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第6話
磯城は意識を取り戻した。ここは……褥の中にいた。半ば朦朧とするなか目を開けると、自分を見下ろす葛城と目が合った。はっとして起き上がろうとして止められた。
「大丈夫ですよ、このまま」
そう言って葛城は磯城の体を弄った。磯城は激しく動揺した。今のこの状態が理解できない。
「何をなさっているのです。東宮……よしなさい」
「ここでは葛城とお呼びください……心配はいりません、私に全て任せてください」
葛城の手は止まらない。まだふらつく意識と体。磯城は全力で葛城を押しのけた。
「東宮よしなさい、私を誰だと」
「だから葛城とお呼びください。そのように抗いなさると、手荒な真似をしたくなります。静かに……おとなしく身を任せてください。よろしいですね……」
まるで小さい子供をあやすような物言いに、己の方が無体な抵抗をしているようだ。しかし、このようなこととても許すことはできない。己は仮にも葛城の叔父で後見なのだから。
「何をしているのか分かっているのですか?私はあなたの叔父ですぞ」
「勿論分かっております。そのためにこの対屋を用意し、お迎えしたのですから」
磯城は驚きのあまり声も出ない。激しく混乱した。そして振り絞るように発した。
「だ……だから……叔父だと……女ではない」
「叔父と姪、叔母と甥の縁などざらにありましょう。現におじい様、先の大王様最初の后は叔母に当たられる方でした。叔父と甥の縁があってもよろしいでしょう。確かに叔父上は女ではない故、正式に妃としてお迎えできないのは無念ですが、私としては、ここに吾が妃としてお迎えした心持ちでおります」
吾が妃……何を言っているのだ……とにかくここを出ないと、葛城にとってもこのようなことはよくない。しかし体に力が入らない。そして身の内が熱い。
夕餉の最後に飲んだ水には媚薬が入っていたのだ。淡水が花郎に秘伝の薬を調合したのだ。
花郎は容姿端麗で頭脳明晰でないと入れないという、新羅の青年組織だ。そのため王宮の花とも言える存在で、王や王子の相手を務めることもあると言われる。
葛城はそこに目を付けた。磯城を自分のものにするため淡水に協力させた。
磯城に男の経験はないはずだ。女は初めて抱く時痛みを覚えるようだが、男も最初はそうだと淡水は言った。だから薬を使う。薬で磯城の抵抗を奪い、快感だけを追えるように優しく抱いてやりたい。そう考える葛城に薬を使う罪悪感は無かった。むしろ磯城のために良いと思っている。
「さあ叔父上、楽になさってください。私にまかせて、ね……」
そう言いながら葛城は、磯城の体を弄っていた手で胸の粒をつまんだ。その瞬間磯城の体は電流が流れたように反応した。
「ああっ……だめだ」
弱々しく逃れようとする磯城の体を掴んで、葛城は磯城に口付けた。磯城が顔をそむけるようにして逃げると、葛城は力づくで磯城の口唇を奪おうとしてくる。逃げ続けるていると、ついに痺れをきらした葛城に髪を掴みとられ、口唇を吸われた。
はじめは優しく、だが次第に激しくなり、磯城はむさぼられはじめた。
触れ合った舌先が敏感になってくると、磯城はその苦しさに喘いだ。
「叔父上、いいえここでは磯城と呼びましょう。磯城、そのまま身をまかせれば気持ちよくなりますよ」
磯城は顔をそむけた。今できる精一杯の抵抗だった。余りの事に涙が出そうになるのを必死にこらえた。泣くわけにはいかない。
「なぜ……なぜこのような……」
「磯城を、あなたをほしかった。私が欲しいのはあなたただ一人」
そう言いながら葛城は、磯城の首筋、喉元そして胸元に唇をはわせ、淡い色の粒を含む。磯城の体が大きく仰け反った。逃れようとする磯城を逃がすまいと抑え込まれ、更に舌で愛撫される。
夢中になって愛撫する葛城は、小さな粒が突起になってきたことを感じ、磯城の体が反応しはじめたことを知る。葛城はその舌で執拗に愛撫した。
やがて、磯城の抵抗が弱々しいものに変わってくる。磯城の体の内側で、抵抗をやめようとする甘い疼きがあった。
しかし、葛城の愛撫が下がり腿を撫でられて、更に奥に入り込むと、磯城は僅かに残った理性で抗う。
抗う磯城を、葛城は力づくで抑え無理やり足を開かせた。磯城は渾身の力を振り絞り逃れようとするが適わない。
磯城と葛城には歴然とした力の差があった。既に背丈は追い越されていた。まして酔いの残る体に薬も効いているため、本人が思うほど力は出ていなかった。
葛城は磯城の秘奥に、淡水の用意した丁子油を垂らすと指の先端を入れる。
「あっ、だめだ……や、やめなさい」
やめるどころか、葛城は指を根元まで入れる。磯城は仰け反りながら必死に抗う。
「磯城、ここは初めてですね。嬉しい……あなたの初めてを私が……さあ、もうおとなしく私を受け入れるのですよ」
丁子油には催淫効果もあった。葛城の手指が磯城の内奥の官能に触れる。
「んっ……ん……っ」
磯城が抑えきれない喘ぎを漏らす。理性、そして抗う力も残っていなかった。そんな磯城を、葛城は益々指淫で攻め立てる。
葛城はもう少し、磯城が自分を制御できなくなるまで翻弄させたかったが自分も限界だった。
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