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温泉では気をつけて

 夕飯の前に、冷えた身体を温泉で温める事にした。湿った服を脱ぎ捨て、浴衣に着替え温泉へ······ 「えっと、こっちが上でしょ。わ··長いなぁ····。でぇ、ここで····ん? あれ? んぇー··ねぇ八千代、なんか着れない」 「ぁんでだよ。啓吾でも自分で着れてんぞ」 「ちょっとー、失礼なんですけどー」  皆みたいに上手く着れない。背が低いからなのか、凄く丈が長いんだもん。子供用は意地でも着ないと断った手前、自分で着たかったんだけどな。  断念して八千代に着せてもらう。文句を言いながらも、テキパキ着せてくれる八千代。やっぱり、面倒見がいいんだよね。  そして、漸く着た浴衣を、くるっと回って皆に見せる。 「どう? 大人用のでも大丈夫でしょ?」 「エッロ♡ なぁ、今すぐ抱いていい?」 「え、エロくないもん。啓吾のばぁか。もう! 先に温泉に入るんだかr──んわぁっ」 「待てるわけねぇだろ」  待てができずに押し倒してくる啓吾。畳の香りと啓吾の甘い匂いが混じって酔いそうだ。  思わず、両手を開いて受け入れてしまいそうになる。 「やぁっ、啓吾····待っ、んぁっ····」  首筋に唇を這わせ、浴衣に手を突っ込んできた。けれど、八千代が啓吾を引き剥がす。 「アホが。せっかく着せたのに秒で脱がすな」 「えーっ、先に抱きたーい」 「猿か。先に温泉入って結人(あった)めねぇと、風邪ひいたらどうすんだ。雪遊びで身体冷えてるんだぞ」 「····はーい」  叱られた子供のように、ムスッとしながらも従う啓吾。可愛いから、浴場まで手を繋いで向かった。 「わぁ! 温泉だぁ〜」 「ぶはっ····アホな反応してんなよ。もうちょい他に感想ねぇんか」  八千代に笑われてしまった。 「むぅ····だって、温泉なんだもん。····あ、露天風呂だー」  りっくんも驚くほどの棒読みになってしまった。啓吾とりっくんにまで笑われてしまい、僕の頬が膨らむ。 「感想なんかなんでもいいじゃねぇか。結人がイイ笑顔見せてくれたんだ。充分だろ」 「朔ぅ····」  僕の肩を抱いて、しれっと身体を洗いに誘導される。 「え、待って。自分で洗えるよ?」 「誰も居ねぇから俺が洗ってやる。何か文句あんのか?」 「······ないです」  言い知れぬ圧を感じた。もしかして、朔もテンションがバグってるのだろうか。  ええいままよと朔に洗ってもらい、早々と温泉に浸かる。冷える鼻先で日常との違いを感じながら、温泉に溶け出すように日々の疲れが癒えてゆく。  と、すーっと啓吾が寄ってきた。隣に座り、肩を寄せ合う。 「温泉気持ちぃな。熱くねぇ?」 「うん、大丈夫だよ。気持ちぃねぇ」  啓吾の肩に頭を預け、幸福なひと時に浸る。隣に座っていたりっくんは、ヤキモチを妬いたのか手をキュッと握ってきた。  その手を一度握り返し、少し緩め指を絡める。そして、もう一度キュッと握った。 「りっくんも気持ちぃ?」 「気持ちぃ。死にそうなくらい幸せ」 「んへへ。まだまだ死なないでね」  僕から手を握ると、りっくんはいつも幸せを噛み締めるように俯く。そろそろ慣れればいいのに。なんて、僕の言えた事じゃないけれど。  雪がチラついてきた。冷えないようにと、啓吾が僕の肩に手を回す。すっごく(あった)かいや。  そして、りっくんと八千代が頭を洗いに行ってる隙に、啓吾が僕を対面で膝に乗せる。啓吾の首に手を回し、甘いキスを執拗く交わす。  こんな所で、ダメだと分かっているのに止まらない。目が合うと、吸い寄せられるように唇を重ねてしまう。  ど平日なのでお客さんが少なく、ほぼ貸切状態だ。とは言え、全く居ないわけではない。僕たちと同い歳くらいのお客さんだって居た。  もしも、こんな所を見られたらどうするつもりなのだろう。上に乗っかっているだけでも、充分見られたらマズい状況だ。  僕は、そろそろやめなくちゃと顔を離す。けれど、後ろから朔が耳を噛んできて、嬌声と共に力が抜けてしまった。  朔が止めてくれないとなるとヤバい。このまま、ここでする気みたいだ。それだけは阻止しなくては。 「ね、待って。部屋に戻ってか··ら、あんっ、やっ··朔、お湯入っちゃう」  僕の声など聞こえていないのか、待ったナシで入ってくる。雄を剥き出しに求められて、阻止などできるはずがなかった。 「なぁ、ここの効能知ってるか?」  じゃぷじゃぷと水音を立てながらピストンを速める朔。効能····そう言えば、さっき朔が一生懸命読んでたっけ。 「んぁっ····し、知らない」 「やっぱり聞いてなかったのか。温泉だつって可愛くはしゃいでたもんな。ここの効能な、血行促進とか疲労回復なんだって。良かったな。いつもより元気いっぱいで抱いてやれそうだぞ」  なんだ、『元気いっぱい』って····、可愛いな。それより、大変な宣言をされたような気がする。けれど、高鳴る胸は正直だ。  ふわふわしてゆく脳で、皆と沢山触れて繋がる事を妄想してしまい、胸の奥がきゅぅっと切なくイクんだ。 「あぁっ···ん、ぇ··いちゅもより··? いっぱい、気持ちくて、死んじゃうやちゅ?」 「あぁ、イかせまくって苦しくなるやつ、いっぱいシてやる。朝まで離せねぇぞ」  耳元で甘い囁きを放つ。脳が痺れてイッてしまう。けれど、何も出せなくて苦しい。  啓吾が、僕のおちんちんをギュッと握っているのだ。お風呂の中で射精してしまわないように。その所為で、余計にお尻が締まる。 「んぁ····締まりすげぇな。ケツでイッてんのか。ナカのうねりヤバいぞ」 「さっくん、俺も挿れたい」  頬を紅潮させた啓吾が、おちんちんを滑り込ませようと押し当ててくる。 「まだそこまで解れてねぇだろ。て言うか、俺と挿れて大丈夫なのか?」 「ん、結人が力抜いてくれたらいけそう」 「む··無理らよぉ····おちんちん、ギュッてしてぅからぁ、力入っちゃう」  諦めた啓吾は、舌で口を犯すことに徹する。勿論、おちんちんは握ったまま。  お返しに、僕も啓吾のおちんちんを握ってシコシコしてみる。 「んぅ····しこしこ、気持ちぃ?」  意地悪のつもりで、耳元に声を落としてみる。 「んぁ····ヤバ。気持ちぃ、つかイク。飲んで」  そう言って、啓吾は僕のおちんちんを朔に預けて立ち上がる。そして、口内を目掛けて射精した。 「見せて」 「んぁー··」 「ん、ごっくん」  甘い声で下される指示に従う心地良さ。トロンと瞼が重くなってゆく。 「ねぇ、後ろおっぱじめてるけど」 「あ? しゃーねぇだろ。俺も後で犯すつもりだったしな。どうせお前もだろ」  なんて、遠くに聴こえる低音に腰が跳ねる。八千代もやる気だったのか。皆、そんなに待ちきれないのかな。  昨日も夜中までシていたのに、早くも温泉の効果が出ているのだろうか。だとしたら凄いや。 「まぁね。でもあれ、そろそろ逆上せるんじゃない?」 「あー··、ぽいな。おい朔、結人逆上せっから一旦やめろ」 「部屋戻ってから続きシなよ」  八千代とりっくんの声が届いたらしく、朔が深呼吸をしてからおちんちんを抜こうとする。と、その時、脱衣場から人の声がした。  マズいと思った次の瞬間、ふわっと身体が浮き、直後にガラッと戸が開いた。例の同い歳くらいの人達が入ってきたようだ。若い声が数人分、背後に聞こえる。  朔は、僕を膝に乗せて背中を向けた。それで完全に隠れてしまう僕。おちんちんは入ったままだ。これは非常にマズい状況じゃないか。  八千代とりっくんが隣に入ってきた。啓吾は正面で見守ってくれている。 「朔、ぬ、抜いて?」 「声、我慢できるか?」 「············頑張る」 「や、待て。コイツが我慢できるわけねぇだろ」 「じゃどーすんの? このままじゃゆいぴが逆上せちゃうよ」  僕たちはコソコソと対策を練る。 「ゆっくり····抜いたら、大丈夫だもん」 「お前、毎回そう言うけど我慢できてねぇんだよ」 「朔が後ろから口塞ぐんがベストじゃねぇ? 俺らが塞いだら怪しすぎんだろ」  そうこう言っているうちに、本当に逆上せてきた。 「おい結人、大丈夫か? 口塞いで抜くからな」 「はぇ····ん、頑張る」  朔が僕の口を手で塞ぎ、僕を少し前へ押し出しておちんちんを抜いた。 「ふ、んぅっ····」  ゆっくり引き抜くと、抜ける瞬間、僕が朔を離さないように絡みつくんだ。それを無理やり離される名残惜しさと快感が、少しだけ声を溢れさせた。 「ちょっ····」  受け止めてくれた啓吾が、慌てて口を塞ぐ。 「ごめんね(ほぇんへ)」 「はぁ〜····もう一瞬頑張れたら良かったんだけどねぇ〜」  啓吾が呆れ顔で言う。その一瞬で気を抜いてしまった、僕の落ち度だ。 「ンなもん期待してねぇわ。結人、立てっか?」 「こ、腰抜けてる····。もうちょっと入ってるから、平気──」 「じゃねぇだろ。逆上せてんじゃねぇかよ」  八千代がお姫様抱っこで脱衣場まで連れて行ってくれる。ほんの数メートルだが、僕を隠すようにりっくんが壁になってくれていた。 「ゆいぴ、顔真っ赤だよ。無理しちゃダメでしょ」 「····うん、ごめんなさい」  椅子に座らせてもらうと、りっくんが水を飲ませてくれた。人が居ないからって、当たり前のように口移しで。 「んっ、んっく··んん····っはぁ」  唇を離すと、零れた水を指で拭ってくれるりっくん。その目が雄々しくて、お尻がキュンとしてしまった。 「ゆいぴ、大丈夫?」 「だいじょばない····。りっくんの所為で、またお尻キュンてしたぁ」 「あは、甘えるの上手♡ ちょっとだけ指でイかせて──ってぇ!!」  顎クイをして迫ってくるりっくんの頭を、八千代が後ろから(はた)いた。 「アホ。お前も落ち着けや」  りっくんを押し退け、八千代が浴衣を着せてくれる。フラフラする僕を支えながらとは思えないくらい手際が良い。 「ぁんで今日はストッパーのお前らがはっちゃけてんだよ」  確かに今日は、いつも問題児の八千代と啓吾のほうが大人しい。て言うか、りっくんと朔をストッパーだと思ってたんだ。いつも好き放題なのは、その所為だったんだね。  僕が落ち着いた頃、朔と啓吾も戻ってきた。漸く、朔のおちんちんが落ち着いたのだろう。  それにしても、朔が見るからに落ち込んでいる。大丈夫だろうか。

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