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お返し

 皆にあーんをしてあげて、『ホワイトデーにはお菓子いっぱい食べれるかも〜』なんて、甘っちょろい事を考えていた間抜けな僕。  ベッドに押し倒された僕の目を、りっくんが片手で覆っている。何も見えなくて耳に集中してしまう。 「ゆいぴ、口開けて」  耳にかかる吐息の熱にアテられ、素直にその言葉に従う。 「ん····んぁ····」  甘いキスだ。これは、きっとトリュフ。チョコを挟んで舌を絡め合う。僕たちの熱で、チョコはあっという間に溶けてしまった。 「んへへっ、甘ぁい。りっくんもチョコ用意してくれてたんだ。ありがとう」 「“も”って····あぁ。場野もか。どうやって貰ったの?」 「えへへっ。りっくんと一緒」 「····マジか。場野と一緒とかヤだなぁ」  八千代がニマニマとこっちを見ている。先を越してやったと言う顔だ。 「僕は嬉しいよ。なんかね、イチャイチャできて愛されてるって感じ。えへへ」  今日は素直に、この甘い時間を堪能しようと思う。だってもう、ニヤけるのが止まらないんだ。  普段、思うように素直になれない僕にとって、イベント特有の浮かれた空気はありがたい。 「ゆいぴ、後ろの準備もバッチリじゃん。もう····挿れるよ?」  八千代に全て先を越されているようで、りっくんはなんだか不満そうだ。今日バイトを入れてしまった事を、心から悔いているんだろうな。 「うん。りっくんのおっきいの、僕に挿れて····?」 「ん、お強請り上手にできたね····。お尻こっちに向けて。朔が待ってるよ」  四つ這いになって、りっくんにお尻を差し出す。りっくんが入ってくると、チョコの箱を持った朔が来た。 「んっ、朔もくれるの? ありがと。ひぅっ····」  朔は、小粒のチョコを一粒ずつ口に入れてくれる。けど、喘ぎながらで上手く食べれない。 「朔、後で食べぅ····ん····んぇ?」  まだチョコを飲み込めていないのに、朔の大きなおちんちんを口に押し込まれる。 「俺のちんこにチョコが残らないように、しっかり舐めとってくれよ」  なんて事を言い出すのだ。自分でチョコまみれにしておいて残すなと。理不尽だ。 「んふぅっ····はぁっ····んぅ······」 「朔··変態じゃん。あれ? ははっ、ゆいぴめっちゃ興奮してない? 締まりヤバいよ」 「必死で舐めとってんの絶景だぞ。すげぇエロいし可愛い」  朔が僕の耳や顎を、なんとも愛おしそうに撫でながら言う。優しく触れてくれる指がとても気持ち良い。 「朔のおひんひん、甘くて美味ひぃ」 「ん゙っ····結人、チョコは全部舐めれたか?」 「ん。たうん残っへないぉ」 「じゃ、出すぞ」  朔は、口の中に沢山射精した。チョコの甘さと、精液の苦味が混じり合う。美味しくはないが、嫌いじゃない。きっと、愛情でコーティングされているからだろう。なんて、バカな事を考えてしまう。 「チョコ貰ったけどさ、ゆいぴ自身がチョコみたいに甘いんだよねぇ」  りっくんが、また意味不明な事を言い出した。そして、レローッと背筋を舐める。 「ひあぁぁぁ····」  ゾワァッと快感が走り抜けて、力が抜けてしまった。 「あはは。ゆいぴ、背中も弱いよね。あと腰も····」  そう言って、りっくんは指先で腰を撫でる。ゾワゾワするのが止まらず、思い切り腰が沿ってしまう。 「んっ、やぁん····」 「あー····その角度イイね。すっごい当たる」 「やぁっ、腰、勝手に····んぅっ、ひぁっ····そこ、当たってるの、ダメッ、イ゙ッちゃう」 「ここ?」  りっくんは意地悪くそこを突き潰す。僕は、盛大に潮を噴き上げて、激しくイッてしまった。けれど、りっくんはまだだ。 「今日はここ弱いんだね。ん〜、噴くの止まんないんだ。可愛いなぁ····」 「やぁっ! りっくん、も、らめ····出にゃぃ····」 「今日は無理させないからね。俺もイクよ。奥抜かないから。ちょっとだけ開けて奥に····出すよ····んっ」 「ふぁぁっ、りっくぅん····イッ、んぅぅっ」  啓吾が水を飲ませてくれたのだが、そのままキスの嵐が吹き荒れる。口だけではなく、頬や耳、鎖骨など至る所にキスをする。  中でも首筋へのキスがしつこい。甘い吐息を漏らしながら、むしゃぶりつくように吸い付く。 「やっ、啓吾、首に痕つけちゃダメだよ····。見えないトコにしてね」  啓吾はすぐに痕をつけたがる。やらかした時用に、タートルネックを買ったほどだ。夏が心配で、今から対策を考えている。 「わかってる。首にはつけねぇから」  そう言いながら、際どい所に吸い付いた。 「そこっ、ダメぇ····見えちゃうでしょ」 「大丈夫だって。ギリギリ見えねぇよ」  見られるのは困るけど、痕をつけられるのは嫌じゃない。所有物って感じがするし、独占欲を剥き出しにされているようで嬉しい。だから、皆が吸い付いてきても、いつも拒みきれないんだ。  身体中、散々吸い付いたり噛み付いたりして痕を残した啓吾は、また口に戻ってきた。 「俺からもあげるね。ん····」  わざわざ口移しじゃなくても、普通に口に入れてくれたらいいんだけどな。と思っていたら、コロンと入ってきたチョコは口を閉じられないほどの大玉だった。 「へーほ(けーご)ほっひぃ(おっきぃ)····」  それが溶けるまで、僕の口の中で転がす。チョコが甘いのか、啓吾が甘いのかわからなくなってしまう。 「んはぁ······結人甘ぇ。めっちゃ美味いな」 「ふぇ····甘いの、啓吾だよ? ねぇ、啓吾のおちんちん、早く挿れて? もう待てないよぉ」  いつも通り、くぱぁをして啓吾を誘う。 「ははっ。慣れたもんだねぇ。俺は何回見ても慣れないんだけど。エロすぎな」  啓吾はやらしい笑みを浮かべながら、ご機嫌に僕のナカに納まる。  浅い所を何度も擦り、僕の精液が出ない事を確認する。そして奥へ進むと、潮が噴けなくなるまでイイ所を潰した。 「やっべ、痙攣し過ぎだろ。どんだけケツでイッてんだよ」 「わ、わかんないよぉ····。啓吾が、動く度に、ふぅ 、んっ····ビリビリしたのが、んぁっ、背中抜けてってね、腰とか、お腹の奥がね、ギュンッてなっちゃうの」 「へぇ、そんなふうにイッてんだ。聞いてたらめっちゃ興奮するわ。奥、ちょっと抜くよ?」 「あぃ、ぐぽぐぽしてぇ」 「んはっ、かーわい····。抜くよ。ここ、準備してね」  僕は両手を啓吾に差し出した。ぐっと力を入れて、啓吾の先っぽを迎え挿れる。啓吾は僕の手首を掴むと、容赦のないピストンを始めた。 「んぅ゙あ゙ぁぁっ!! やっ、奥、しゅごいっ····奥っ、奥゙、イ゙ッぢゃうぅぅ」 「いいよ、いっぱいイッて。ここ引っ掛けたら可愛くイクんだよな。ほら、好きなだけぐぽぐぽしてやるからイけよ」  奥にもうひとつ性器があるように、そこを執拗に出入りさせる。 「んやぁぁっ、じゅっと、ぐぽぐぽしちゃ、らめっ、イ゙グの、止まん゙っない゙ぃ゙ぃ!! お腹、変になりゅぅ····お゙ん゙っ、あ゙ぁ゙ぁっ」 「あはっ。すげぇ声····可愛いなぁ。本気でイッてんのすげぇ良いわ。俺もそろそろイクから。ちょーっと本気で突くよ」  ちょっとなんて言って、声を出す余裕もないくらいガンガン突き上げるんだ。激しい突き上げでイキっぱなしになり、啓吾がイク時にようやく声を出すことができた。  ヘロヘロのまま朔に連れられ、一緒にお風呂に入ったら流れるように襲われた。 「朔····うあぁっ、滑っちゃうよ?」 「大丈夫だ。俺が支えててやるから。そこに手ついて、足上げろ」  壁に手をつき、片足を浴槽に乗せる。なんだか凄く恥ずかしい格好だ。そして、リクエスト通りにお尻を向けて『挿れて』とお強請りをする。  支えてくれているその手の力強さにドキドキして、余計にバランスが取れなくなる。  浴室に響く嬌声が、いつもより素直で甘いと言われ、必死に声を抑えたが無駄な足掻きだった。  長風呂を終えて部屋に戻ると、啓吾がチョコミルクを入れてくれていた。 「大玉のやつさ、無理矢理食わしたからしんどかっただろ? ごめんな。皆やるから俺もやりたくなっちゃった。あれ、残ってたやつミルクに溶かしたんだ。美味いから飲んでみて」 「わぁ、良い匂い。いただきまぁす」  ミルクの甘さとチョコの甘さが、丁度良く混じり合って程良い味わいになっている。飲みやすくて美味しい。  勿論、チョコが美味しいのも嬉しいが、僕だけでなく皆もチョコを用意してくれた事がとても嬉しい。八千代から貰っただけでも驚いたのに、まさか皆もだなんて夢にも思わなかったんだもの。   「これ美味しい。好きぃ。えへへ、幸せだなぁ」 「お前、蕩けた顔してんなぁ。チョコみてぇに溶けそうだぞ」 「そんなに蕩けてる? しっかりしてるつもりなんだけどなぁ····」 「結人、今のは可愛いって意味だ。場野が素直じゃないだけだから気にすんな」  朔に通訳されてしまった八千代は、照れた様子で髪を搔き上げた。八千代は反論もせずに、コーヒーを啜る。  どうやら図星だったようで、大人しい八千代を見て皆は小さく笑った。僕はチョコミルクを少し啜って、微笑んだのを隠した。  そして、このポカポカした雰囲気なら聞けるかもしれないと思い、ずっと思っていた疑問をぶつけてみた。 「ねぇ、なんで皆えっちの時に声出ないの?」 「「「「ん?」」」」  皆、一様にキョトンとしている。そんなに変な事を聞いてしまったのだろうか。 「あのね、イク時とかに声漏らすことはあるけど、殆ど出ないよね? 気持ち良くないのかなって気になってたの。僕なんて、さっきも啓吾に凄い声って言われたし····。んでね、僕ばっかり喘いでて恥ずかしいから、これからは声出さないように頑張ろうと思うんだ」  お互い無音でえっちしているのを想像してみたら、なんとも言えない変な感じはするけれど。それでも、僕一人が喘いでいるのを思い返すと、茹で上がりそうなほど顔が熱くなるのだ。   「え、過去一気持ち良いよ? マジで。ヤバいくらい気持ち良いから。すげぇ声つったの悪い意味じゃないんだけどな····。だから、声我慢すんのはやめて」 「うん、そう。ホントに気持ち良過ぎるんだけど。俺は積年の想いが乗っかってるから余計ね。なんなら、ゆいぴのえっちな顔見てるだけでもイキそうだよ。ホントお願いだから声我慢しないで?」 「俺もすげぇ気持ち良いぞ。大畠に、俺のを全部飲み込める女はそういねぇだろって前に言われたんだ。お前、凄いらしいぞ。とりあえず、声は我慢すんな」 「俺はそもそも突っ込んでイけたんが初めてだからな。わかんだろ? まぁ、声は出ねぇけど。お前は素直に()かされてろ」  なんだか、みんな必死だ。そんなに僕に声を出してほしいのだろうか。それよりも、疑問は解消していない。 「え、僕は声出さないとダメなの? 待って。答えになってないよ。気持ち良いと声出ない?」 「あー····別に出ねぇな。声なんか意識した事すらねぇわ。どんだけ気持ち良くても、出ねぇもんは出ねぇよ。つぅか、突っ込みながらアンアン喘いでんのウザくねぇか?」 「ウザイかはわかんねぇけど····、俺もよっぼど興奮してないと出ねぇなぁ。あっ! ケツでイクのがすげぇからじゃね?」 「いや。ゆいぴ、挿れてなくても声出るよね」 「結人は可愛いんだな。そういう事だ」 「どういう事!? 全然わかんないんだけど····」 「ゆいぴが可愛いって事だよね? あっ! ゆいぴの声聞いてたら、つられて出る時あるなぁ」 「あー、それ俺もある。感じてくれてんだなぁって思って滅茶苦茶しだした時とかな」 「なぁ。俺ら、段々結人へのイジメ方キツくなってないか? 結人が受け入れちまうから止めなかったけど」  朔が不安そうに言った。だが、イジメられているという感覚が、そもそも僕にはないのだけれど。 「ゆいぴの声の出し方で限界かどうか判断してるとこあるんだよね。だから、声出してくんないとちょっと不安かも」 「それはあるな。煽られるわ限界わかんねぇわってヤベェからな。お前は今まで通りでいいんだよ。変な事ばっか考えんな」 「う、うん。うーん······わかった」 「でもさ、結人がこうやって言ってくれんのは嬉しいよ。考えちゃった時は何でも言って? 俺らと結人じゃ、感じ方とか分かんねぇトコとか結構違うみたいだし」 「わかった····。結局、皆も気持ち良いんだよね? なんだ······良かったぁ」  皆の喘ぐ声はそうそう聞けそうにないらしい。だが、ちゃんと気持ち良くなってくれている事を知れて安堵した。僕は緩んだ心を引き締めるように、少し冷めてしまったチョコミルクを飲み干した。  僕は、皆とまたひとつ、近づけた気がして嬉しかった。素直にイチャイチャもできたと思う。  次のイベントは修学旅行だ。1人だけクラスが違うりっくんが発狂しそうだが、旅先でもっと仲を深められればいいなと思う。りっくんの対処は、追々考えよう。

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