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八千代の癖
放課後、朔が先生と進路の話をしている間、僕たちは理科準備室で待つ。
今は啓吾の番。啓吾が後ろから、ねちっこく突き上げてくる。ちなみに、お昼休みは八千代に抱かれた。
そして、最近知った事がある。啓吾は、初めから服を脱がせるよりも、徐々に脱がせていくスタイルが好きらしい。ズボンは脱がしきらずに下ろすだけ。シャツはボタンを外すだけ。
りっくんも似たような感じ。学校でする時は、すぐに脱がしたがる八千代より助かる。汚れてしまわないか気掛かりだけど。
「後ろ苦しくない? 馴染んだ?」
「んっ、だいじょぶ」
「それじゃ····はい」
りっくんはキスをやめると、大きくなったモノを僕の眼前にボロンと出す。
「ん····りっくんの、しゃ、しゃぶるね」
最近、りっくんはこのフレーズがお気に入りらしい。毎日のようにしゃぶる練習をしている。『咥える』や『フェラ』ではなく、わざわざ“しゃぶる”と言わされるのが妙に恥ずかしい。りっくんらしい嫌がらせだ。
「どうぞ。唇、舐めて濡らしてね。ん、えろ····。はい、あーん」
りっくんの要望に応えながら、舌の使い方や気持ち良い所を一生懸命に覚える。それぞれの気持ち良いポイントや好きな舐められ方が違うから、全員分を覚えるのは一苦労だ。
それでも、僕のした事で快楽に表情を歪めてくれるのは嬉しい。僕が皆にできる、本当に数少ない奉仕だ。だから、しっかり覚えなくちゃ。
後ろからガンガン突いてくる啓吾は、背中に射精するつもりで僕のシャツを捲り上げる。その直後、とんでもない声をあげた。
「うぇぇぇい!? はぁっ!? ちょちょ、えっ? 結人、背中打ったの? 痛くねぇの?」
その声に驚き、りっくんがシャツをさらに捲って、慌てた様子で背中を覗き込む。
「うわっ! 何コレ!? どうしたの? え····これ歯型?」
「んぇ····あぁ····えっとねぇ」
「おー、それ俺だわ」
先生用のクルクル回る椅子に座って、スマホを弄っていた八千代が言った。
「「はぁ゙!?」」
りっくんと啓吾が、ドスの効いた声を響かせ八千代を睨む。えっちは一時中断された。
「最近、イク時に噛むの癖になっちまってて、昨日結構強めに噛んじまったんだよ」
「お前ら、あの後またヤッてたんかよ」
「俺も一緒にヤッてたぞ」
丁度、朔が戻ってきた。その表情は、少し怒っているように見えた。
「えっ····朔と場野相手に3Pしたの? 結人、よく無事だったね」
「いやいや! 無事じゃねぇよ。エグい噛み跡ついてんじゃん! コレ何なの!?」
「あはは····全然痛くないから。大丈夫だから落ち着いて、りっくん」
「ゆいぴ····そういう問題じゃないでしょ。ゆいぴの可愛い背中に、綺麗な肌に····こんな青紫になって····」
「わりぃ。マジで気ぃつけるわ」
八千代が、バツの悪そうな顔で頭を搔く。今まで抵抗しなかった僕も悪い。八千代の少し大きな八重歯が、僕を咬み千切ろうとしている所を想像して、ゾワゾワと込み上げる高揚感を楽しんだのだから。
そう言えば、八千代が僕を噛み始めたのは確か、朔の家に行った後からだ。
「僕も悪かったんだし、もう気にしないでよ」
「ねぇ、ゆいぴ。昨日、何があったの?」
「えぇ······。えーっとねぇ······」
~~~
昨日の放課後も、いつも通り八千代の家で駄弁っていた。
日程調整の都合でかなり遅れていた、体育祭の実行委員の打ち上げが開かれるんだと、りっくんと啓吾が言っていた。だが2人は、それをすっぽかして来ていた。しかし、あまりの鬼電に観念した2人は、渋々打ち上げに行ったのだ。
残った僕たち3人は、当然の如くえっちな流れに。いつも通り洗浄を終えると、僕は八千代に組み敷かれていた。まさに、その時だった。朔が爆弾発言を投下してしまったのは。
「そうだ、結人。こないだ凜人が『今度は本当に、あの可愛い桃を食べたいちゃいですねぇ』って言ってたんだけど、なんの事だ?」
「んっ····え······うん? あはは。朔、モノマネそっくりぃ」
「は? そこじゃねぇだろ。やっぱお前、あの執事と何かあったんか」
既にふわふわしている僕に、そんな事言われたって考えが纏まらない。
「んぇとね、凜人さんがね、お尻、ぷりぷりですねって。それで、いっぱい揉まれたの」
「あ゙ぁ? お前、あん時喋っただけって言ってただろ。やっぱり凜人に何かされてたのか?」
「えーっとね····、部屋に引っ張り込まれてね、足でおちんちんグイッてされたよ。そんな事したら、おしっこ我慢できないですって言ったの。そしたら、お部屋でしていいですよ~って言われたんだ。興奮するんだってぇ。変な人だなぁって思って、僕、ちゃんと嫌ですって言ったよ?」
「····あ゙? んな話聞いてねぇぞ」
八千代が奥を抉りながら、かなり低い声で静かに呟いた。
「だってぇんっ、言っちゃダメって、すっごくえっちにお願い、されたんだも······っあぁ、あっ····言っちゃった······」
「おい、場野? 大丈夫か? わりぃ····凜人には俺から言っておくから、結人に当たんじゃねぇぞ?」
「····クッソ!! わかっとるわ! 腹立つんは、あのクソ執事だからなっ」
「お゙ん゙っ、奥っ、強っ····ん゙や゙あぁぁあぁ! イクッ、イ゙ッちゃぅあ゙ぁ゙っ」
八千代は、言葉とは裏腹に僕を乱暴に抱いた。朔の制止も聞かずに奥をゴヅゴヅ突き上げ、出す時に肩甲骨の辺りを噛まれた。それがあまりに強くて、本当に喰い千切られるのかと思った。
あまりの痛さに泣いてしまった僕を、朔が優しく慰めてくれた。八千代は凄く反省して、ずっと謝ってくれていた。
それで、朔は少し怒っているのだろう。昨日は八千代に代わって、家まで送り届けてくれた。
八千代は、僕が凜人さんと何かあったのではないかと、薄々感じていたらしい。その苛立ちから、僕の肩や腕、胸なんかをよく甘噛みしていたんだと言っていた。
それが昨日、僕が暴露してしまったばかりに、抑えが効かず思い切り噛んでしまったようなのだ。
~~~
「それって、凜人さんが悪くね? つーか朔も、なつぅタイミングで聞いてんのよ····」
「わりぃ。結人のケツ見てたら桃みてぇだなって思って、ちょうど思い出したから····わりぃ」
「元はと言えば、僕が気安く触られちゃったのがいけなかったんだ。凜人さんの大人の色気? みたいなのに圧倒されて言えなくって····皆に隠し事したのが悪いんだよ。ごめんなさい」
「んー····確かに、ゆいぴは無防備すぎるね」
「だなぁ。体力作りに防衛訓練、んでテクトレ。結人、大忙しだな」
「防衛訓練って初耳なんだけど····」
「お前、今から俺らと24時間一緒に居る気か? 一緒に住むまで、んなの無理だろ。1人の時だけでも、自分の身は自分で守れるようになっとけ」
八千代が投げ捨てるように言った。凜人さんへの苛立ちが、話を聞いてぶり返しているのだろう。
「それいいな」
「ん? 啓吾、それってどれ?」
また啓吾が神妙な顔をしている。またロクでもない事なのだろう。僕は、聞き返したことを少し後悔した。
「俺らと24時間一緒に居んの。SPみたいじゃん」
「あはは。けど今でも、僕が1人になるのって、家に居る時と学校でたまにって感じだよ? 絶対誰か一緒に居てくれるもん」
香上くんの一件から、学校でも1人になる事は格段に減った。トイレも勿論、誰かの付き添いがある。
「····あれ? トイレまでついてくるのって、もしかして護衛とかだったの?」
「ゆいぴ、気づいてなかったの?」
「タイミングが被ってるだけだと····」
「こんだけ普段からぽわぽわしてたら、そりゃ狙われるわ」
啓吾が呆れ顔で言った。ぽわぽわって何だ?
「僕、ぽわぽわなんてしてない····」
「お前のそういう、自覚の無いトコが1番厄介なんだよ。はぁー····コイツに自己防衛とか無理だろ」
八千代は僕の危機感の無さに、さらに苛立ち始めた。申し訳ないけど、普段は流石に、えっちしている時ほどふわふわしていないつもりだ。そもそも、香上くんや凜人さんが変なだけであって、襲われるなんて滅多にない事だろう。
「ん~、確かに。結人は、危機を察知する段階で難しそうだなぁ」
「ちょっ、自分が危ない時くらいわかるもん!」
「わかってなかっただろうが。香上ん時も執事ん時も。お前、犯される寸前だったってわかってんのか?」
「犯っ!? そんなの犯罪でしょ。流石に、本当にそこまではしないでしょ····?」
いや、香上くんの時は確かに危なかった。あれも、僕の危機感の無さが招いた結果だったじゃないか。
「ダーメだ。こりゃダメだね。もう絶対、結人1人にしちゃダメだわ」
啓吾は、何回僕の事をダメと言うのだろうか。流石に傷つく。
「僕、そんなにダメなの?」
「ゆいぴは、俺らが守ってあげなくちゃダメだねって事だよ。ホントに、マジで俺らから離れないでね」
りっくんの顔には笑顔が貼り付けられているけど、語尾の強さから言葉の本気度がわかる。
「今度の土曜のデート、朔の番だろ? 気ぃつけてあげてね。絶対、結人1人にしちゃダメだかんね?」
啓吾が朔に、重々注意を促す。朔も真剣な眼差しで答える。
「ああ。当然だ。誰一人、結人に指一本触れさせねぇ」
僕に対する姫扱いが、日に日にエスカレートしている気がするのだが、自業自得だと言われそうなので黙っていよう。
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