けのある日生は本当に育てやすいというか……なんというか…… まあでも日生には悪いけど今は本当に……さっさと帰って下さい。

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