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第三章 揺れる心(1)

 見知らぬベッドの上だった。長身の男の白いガウン姿が朧げに視界に映り、上条は慌てて上体を起こした。違和感を覚え辺りを伺う。ホテルの一室か。キングサイズのベッドの周辺は壁紙に至るまで白を基調として、アクセントに色が使われるといったクラシカルな装いだ。  ベッドの上に投げ出した上条自身の両下肢にぎょっとする。肌蹴たガウンから下半身が露出し、あと僅かで局所が見えそうだった。しかも下着をつけてさえいないのだ。上条はデュベを手繰り寄せた。 「服は……」  動揺した上条の声は掠れている。 「ランドリーだ。私がおまえを風呂に入れて、着せ替えた。プレスに時間はかからないが、必要ないだろ? もう少し眠ったほうがいい」  ブランデーの入ったグラスを持ったまま、月城の整った顔がベッドへ入ってきた。  「あの……俺……どうして、ここに」 「ヘリから降りたあと車に乗ったところまでは覚えているか? ここへ来る途中、一時的に立ち寄ったところは機密事項の場所で、管理しているのは中国のシンジゲートだ。彼等は許可がない者の侵入に敏感なんだ。だから眠らせた。――すまない」 「あのときのキスは……」 「ああ、そういうことだ」  今さらのように、機体での濃厚なキスを思い出して赤面する反面、あれは眠らせるためだったのかと、上条はどこか気持ちが冷めていく気がした。相手は、そんな上条の機微(きび)を捉えているのかいないのか構わずことを始める。月城はブランデーを口に含み上条の上にのしかかってきた。しっかりとホールドされたわけではないから、逃げようと思えばできたはずなのに。唇を重ねて上条の口腔内にブランデーを流し込んできた。――上条は抵抗することなく、少しずつそれを嚥下していった。 「………んっ…ふ……」  少し酔ったのか頰が朱に染まる。昨夜から何も食べてない空きっ腹にブランデーのロックは強過ぎたようで、酔いが深くなるばかりだ。月城の長い指が、ツツーッとガウンの上から上条の敏感な肢体を撫でた。ビクンと体が微かに跳ねたのを見届けて、今度はゆっくりと掌全体で腰のラインから頸へと辿る。ガウンの隙間から忍ばせた掌が上条の敏感な箇所へ直裁い触れて、上条はあえかな声をあげた。 「……あっ……んん」  体の芯から火照りを感じたが、酒ばかりの所為ではないだろう。 きっと月城のもたらす熱にも酔わされているのだ。

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