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第三章 揺れる心(2)

 遭って、まだ日も浅い。相手は危険な男だ。――しかも同性。否定する理由を頭に並べてみるが、上条は抗う気になれなかった。それどころか、彼の暑い熱に翻弄されたいという自覚さえあったのだから。――どうかしている。月城のどこに、こうも惹かれるのだろう。そんなことをぼんやりと思いながら、彼のなすがままに体をあてがっていた。 「今日は抵抗しないのか?」 「……」 「同情だろうと、私は据え膳は喰らう」 「……」  言葉どおり月城は大胆にも上条の両下肢を開き、股の間に滑り込んできた。片方の膝を抱え内腿に濡れた舌を這わせて、気まぐれに皮膚に吸いついてくる。時折わざと上条を見上げる視線に傲慢な笑みを滲ませて、刺激を与えてはその反応を楽しでいるふうだ。上条は劣情を晒され体の芯から熱くなる。先刻から片方の掌で弄られていた陰茎は、すっかり硬度を増して形を変えていた。月城の手が陰茎から離れた隙に、上条はバスローブで隠そうとしたが腕を掴まれて阻まれた。 「いやだ、み、見ないで……」 「感じているから?」  カァと全身が紅潮した。 「男に触れられたことはないのか」 上条の整った眉頭ピクリと動いて、声が僅かに上擦る。 「……あ、あります……」 「堂本か……」  堂本の名が、上条の嫌な過去を思い出させて、あの夜の出来事がまざまざと蘇った。堂本の荒い息遣い、厭らしく皮膚をなぞり上条の陰茎に口をつけてきたことを。上条は体を強張らせた。屈辱的な行為は嫌悪感しか残さず、その記憶は未だ上条を戦かせ体の震えを呼び覚ます。 「私を見ろ! 今おまえを抱いているのは私だ!」  月城は陰茎を口に含んだ。巧みに口腔内で扱かれて吸い上げられれば、強烈な快感に身悶えるばかりだ。上条の腰が自然と揺れ始めて呼吸が乱れるのを確認し、月城は微か唇の端を上げた。 「はうっ……うっ……あ……」 「そうだ、おまえの全てを曝け出せ」  月城は先端を指の腹でなぞり、裏筋をねっとりと時間をかけて舐め上げる。上条は白い喉を見せて仰け反り、噛みしめていた唇からはひっきりなしに嬌声を漏らした。 「あああっ……んっ……はぁ……んっ……」 「いい子だ……」  いいように舌で愛撫され、時折先端を甘噛みされては堪らず、上条は咄嗟に月城の頭髪を掴んだ。  身体中の熱が一箇所へ集中し、そこは既に硬く張り詰めて爆ぜそうだった。鈴口から蜜が零れ落ちて、月城の指を濡らしていく。知らず知らずに腰を揺らめかせて、月城へとねだるように腰をあてがっていることなど上条は気づきもしない。堂本のことなど消し飛んで、快感だけを追いかける上条の乱れた肢体に満足した月城は、いよいよ佳境とばかりに追い上げた。 「あっ……ああああ……んっ……ぁ……」  月城の口腔内でビクビクと痙攣し、上条は達していた。

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