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それは守るために

 今日は土曜日。昨日の話を聞く為に、八千代の家に集まる。それはまぁ、いつも通りなんだけど。 「詰まるところさ、お兄さんどうなの? 跡継ぎ代わってくれんの?」  啓吾が単刀直入に聞く。何が凄いって、お兄さんとお姉さんが同席しているのだ。 「啓吾くん、アナタ良いわね。思い切りが良くて好きよ。お顔も可愛いし、お姉さんが相手してあげたいくらい」 「あざっす。けど俺──」 「だ、ダメです! あの、欲張りだって自覚はしてるんですけど、皆、僕の大切な恋人なので、ゆ、誘惑しないでくだしゃい!」 (噛んだ······)  綺麗な女の人が好きな啓吾だもの。頭では無いとわかっていても、面と向かって誘惑されると焦ってしまう。 「あははははっ。結人くん、ごめんね。冗談よ。アナタ達の事は八千代か聞いてるから。可愛い男の子見ると、揶揄いたくなっちゃうのよ」 「ババァかよ······いってぇ」  お姉さんのゲンコツが、八千代の脳天に落ちた。痛そうだ。  お姉さんの話によると、お兄さんの千鶴さんが見つかったのはド田舎の山中深く。遊んだ女の人の危ない恋人に殺されないよう、逃げ隠れていたらしい。そんな事って、現実にあるんだ。というのが率直な感想で、あまりにも現実味がない。  そのお兄さんはと言うと、お姉さんの斜め後ろで正座させられている。何故か、鎖のついた首輪で繋がれている。逃走防止の為だろうか。僕たちは、この場に居て良いのだろうか。 「千鶴、お前いい加減腹括って継げや。なんで俺がお前の尻拭いすんだよ。そもそも、俺は継ぐとか言ってねぇんだよ」 「だって、親父がオレに見切りつけたんじゃんか。オレ、自由な方がいいし」 「千理(せんり)に謝んなさいよ。アンタが120%悪いんだから」 「千理····? って誰すか」 「あ、うちの父親ね。アタシらのボスよ」 「あ、あぁ〜、なるほど。続けてください」  啓吾が何かに尻込みしている。ヤクザという印象はないけれど、どこか過激な雰囲気があるからだろう。僕もりっくんも口を挟む事などできず、ただ見守るしかない。  こんな状況で、ベッドを陣取って仮眠をとっている朔は、将来大物になるだろう。話がまとまったら起こしてくれと言っていた。本当に疲れているようで、それが何より心配だ。 「オレ、ボスの器じゃないだろ? 八千代が継げばいいじゃん。その方が親父も喜ぶって」 「俺が継いだら、結人と一緒に暮らせねぇだろ。親御さんが心配すんだろうが。んとに馬鹿じゃねぇの? 仮に継いだとして、その所為で結人に何かあったらどうすんだよ。んっとに頭湧いてやがんな」   「八千代はずっとねぇ、ずっとアンタの代わりに千理にごちゃごちゃ言われてたんだよ? アンタがそんなんだから! ちょっとは兄貴らしいトコ見せなさいよ」 「八千代は全て結人くん基準で考えるんだねぇ····。桜華は八千代中心だし。オレ、可哀想······。はぁ〜、マジで無理だってぇ〜。オレ、組織とかに属してると死ぬから」 「死んでから言いなさい。ホント、いい加減大人になんなさいよ! 八千代に全部押し付けたら可哀想でしょうが。八千代が可愛くないの!?」 「こんなガラの悪い大男の何処が可愛いんだよ! 桜華の目が腐ってんだろ」 「可愛いじゃない! ずーっとアタシたちの後ろついて来てたのよ!? 可愛くないわけないでしょ!」 「お前らいい加減に──」 「うるっせぇな! 寝れねぇだろ! 静かに話せねぇのか!」  八千代が怒ろうとしたら、寝ぼけた朔が先にキレた。一同ポカンだ。朔が怒鳴るところなんて初めて見た。怒った顔の朔は、キリッとしてかっこ良かった。 「あらら。話がズレたわね。ごめんね。とにかく、八千代が跡継がなくていいように、千鶴が何とかしなさい。姉命令よ」 「桜華は横暴過ぎんだよぉ····」 「誰がアンタの女遊びのケツ拭いてやったと思ってんの?」 「······善処しますぅ」 「言ったな? まずは親父に謝りに行けよ。お袋味方につけたら、まぁなんとかなるだろ。桜華からお袋に言ってやれよ」 「いいわ。母さんにはアタシから連絡しといてあげる。千鶴、アンタ逃げんじゃないわよ。逃げたら····わかってるわね」 「桜華から逃げきれない事くらい、もうわかってるよ。わーかった。観念するから、揉めないようにもってってねぇ」  何とも、情けない感じのお兄さんだ。 「それよりさぁ、結人くん?」 「は、はい!」 「あぁ、緊張しなくていいよ〜。オレの事は、気軽に千鶴って呼んで?」 「え、っと、千鶴····さん?」 「か〜わ〜い〜い〜」 「気持ち悪いわね。ねぇ、結人くん。アタシの事は、桜華さんって呼んでね。お姉さんだなんて他人行儀じゃ寂しいから」 「ぅあ····はい。お、桜華さん、今回はその、色々と僕たちの為に······八千代の為に動いてくださって、ありがとうございます」 「なんって良い子なの····アタシが養いたいわ〜」 「え、養子ですか? あの、母が寂しがるのでちょっと······」 「ん゙ん゙ん゙っ! 可愛い。八千代、アンタこんな可愛い子とよく平気で居られるわね」 「すげぇだろ。コイツの破壊力、こんなもんじゃねぇぞ」 「じゃ、それはオレと楽しんで見せてもらおっかな〜」  千鶴さんが僕に触れようとした瞬間、八千代が千鶴さんを組伏して、桜華さんが首輪を引いた。あまりの容赦の無さに、僕と啓吾とりっくんは、ただただ固まってしまった。 「あの〜、今更なんだけど、昨日あれから話しなかったの? 全然、俺らへの報告って感じじゃなかったけど····」  りっくんが聞いた。それは、僕も気になっていたところだ。   「喧嘩になって話になんなかったんだよ。千鶴がずっと桜華にボコられてただけでよ」 「へぇ····桜華さん強いんだねぇ。かっこいいなぁ」 「あら、強い女好き? アタシ、八千代より強いわよ」 「「「えぇっ!?」」」  僕たちは驚いた。八千代だって相当強いと思うのだが、それ以上とは····。知る機会がこない事を祈るしかない。  とりあえず、話がまとまったので朔を起こす。 「朔、起きて? 話終わったよ」 「ん····来い」  寝惚けた朔に抱き寄せられ、キスをされてしまった。桜華さんたちが居るのに。 「んんーっ、んはぁっ。朔、何すんの!?」 「ん? ······あ。わりぃ。寝ボケてた」  桜華さんと千鶴さんのニマニマした顔が戻らないまま、話のあらましを説明した。さっき、寝惚けてキレた事も話したが、全く記憶にないらしい。 「で、場野は後継がなくてよくなったらどうすんだ? 普通のトコに就職か? 進学か?」 「進学だな。大学は出ろって親父に言われてる。んで、就職は普通んトコ目指す」 「普通んトコ····そうか。じゃ、話が済んだんならお姉さん達には帰ってもらうか」 「えぇ〜、もうちょっとお話しないの?」  千鶴さんが、小さい子の様にゴネだした。 「バカなの? バカップルの邪魔すんじゃないわよ。ホント馬鹿ね。お邪魔して悪かったわね。また何かあったら連絡しなさい」    ゴネた千鶴さんを、桜華さんが窘めながら首輪を引いて連れ帰った。帰り際に桜華さんは、僕たちに名刺をくれた。 「嵐みたいだったね····。僕、正直ずっとビビってたよ」 「俺もだよ。お姉さんの威圧感スゴすぎ」  りっくんは溜め息をつき、項垂れてしまった。 「俺も、口挟む度怒られないかヒヤヒヤしたわ〜」 「啓吾もりっくんも、大人しかったもんねぇ。朔が怒鳴ったのにはビックリしたけど」 「めっちゃレアなもん見たな。あれは俺もビビったわ」 「八千代、ビクってしてたもんね」 「わりぃ。俺、眠いと機嫌悪くなるみたいで」 「大丈夫だよ。怒ってる朔なんて、あんまり見ないから驚いただけだよ。怒ってる顔もカッコ良かったよ」 「····そうか。それなら良かった。場野、結人綺麗にしてきていいか?」 「朔のスイッチわかんないわ〜。いつも急だよな」 「結人にかっこいいって言われたら、スイッチ入るだろ」 「······まぁ、そうね。そっか。普通だったわ」 「1人でいけるんか? 手伝うか?」 「大丈夫だ。道具は適当に使っていいか?」 「おぉ。好きに使え」 「よし、行くぞ」  そう言うと、朔は軽々と僕を抱き上げた。 「あ、歩いて行けるよ!?」 「逃げないように、念の為だ。たまに抵抗するだろ」  確かに、する事もある。けどそれは、僕がアイスを食べようとした時とか、ゲームをしている最中とか、タイミングが悪いからなんだけど。  しかし、言ったところで降ろしてくれなさそうなので、観念する事にした。  随分と手際よく洗浄してもらった。相当早く抱きたいらしい。最近、お父さんからの呼び出しだとかで、する回数が減っていたからだろうか。  部屋に戻ると、3人が真剣な顔で話をしていた。一体どうしたのだろう。 「今さ、場野と莉久と話してたんだけどな。念の為さ、セーフワード決めとかねぇ?」 「結人の加虐心煽ってくるトコ、段々酷くなってっからな」 「そうなんだよ。結人の泣き癖と煽り癖はさぁ、耐性ある俺らでもヤバい時あるだろ?」 「セーフワード? ってなんだ?」  朔はお尻を解し始めながら聞いた。僕も、聞きなれない言葉に、キョトンとしてしまう。 「ヤッてる最中にゆいぴが、これはホントにダメって思った時に言う言葉ね。それを言ったら、俺らは絶対すぐにやめるっていうルール」 「なるほどな。それは決めといた方がいいかもな」 「みんな、僕に何する気なの?」  これから自分が何をされるのか、想像もつかなくて怖い。僕は朔よりも、そういう知識に乏しいらしい。 「念の為だって。で、何にする? 普段は言わねぇやつ」 「ん〜······『嫌い』は?」 「ん? 嫌いって普段言わねぇの?」  啓吾が驚いた顔で聞いた。僕、1度も言ったことないと思うんだけどな。 「僕、嫌だとは言うけど、皆に嫌いって嘘でも絶対言わないよ?」 「····そう言うとこだよ。俺らがゆいぴに我慢できなくなっちゃう原因」 「え? どういうトコ? 全然わかんないんだけど····」 「とりあえず、セーフワードは決まったな。遠慮なくヤるぞ」  朔が僕を押し倒す。キスをしながら、さらにお尻を解してゆく。既に、充分に解れていると思うのだけれど、それでも念入りに解してくれる。そんな皆が、僕の嫌がる事なんてしないと思うんだけどな。 「結人、挿れるぞ。ん····まだキツイな。痛くねぇか?」 「大丈夫だよ。気持ちぃよ。んん゙っ····朔のが、いつもより····ふぅっ····おっきいんだよぉ」 「そうなのか? ····ちょっと溜まってたからな。加減気ぃつけるな。セーフワード、忘れるなよ」 「ん····わかった。から、早く、奥まで、欲しいよぉ」 「ったく、わかってねぇだろ」  朔は、ねちっこく最奥をノックすると、少しだけ扉を開くように押し込む。それから何度もごちゅごちゅと叩く。入る準備をしているようだ。  朔が、大きな手で僕の下腹部を軽く握った。 「今から、ここに挿れるからな。いいか?」  いつもなら、聞かずに挿れるくせに。僕が『挿れて』と言うのを待っているようだ。 「ん゙ぁ····握っちゃ、ダメ····入るの、想像したら、イッっちゃう····」 「ここ····ぐぽぐぽされんの好きだもんなぁ?」  朔は、意地悪く強く握る。   「いぁっ····やっ、好きっ····だから、ちょぉだい、ぐぽぐぽするトコ、挿れてぇ」  思い切り突き上げ、カリを引っ掛けて遊ぶ。いつもより少し深く入っている。どちゅっと入ってくる度に、嘔吐感が込み上げる。流石に、八千代のベッドで吐くわけにはいかない。 「待っ、朔っ。そぇっ、今日深ぃぃ····吐いちゃう····」 「結腸抜いて吐かなった事に、俺はびっくりしてたけどな」  八千代が言った。吐くこと前提でしてたって事か。 「場野、吐かしてもいいか?」 「結人が嫌じゃなかったらいいけど」 「汚いでしょぉ······んぅっ····吐くのは、ヤダ····」  朔が、耳元で囁く。 「吐くのは『嫌い』か? 俺は、結人のゲロを汚いとは思わないぞ」 「ひあぁぁっ! あっ、あ゙ぁ゙ぁっ····」  朔も低めで良い声なのだ。皆そうなんだけど。耳元で囁く時は、特に低くてねっとりとした声を出す。絶対ワザとやってるんだと思うけど。おかげで、耳でイッてしまえるようになったのだ。  それよりも、汚いと思わないって何? 「き、汚いよ····んっ、お゙ぁっ」 「俺も気にしないよ? ゲロイキとかちょっと興味ある。めっちゃ締まりそう」 「俺は勿論。ゆいぴに汚いトコなんか無いよ」  失念していた。もっと早くに気づくべきだった。みんな、僕の洗浄をさらっとしてしまうような人たちだった。 「朔っ、ゔっ····ホントに出ちゃう····ぅえ゙っ····お゙ぇっ、ゲホッ、ん゙あ゙ぁっ」 「おー、やっば。口に挿れてぇ」 「啓吾変態だね。めっちゃわかるけど」 「お前ら、エグいな」 「場野には言われたくねぇよ。吐かせるつもりで奥突っ込んでたんだろ? 俺らと変わんねぇだろ」 「絶対場野も今、ゆいぴの口に突っ込みたいと思ってるでしょ。認めたくないけど、俺ら同類だろ」 「まぁ、俺ら結人にNGとかねぇもんな。何しても大丈夫だわ」 「場野と莉久は特に愛情が根深いっつぅか、俺と朔飛び越えた変態の域だよな」 「んだよソレ。普通だろ」 「普通だね」 「出たよ。結人に関して、お前らの普通は普通じゃねぇから。結人以外の人間で考えてみ? 感覚麻痺してんの怖いわぁ」  また3人は馬鹿な話をしている。僕が盛大に吐瀉物にまみれているのに。とは言っても、今朝は朝ごはん食べる暇がなかったから、胃液以外に出るものは無かったのだが。心底思う、不幸中の幸いだと。  今後もこういう事があるなら、食べるタイミングとか量を考えなくてはいけない。 「朔、も、ダメ····なんにも出ない····ずっと、ナカでイッてて····もぅ、イケない」 「大丈夫だ。ナカでならずっとイケるぞ。俺ももうイクから····あと少し頑張ってくれ」 「あーっ、やぁっ····ん゙んっ····はぁん····んぅっ」 「結人、イクぞ。奥で飲んで····んぅっ」 「んお゙ぁっ····かはっ····んゔっ、ぅ゙え゙ぇ゙···」  僕は気を失ってしまった。八千代とりっくん、啓吾は、今日は遠慮してくれるらしい。僕の犯されっぷりを見て、無理はさせられないと思ったんだとか。やっぱり、皆優しいんだよね。  

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