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盗み聞き
飆太と凛月のペアの間に時々順一が加わるようになったことで、自然と飆太と凛月も他のクラスメイトと少しずつ話すようになっていた。
いわば順一は潤滑油のような役割を果たしてくれたのだ。
だがそれは飆太にとっては嬉しい事ばかりではなく…
「ねー!昼休みはオレ、りっちゃんとふたりで食べたいのー!」
これまでいつも昼食は2人で食べていたのだが、クラスメイトと関わりが増えたことで段々と一緒に昼食をとる人数は増えていっていた。
「そんなわがまま言うなよ。そんなこと言ってたらボク一人で食べるから。」
「うぇー!わかったてぇー…みんなで食べよ…」
凛月にたしなめられ、少しヘコむ。
「たまにはふたりで食べてきたらいいんじゃない?ほら屋上とかでさ。」
順一が気をつかって提案をするが、
「そうやって甘やかすから、コイツ付け上がるの。」
と凛月は相変わらず手厳しい。
「りっちゃんはもっとデレが多い方がいいよぉ〜…今ツンツンツンツンd、くらいじゃん…」
「ツンツンツンツンdってなんだよw」
「はいはい。僕は然るべき対応をとってるだけだから。」
「ちぇっ…」
と言いながらも飆太も友達が増えて学校生活が楽しくなって頬が緩む。
―――
放課後…
「今日は日直だから日誌出して帰らなきゃ。先帰ってて!」
飆太は日直だったので職員室まで日誌を提出しなくてはいけない。書く分量が多く、なかなか骨の折れる日誌だ。
「わかった。帰ろっかじゅん。」
「うん。また明日な〜。」
凛月と順一は帰る方向が一緒のため、良く連れ立って帰っている。
「はぁ〜。りっちゃんと一緒に帰ってるのちょっと嫉妬する…」
2人とも友達だから、なんとも思わないようにはしているのだが、いざ目の前で一緒に帰る2人を送り出すのは少し心がザワついてしまう。
「何もないってば。ね?じゅん。」
「そうそう。世間話してるだけなんだから。」
「はぁ〜…その世間話聞いてたい〜。盗聴器付けさせて?」
だめ元で、目を潤ませて上目遣いでお願いするが、
「無理に決まってるだろ。」
とあっさり凛月に却下される。
「はいはい。じゃあまた明日ね!」
「うん。また明日。」
もう凛月のツンツンツンツンdムーブには飆太も慣れたもので、微笑んで手を振り2人を教室から送り出す。
(さぁ、さっさと書いて帰るぞ〜。)
―――
20分弱で日誌は書き終わり、帰る準備をして鞄を持って教室を出た。
職員室は、2階にある1年フロアから4階まで上り、長い廊下を2回ほど曲がった先にあり、行くだけでもなかなか骨だ。
「ふぅ〜。終わった〜。」
無事提出も終わり、帰路につこうとした時、普段使われない旧校舎に続く渡り廊下の方から、話し声が聞こえてきた。幽霊が出る噂もあり、滅多に人は通りかからない所だ。
「…ほらあの…そう!…あいつら…」
「あ〜あの…1年の…」
何を話しているか分からなかったが、気になったので盗み聞きは悪いと思いつつ少し近づく。
「あの美少女コンビまじヤってみたいよなw」
「まじ、全く男に見えねえし。全然いけるわw」
「それなwいつもなら男だろ有り得ねえって思うけど、あいつらなら別だわ。」
「生徒会長様のお力で何とかならないですかねぇ?w」
(ん?なんのことだ?)
どうやら話してるのは4、5人のようだが、いきなり美少女コンビだの、生徒会長だのよく分からないワードが出てきて、全く話の筋が掴めない。ただ、なにか良くない話なのは感じた。
「あいつら確か1年1組だったよな?」
「そうそう。1-1。」
(1-1!?僕らのクラスじゃん!)
いきなり自分のクラスの話だと分かって心臓が跳ね上がる。
「ああ、あんな可愛いヤツらが居るとは思ってなかったぜ。特に黒髪の方、あいつは俺がじっくりと遊んでやることにするよ。」
「さすが生徒会長様w」
「俺たちも混ぜろよな。」
(え、可愛いヤツら?黒髪の方?まさか…!?)
今までの盗み聞きした会話の内容と、凛月や順一から散々聞かされた自分達が周りからどう見えているかということ。様々な情報を繋ぎ合わせて辿り着いた結論に背筋が凍る。
(しかも、生徒会長って言われてるやつの声どっかで聞いたことが…あっ!あいつだ…)
飆太の頭に浮かんだのは、忘れ物を取りに帰ったあの日ぶつかった、凍りつくような視線で自分を見つめてきた人物だった。
「で、具体的にどういう計画で堕とすの?生徒会長様?」
男達の中の1人が意地の悪い声で尋ねる。
「まずは脅しの材料を作って、孤立させる。あいつの家はそんなに裕福なもんじゃないし、あいつの親父は俺の家の息がかかってる会社で働いてる。無理やり一発犯してその動画と親父をネタに脅しゃあイチコロだろ。ここらじゃ警察も俺ら一家には余程のことがなきゃ手出しできねえし。今までのヤツらの中で1番簡単かもな。」
冷たい声が飆太の耳に響く。
その瞬間、背筋の冷たさよりも恐怖よりも何よりも、怒りが込み上げてきて飆太は足を踏み出していた。
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作者ですm(*_ _)m
前置きがなげぇよという方々、お待たせしました…!ここからいよいよ本編の始まりです…!
飆太クンにはこれからいっ〜ぱい酷い目にあってもらいます…!お楽しみに…!
苦手な方はブラウザバックお願いします<(_ _)>
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