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第16話

***  花をきちんと花瓶に生ける間も与えられず、『もう一秒も我慢できない』と言い張る男に強引に寝室に連れていかれた。急な展開にためらっているうちに、手馴れた相手に服を剥ぎ取られ、慧はベッドに押さえつけられてしまう。 「あんたって本当に、綺麗な目してる」  二人の間を隔てている眼鏡を最後に取り上げ、ライトは熱い眼差しで慧の瞳を覗き込む。 「眼鏡、返してほしい……。君のことが、よく見えなくなるから……」  恥じらいを帯びたか細い訴えに、相手はクスリと笑った。 「そんなに離れねぇよ。はっきり見えるように、こうして近くにいてやる」  緊張し硬くなっている慧の背をグイと引き寄せ、唇が触れるほど近くでライトは囁く。押しつけられた腰にまだ着衣のままの相手の昂ぶりを感じ、頬がカッと熱くなる。同時に体の奥に点った火種がじわじわと煽られていくような感覚に、慧はひどくうろたえる。  この年まで恋人がいないどころか遊びも知らず、他人と触れ合うのは初めてだ。それなのに、羞恥や不安を感じる間もないくらい強引に奪ってほしいという熱情が湧き上がってきて、慧は我ながら狼狽してしまう。 「綺麗な肌だな……」  電気をすべて消すことは許してもらえなかった。ベッドヘッドに置かれたスタンドの淡い光に浮かび上がった、男にしては白くきめ細やかな慧の肌の上をライトの指が滑り始める。 「あっ……ライト……んっ」  首を伝って二の腕に下りる指先がこそばゆくて、思わず漏れてしまう声を唇に奪われる。熱く吸い上げられ舐められて誘うように開くと、歯列を割って舌が入り込んできた。怯え震えている慧の舌を絡め取り、ライトの舌は口腔を縦横無尽に探る。飲食と会話にしか使わないと思っていた器官が、こんなに敏感に相手の熱情を受け入れられることを初めて知る。 「ん……ライト……っ」 「ケイさんの唇、癖になるな……」  一瞬離れた唇で熱くつぶやき、零れ落ちる唾液を舐め取りながら、ライトは飽くことなく深いキスを繰り返す。  緊張の取れない慧の腕をさすっていた指が、わきを這い上がり胸元に触れた。そろそろと周辺を撫でながら、徐々に先端の飾りにたどりつくと、慧の体はびくりと震えた。ライトの繊細な指が両方の胸先をつぶすように愛撫し、軽く摘んでくるたびに、体の芯がじんじんし肩が跳ね上がってしまう。 「そこ……なんか……」 「ん? 何だ?」 「あまり、触らないでほしい。変なんだ」 「あんたって可愛いな、年上だけど」  慧の不安げな訴えを強引な年下の男は笑って流し、体をずらすと慧の舌をさんざん貪っていた唇をその部分に触れさせてきた。 「あっ……」  ちゅっと音をさせて吸われた瞬間走った電流のような感覚に思わず腰が浮く。 「硬くなってきたぜ。ここ、いいんだろう?」  嬉しそうに言われ全身が真っ赤に染まる気がしたが、意地悪な唇に音を立てて吸われながらもう片方を指で転がされるたびに、体が正直に反応してしまう。男のくせにそんなところで感じてしまうなんて、はしたないと思われていないかと不安になる。 「あぁっ……駄目だ、ライト……」  みっともないくらい甘い声に自分でも狼狽するが、最初はくすぐったいだけだったそこが信じられないくらい気持ちよくなってくるのはどうしようもない。  キスされ触れられている部分から甘い麻薬が流し込まれ、急速に中心に集まっていく。自分の体の如実な変化を恥じらう余裕もなく、慧はもじもじと腰を動かした。 「ケイさん、下も触ってほしいのか?」 「そんなこと……っ」  頬を染め首を振るが、上を向き始めている花芯は正直に欲しいと訴えている。相手の視線がそこに移ったのを感じ、慧は消え入りたいほどの羞恥を覚えた。 「あんたが嘘が上手だっていうのは今日わかったけど、ここは嘘つけないみたいだな」  ひどく嬉しそうな声とともにいたずらな指先で根元から先端までをすっと撫でられると、思わず甘い呻きが漏れ濡れてくるのを感じる。 「ライト、見ないで……こんな……」  はしたない姿に軽蔑されたくなくて泣き声で訴えるが、相手は逃げようとする慧の腰をしっかり捕まえてしまう。 「触ってないのにもうこんなに濡らしてくれて……嬉しいよ。もっともっと、あんたを気持ちよくしてやりたい」 「ひっ、あっ!」    しっかりと閉じていた脚をグイと開かれ体を割り込ませてきたライトに昂ぶった先端をいきなり咥えられ、慧の腰は跳ね上がる。手のひらで双球をやさしく転がされながら、弱い裏筋を舌でなぞり上げられる。 「やっ、ライト、やめ……っ」  濡れた声を上げるほど愛撫は執拗になり、慧はあまりの快感におかしくなりそうだった。それでもライトの口中に出してしまってはいけないと必死で耐える。  ライトは慧が達しそうになると唇を離し、宥めるように後ろの入口の部分を指でくすぐってくる。慧がこぼす蜜をすくい取ってはそこに塗り込め、指の先でかすめるように縁をひっかける。愛する相手とはいえそこをみつめられることも弄られることも恥ずかしくてたまらなかったが、求めるように触れてくる指に応え、慧の蕾はいつしか誘うようにひくつき始めていた。 「なぁケイさん、俺もそろそろまずいよ、こんなあんた見せられちゃ……っ」  ライトは余裕のない声で言うと慧の幹を握った手の動きを速める。 「やっ……ライト……っ」 「一回いってくれ」 「あっ、あぁ!」  急速に追い上げられ促されて、愛する男の熱い視線を感じながら慧は達してしまう。ひとりでするときとは比べ物にならない深い快感に頭の中が真っ白になり、不安になって両手を伸ばすとライトがしっかりと背を抱き寄せてくれた。 「ケイさん……すげぇ色っぽい。好きだぜ」  甘い囁きとともに耳朶を噛み軽く口づけると、ぐったりと余韻に浸っている慧の体を大事そうに横たえてライトは服を脱ぎ始める。全裸になった男の服の上からではわからなかった逞しい肉体に、慧の胸はおかしいくらいときめいた。そしてその中心で欲望を主張している猛々しいものに視線が吸い寄せられ、体の奥がずくんと疼く。  胸を高鳴らせながら相手の引き締まった体をぼんやりとみつめていると、膝裏に手をあてがわれ両脚を開かせられて体がすくんだ。慧の解放したもので濡れた手を、ライトが蕾に触れさせてくる。 「俺だけのものになってくれ」  熱情を帯びた一方的な宣言をぶつけられ、全身が喜びで震えた。何と答えたらいいのかわからずにただ頷き、手を伸ばして相手の首を引き寄せ自分からキスをする。お返しに深く口付けられ陶然とする中で、後ろに回されたライトの指が蕾をくぐって中に入り込むのを感じた。ゆっくりと開いてくれようとしている優しさが伝わり、初めてであることの不安は次第に消えていく。 「ライト……」 「ん? 痛いか?」  心配そうに聞いてくる相手に微笑を返す。 「嬉しいよ……君にされることなら、なんだって嬉しい。ありがとう、僕を好きになってくれて……」  ライトの男らしい眉が困ったように寄せられた。 「全く、そういうことを言うからあんたには敵わないんだよっ。この俺がこんなに余裕なくしてがっつくなんて……」  言葉どおり余裕を失った声が下りてくるなり、両脚を持ち上げられ折り畳まれた。とんでもない格好をさせられ羞恥で思わず瞳を閉じた慧の後孔に、熱く濡れたものが押し当てられる。 「ケイ、入るぞ」  呼び捨てられて体はさらに熱くなる。あり得ない部分を広げられる感覚とともに、熱した欲望が押し込まれてくる。圧迫感で声も出せない慧の腕をライトは宥めるように撫でながら、少しずつ腰を進める。あまり締めつけてはライトがつらいだろうとわかっているのに、なかなか力を抜くことができない。 「ご、めん……きつくない……?」 「馬鹿、つらいのはあんたの方だろうが。俺は、ヤバイくらい気持ちいいよ、あんたの中、温かくて……」  しっかりと閉じていた目をそっと開けてみた。官能に耐えるライトの表情は飾りも気取りもない素直な彼自身のもので、慧の全身はさらに深い悦びに包まれる。じわじわと入ってくる相手の中心が内側からこれまでの孤独や寂しさを消していってくれるような、そんな気がした。 「ライト……」  手を伸ばし相手の肩に掴まって、強張っていた体の力を抜く。 「もっと、奥まできてほしい……」 「ったく、何てこと言いやがる」  ライトは力強い手でしっかりと慧の体を抱えると一気に突き上げてきた。 「ああっ……!」  つらくないと言ったら嘘になる。けれどそれ以上に、心が満たされていく感じが心地いい。 「やっ、あ……はぁ……っ」  己を深く慧の中に沈めたまま、ライトはしこった胸の飾りを爪の先で弾き、萎えかける花芯を扱き上げて快感を送ってくれる。 「あんたも、一緒に気持ちよくなってくれ」  巧みな愛撫に応え慧の中心がまた熱を持ち始めるのを見て、ライトはゆっくりと腰を使い始めた。 「あっ……あぁ、ライト……っ」  中を探られ擦られる未知の感覚は、最初は慣れずに違和感があったが、局部に加えられる愛撫とともに次第に気持ちよくなってくる。はしたないとか考える余裕もなく慧は甘い声を上げ続け、相手のリズムに合わせて素直に体を揺らす。 「すげぇ、いい……っ。ケイ、愛してる」 「僕、も……っ、や、ぁ、い……っ」  ちゃんと答えようとしてもまともに言葉にならない。ライトも次第に昂ぶってきたようで、激しく慧を求めながら愛撫で絶頂に導いていく。 「いってくれ」 「あぁっ!」  とろとろと蜜液を零す先端部を執拗に扱かれ、慧は二度目の絶頂に導かれた。白濁で相手と自分の体を濡らしながら、しっかりとライトのものを包み込み、締めつける。大きくなったものが中で弾けた瞬間、感動にも似た幸福感が全身を包んだ。 「ライト……」  この瞬間が夢になって消えてしまわないように、やっと手に入れた大切なものを慧はしっかりと両手に抱き締めた。

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