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第23話 未来は僕らの手の中
『未来は僕らの手の中』……か。
オレはため息つきつつ窓の外を眺める。
広いグラウンドは空っぽで土ぼこり。
一限が始まってもオレは担任・田中のメッセージが頭の中で回っていた。
未来……未来か。
僕ら……オレと灰谷。
僕らの、オレたちの未来はどうなるんだろう。
親父が言ってたみたいに二十歳になって三人で酒なんか飲める日がホントにくるとは今のオレにはまったく想像がつかない。
そう。オレはいつも目の前の事で精一杯。
オレのしたい事って……。
なんだろう~。
なんだろう~。
なんだろう~。
……。
……。
……灰谷とツーリング……ってバカ、そういうことじゃなくてさ。
オレは……なんだろう。
ホント、なんもねえなあ。
中学からこっち、灰谷スキスキスキばっかで。
いやでもそんなんダメだろばっかで。うつうつ悩んでばっかで。
ばっかばっかでバッカ丸出し。
進路……将来……未来……。
ああ。遠すぎて何も見えやしない。
校庭から教室に視線を戻せば右斜め前に座ってる佐藤の姿が目に入った。
佐藤は授業中でもせっせとノートに鉛筆を走らせている。
絵、うまいよな、なんて思っていると佐藤がオレの方をちらりとふり返り、腕の間から見てくれというようにノートをスッと出してきた。
『こづかい1万円カット~』の吹き出しがつき、田中が泣き、角を生やした鬼嫁がそばで腕組みして立っているイラストだった。
似てる! オレは吹き出しそうになる。
佐藤がまたふり返りニヤリと笑った。
オレは親指を立てていいねと応える。
佐藤は保育士希望だったよな。
でもこっち方面でもいけそうだな。
中田は……。
佐藤の前の席に座ってる中田の背を見れば、なんかいつもより縮こまっているように見えるのは気のせいか?
中田、なんかあったのかなあ。
そういやあ夏休み終わりに言ってた彼女の杏子ちゃんの浮気はどうなったんだろう。
まあでも中田はオレたちにはあんまり弱みとか見せねえからなあ。
中田は……服飾系だろ。
夏休みに売り子の経験したいからってバイトに行ったぐらいだから本当に好きなんだろうし。
部屋の中、服で埋まってるし、音楽の知識も深いオシャレ番長。
灰谷は……。
そう、このあいだ席替えがあって灰谷はオレの一つ後ろの席になってしまった。
授業中にこっそり眺められなくなったのはちょっと残念なんだけど、ふり返るとそこにいるってのも悪くはない。
でも、オレの背中を灰谷が見つめてると思うとなんかムズムズする。
ってそれはいいとして、灰谷はとりあえず大学って言ってたな。
何系に進むんだろうか。
久子母ちゃんみたいに建築かデザイン?
まあ勉強もできるし、楽勝だろう。
――――で、オレは?
成績も中の中。
みんなと違って特別なんか好きって事もねえしな。
『未来は僕らの手の中』
自分の手のひらを見つめてみる。
男にしては小さめなオレの手。
刻まれたシワ。
ってこういう事じゃねえんだよな。
『未来は僕らの手の中』
ホントかよ?
あ~めんどくさ。
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