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呼び出し(1)

雨が降っていた。 あれから解放された飆太は、ボロボロのシャツの上に、唯一無事だったブレザーを羽織り自分自身を抱くようにしながら、傘もささずに帰路についていた。 激しめの雨が飆太にかかった白濁を洗い流していく。 (あ〜、オレ、レイプされたんだ。) 先程まで自身に対して行われていた行為がどこか他人事のように感じる。 (これからどうなるのかな、、?) 解放される直前、生徒会長に言われたことはこうだった。 取り引きとは、黒髪ちゃん=朝海凛月に手を出さない代わりに、飆太が生徒会長とその取り巻きの言いなりになる。つまり奴隷になるというものだった。 飆太が言うことを聞く限り、凛月には手を出さないし、秘密も守ってくれるということで、警察にも顔が効く生徒会長を相手にしてはそれが最善だということだった。 あいつの好きな時に呼び出しや指示に従うため連絡先も交換させられた。生徒会長の名前が藍川紘(あいかわ ひろ)だということはその時初めて知った。 今はこれからどうなるのかという不安よりも、ただただ頭が働かず考えることができなかった。 「おかえり〜!ってめっちゃ濡れてるぞ!どうしたんだ!?」 飆太は高校に通うため親元を離れており、今は学校近くの叔父の家に2人で住んでいるのだが、そんな叔父の心配も耳には入らず、無言で2階にある自室に向かう。 「ちょっ!床濡れるって!せめて拭いてからっておい!!」 階下から叔父が見上げてくるが、 「ごめん、ちょっと調子悪くて。」 と小さく声をかけて、自室に入りすぐに鍵をかけ扉にもたれ蹲る。 「ひっっく。」 小さく嗚咽を漏らす。 安全な所に辿り着いた安堵で色々なものが緩み、一気に押し寄せてくる。 (犯された。しかも男に、大人数で。汚された。こんな事されたなんて人には言えない、知られたくない。これからどうなるの?もう逆らえない。りっちゃんを守らなきゃ。あいつら許せない。殺しててでも守らなきゃ……………ダメだ…………… …コワイ……………こわい……………こわかった ……………………いたかった………………………) 鮮明な恐怖は確実に刻み込まれていた。痛みも、ピークは去ったがもちろん消えたわけではなく、ズキズキとそこら中が痛い。 「うわぁぁぁーーーーーーーーんん!!!」 床に突っ伏して、堰を切ったように大泣きする。 この日はそのまま着替えることもなく、布団に入ることもなく、やがて疲れて寝てしまっていた。
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