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第三章 揺れる心(3)

「随分……ご無沙汰だったようだな……」  余韻から抜け出せない上条は、まだ荒い息のまま月城を睨んだ。上条もそれなりに経験はあったが、多忙な日々に恋人から愛想を尽かされて二年になる。その間、自慰行為も数回程度で、ほとんど禁欲的に生きてきた。べつに意識してではなく、日常に忙殺される毎日では仕方ないことだった。  月城はベッドを降りて、サイドテーブルの引き出しから小さなボトルを取り出して戻ってきた。それが何を意味するのか上条は知っている。堂本にも、ボトルの中のローションを塗りつけられて指を入れられたのだから。フラッシュバックし微かに体が震え始めた上条は唇を噛み、記憶を振り払おうと頭を振った。 「っ……月城さ……」 「私が(堂本)に見えるのか?」    否定の言葉さえも飲み込ませるように、月城は上条の唇を奪う。激しく噛むような口づけの間に、ガウンを剥がせていった。ほとんど室内から出ることのない上条の肌は白く、シミ一つないキメ細かい肌をしていた。けれど女性のような柔らかさではなく、細い割に筋肉もついて弾力があった。一糸纏わぬ体を舐める視線さえも刺激的で、視線の先の皮膚が焦げつきそうに熱い。上条は羞恥も手伝って一層熱を帯びた。獰猛とも取れる愛撫なのに、その刺激が心地よく感じるのは、相手が堂本ではなく月城だからだろう。上条の両腕に腕を重ねシーツに縫いとめる。簡単に払える程度の力だ。戯れに月城の指先が皮膚をなで、そのくせ彼の唇は上条の項から鎖骨、乳首へと這って獲物を見つけたとばかりに吸いあげてきた。 「……あっ」  鼻に抜けた声が思わず出て、上条は戸惑う。男なのに乳首を吸われて感じるなんてと。月城が薄く笑った。 「知っているか? 男でも乳首を丹念に可愛がってやれば、ここだけで達けるようになる」 「う、嘘だ……そんなわけ……なっ……ああっ……」    月城は乳首を摘み上げた。間髪入れずに再び吸いあげて、尖った先端を舌先で転がしてくる。薄いピンク色だったものが熟れた果実色に充血し、膨らんだ先が艶かしい。巧みな扱きが増して、上条は仰け反った。全身をビクビクと震わせて悶えた。 「いやっ……も……ああ……んんっ……」 「こんなに勃たせて、はしたないな」 「触るから……」 「フ……ム……なら、ここはどうだ」  月城がいきなり上条の体を反転させて、背後から頤を掴み、片方の腕で腰を持ち上げてきた。ぎょっとしたときには四つ這いの体制を取らされていた。さすがに上条も抵抗しようとしたが、鍛え上げた月城の腕にしっかりとホールドされては抗う気になれない。背中に覆い被さってきた月城の体温に、上条の鼓動が早まる。さらに背中の皮膚に滑った舌を這わせ、ときに唇で啄ばまれる度にビクビクと体が震えた。ゆっくりと確実に彼の唇が下がってくると同時に、ホールドされていた腕も上条の頸や脇腹から乳首へと移り、覚え立ての感覚を呼び覚ます。再び乳首を弄られて仰け反る上条の背中にキスを落とした。

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