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何が楽しいんだか

 淡いキャラメル色のもこもこしたニットセーターに、アイボリーのロングスカート。レースがひらひらしていて可愛い。  この出で立ちで僕は、朔と八千代に挟まれ買い物をしている。さっきお店で試着させられ、そのまま着てきたのだ。  これが、人目を軽減する案だと言う朔。羞恥責めの間違いじゃないのかな。  鮮魚売り場で魚を吟味している啓吾とりっくんを、かれこれ5分くらい待っている。いつもより周囲の背線が刺さるのは、気の所為なのだろうか。 「ねぇ朔、いつもより見られてない?」 「そりゃさぁ、こ〜んな可愛い子がイケメンに囲まれてりゃね」  沢山のサーモンを手に、漸く戻った啓吾が言う。今日はサーモンとアボガドのカルパッチョを作るらしい。 「でもさ、見られてんのは()()()()()だよ。ねぇゆいぴ、手繋ご♡ ほら、おいで」  りっくん手を引かれ、僕はお菓子売り場に連れ込まれた。今夜は映画鑑賞会をすると言っていたので、お菓子とジュースを買い込む気なのだろう。  案の定、食べきれないほどのお菓子をカゴに詰め込むりっくん。食材の買い出しが終わると、女装させられて不機嫌な僕の機嫌をとる為、チョコケーキの乗った豪華なクレープを与えてくる啓吾。  もう、しょうがないなぁ。と、ゲンキンな僕はまんまと機嫌をとられた。  僕がご機嫌になったのをいい事に、デートと称してあちこち寄り道する。今度は、皆が僕好みの服を買い漁っていた。またファッションショーを兼ねたえっちをしてくれるらしい。  啓吾が言うには、僕が直視できないというのがポイントなんだそうだ。確かに、そういうのを着て抱かれると、いつもより感度がバカになってしまう。  だから、ちょっと困るんだけどな。なんて、惚気のような不安を抱きつつ帰路についた。  帰るなり、朔に担がれ部屋へ連れ込まれる。鍵、閉めちゃったんだけど。何をする気なのだろう。  それにしても、朔の部屋は相変わらずシンプルだなぁ。ベッドと仕事用のデスク以外、大きな家具はない。観葉植物やトカゲの飼育ケースがあるだけだ。  て言うか、いつの間にトカゲを5匹も。越してきた時に連れていたのは、確か2匹だったはずなのに。なんでもいいけど、今度こっちの家族も紹介してもらおう。  僕が部屋を見回していると、朔が明明とした笑顔で戻ってきた。クローゼットから何かを取ってきたようだ。  流れるように、僕をベッドに押し倒して下着を剥ぎ取る。そして、持ってきた物を僕に履かせた。 「待っ、やだよ!? それだけはやぁだぁ!!」  力で敵わない事は分かっているが、それでも必死に抵抗してみせる。 「1回だけ····ダメか?」  なんて悲しそうな顔で見つめてくるんだ。僕が皆のその顔に弱い事を、ちゃんと知った上でやってるんだよね。本当に狡いんだから。 「うっ··狡····、もう! 1回だけだからねっ」  女性物の下着なんて、何を考えてるんだ。朔のばか····。  生地は純白。前面にだけ濃いピンクで花柄の刺繍が施してある、ツルツルのパンティ。シルクなのかな。  僕は、細いゴムに親指を掛けて引っ張り、パンッと弾いてふてぶてしく聞く。 「こういうの、好きなの?」 「ん? 結人は何着ても可愛いからな。1回でいいから、下着(なか)まで可愛い物で埋めつくしたかったんだ」 「んぇ? 女の子にしたかったんじゃないの?」 「なんでそんな事しなくちゃなんねぇんだ? 確かに女物も似合うけど、結人は女じゃねぇだろ。こんなに可愛いけどな」  顎クイして良すぎる顔面を近づけて、何を言ってくれてるんだ。心臓が飛び出ちゃうよ。  朔は、女の子との経験がないから、多かれ少なかれ興味があるのかと思ったんだ。だから、()()()()そういう事をしたいのかと。  しかし、それを正直に話すと凄く機嫌が悪くなってしまった。 「なんだそれ。俺は別に女に興味があるわけじゃねぇぞ。男とか女とか関係なく、結人が好きなんだ。····なんか腹立つな」  そう言って、朔は乱暴に僕の身ぐるみを剥ぐ。今しがた履かせたパンツも、ぺいっと投げ捨ててしまった。 「んな事思われんならずっと裸でいろ。俺は結人が好きだからな。格好とかそんなのどうでもいい」  朔は首筋に顔を埋めて言った。手は全身を撫で回し、ねっとりとした愛撫を始める。 「んぁ····朔、ごめ··なさい。やんっ····あ、ねぇ待って、夕飯の支度しなくちゃ··んんっ····」 「俺は今日、これ担当だからいいんだよ。あと、許さねぇ」  小さな声で『許さねぇ』と言った。どうしよう、困ったな。  けれど、それよりも気になる事を言った。 「はぇ··? これ担当?」 「結人に可愛い下着着せてこいって、何日か前に啓吾に渡されたんだ」  啓吾の企みだったんだ。って、全部脱がせちゃったじゃないか。 「皆、僕を女の子にしたいの?」 「だから違うつってんだろ。まぁ、ここは()()()みたいなんだろうけどな」  挿れていた2本の指を広げ、くぱっとアナルを開く。  おいおい、僕のドコが女の子だって? 「お、女の子じゃないもん。朔のばかぁ····」  僕は、両手で顔を覆って隠れた。けれど、その手をあっさり拘束されてしまい、じっと見つめられながら愛撫を受ける羽目に。  まだ不機嫌なのか、それとも余裕がないのか。解ぐし終えるとお尻を持ち上げ、痛そうなほど大きくなったおちんちんをアナルに叩きつける。 「ひぅっ····」  思わず上擦った悲鳴をあげてしまった。だって重量が半端じゃないんだもの。亀頭の先でアナルを拡げ、グイッと押し挿れる。  入ってくる圧迫感がいつもより増し増しで苦しい。しっかり解ぐしてくれたはずなのに。それほど大きいという事なのか。 「朔··おちんち、いちゅもよりおっきぃ?」 「あぁ、今日の結人、いつにも増して可愛かったからな。ちょっと余裕ねぇ」  元々、最中は特に口数の少ない朔。本当に余裕がないらしく、無言で突き続ける。けれど、ポロッと言葉を落とした。  本当は服を着せたままシたかったのだと、残念そうに本音を漏らす朔。なんだか、悪い事をしてしまった気分だ。 「あとで、ね··、ンぁ····えっと、映画観る時、女の子のカッコ··してあげる」  最後まで映画を観るという条件のもと、そんな約束をしてしまった。朔は、雄々しい顔で『頑張る』と言う。が、この顔じゃ最後までどころか、見始められるかすら怪しいな。  今はとりあえず、夕飯ができるまでに2回はすると言って、容赦なく突きまくるんだもん。本当にイキ死ぬかと思った。  けど、興奮して僕を潰そうと必死になる朔はカッコイイ。それに、どういうワケか可愛い。このまま、夕飯が食べられなくなるくらい、潰されてもいいと思えるほどに。  とは思ったものの、実際にそんな事はしない。だって、優しすぎるんだもん。朔が加減さえ間違えなければ、夕飯を抜く羽目にはならないのだ。  美味しい夕食を食べ終え、お菓子を山積みにして、お風呂も済ませて映画鑑賞会が始まる。  と、思ったのだが、予想通りそうは問屋が卸さなかった。確かに、女装するとは言った。けど、意味が分からないのは、皆の目の前で着替えさせられている事。それも、さっきと違う服。  当然のように女性物の下着とセットで渡された。さっきとは色違いの水色だ。刺繍は黄色。それ自体は凄く可愛い。 「ねぇ、なんでさっきの服じゃないの? こんなのあったんなら、わざわざ買いに行かなくても良かったんじゃ──····ん?」  渋々履いてはみたが、こんなの似合うはずないでしょ。いや、似合ってたまるものか。  それよりも服だ。これ、どっちが前なのかな。 「お前、それ着て外出るつもりかよ」 「そんな格好で出たら、俺ら発狂するぞ」 「絶対他の人には見せたくないね」 「見せらんねぇだろ。着なくても分かんじゃん。エロすぎだって」 「え、この服なんなの? 普通の服じゃないの? ねぇ、これどっちが前?」 「もうどっちでも良いから早く着ろ。そんな小せぇパンツ履いて女みたいに座ってると犯しそうになる」 「あっはは。さっくんがバカになってる。さっき抜け駆けして犯してきたくせにさ〜」 「待って待って、どっちでも良くないよ。ゆいぴ、大きく空いてるほうが後ろね」  と、言われ着てみたが、なんだこの服は。背中の部分がごっそり無いじゃないか。お尻の割れ目が少し見えている。  前は、胸の所がペラっと開く仕様になっている。上部をボタンで留めておけるんだ。何だこれ、必要なのかな。  僕は不思議に思いつつも、皆の反応は良い。なんだか、凄く喜んでいるように見えるのだけれど····。

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