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第3話「仲、いいっすね」
「何そんなに驚いてんだよ。バイトの代打センキューって」
「おっ、おう」
「ビビっちゃってカ~ワイ~」
そう言うと真島は履いていたジャージのズボンで濡れた手をぬぐった。
「ビビってねえわ。しっかり手、拭いてこい。小学生か」
「小学生じゃねえわ。灰谷の潔癖」
「潔癖じゃねえわ」
いつものやりとりを交わすと、真島は「おっ何それ」と目ざとく灰谷の手にしたコンビニの袋に目を止めた。
「ああ、これな。肉……くすぐってえって」灰谷は身をよじった。
袋の中身をのぞき込んでいた真島が、肩にアゴだけのせ、首を振ってカクカクさせたからだ。
こういうちょっとしたジャレを真島は最近してくるようになった。
「ホントオマエ、小学生か」
「灰谷の敏感鈍感」
「なんだそれ」
「ゴロがいいだろ。ゴロがさ。敏感鈍感」
耳元でゴシャゴシャ言うから、くすぐったくてしょうがない。
「くすぐってえって」
「ほんで何?肉まん?」
アゴはどけたが代わりにヒジをのせ真島は袋の中身をのぞきこむ。
「肉まん1ピザまん2」
「お~ナイス!食べようぜ。灰谷どっち?」
「オレはどっちでもいい」
「じゃあオレ、ピザま~ん。友樹は……」
いつの間にかゲームを終えていた友樹がこちらを見て微笑みを浮かべていた。
「あ?どうした友樹、ニコニコして。いや、ニヤニヤか」
二拍ぐらいためて友樹は言った。
「――仲、いいっすね」
ドカン!
まるで小さな爆弾が破裂したかのように素早く灰谷からカラダを離した真島は「あ~?別に仲良くねえし。クサレ縁だし」と、ちょっと巻き舌で言い捨てた。
その口は小さくとがり、目が泳いでいる。
わかりやすすぎる。
潔癖のお返しとばかりに「オマエ、顔赤くねえ?」とテキトーに灰谷がツッコめば、本当に少し顔を赤らめた。
「はあ~?赤くねえし!何言ってんだよ!」と腕に強烈なグーパンチをお見舞いされた。
「イタっ!!」
テレすぎだろ馬鹿力。
「んで、友樹はどっちにすんだよ?」真島が吠えた。
「あ~ボクもピザまんがいいっす」と、さらにニコニコしながらのんびりした声で友樹が返した。
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