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こういうのじゃなかったんだ

 捕食者としての本能を剥き出しに、僕の腕を後ろへ回して縛り始めた八千代。時々、痛くないかと確認し、実際に縛るのは初めてだと教えてくれる。  あまりに手際がいいから、僕が心配すると思ったのだろう。こんなの、八千代が僕以外にするところなんて想像できないや。  八千代は、それ以外に言葉を発する事はなく、集中して黙々と縛る。加減を見ながら、要所ごとにキュッと絞められると下半身が反応する。 「足も縛るか?」 「んぇ····ん、シて」  何度か甘イキしているからだろうか。ボーッとして頭が回らない。好きなようにしてくれればいいと、僕は完全に身を委ねる。 「ぁんだよ、縄酔いまですんのかよ。まぁ、しそうだとは思ってたけど····クソかぁいいな」  それが何かは分からないが、確かに、酔っているような感覚はある。お酒を飲んだ時のふわふわに近いかもしれない。  ロープが擦れるのが気持ち良くなってきて、無意識に、縛る邪魔にならないようほんの少しだけ身を(よじ)る。おちんちんからは先走りが垂れるけれど、一度も射精はしない。  足を曲げた状態で、何箇所か太腿にロープを食い込ませる。あまり肉付きの良い僕ではないけれど、視線を落とすと腕や胸にも食い込んでいた。  胸は上下で挟むようにして、少しキツめに縛っている所為かいつもよりふっくらしている。 「ん····おっぱいみたい」  僕が呟くと、りっくんがスマホからひょこっと顔を覗かせた。 「後でいっぱい弄ってあげるね」 「んへ··、りっくんのえっち♡」 「ん゙、は? ゆいぴヤバくない? エロさ増し増しすぎ····鼻血出るかと思った····」  おバカなりっくんは、鼻と口を手で覆って言う。少し落ち着くと、乳首に爪を掛けて弾く。身体がビクンと跳ね、しょろしょろとお漏らしをしてしまった。うっとりとした表情で僕を見下ろすりっくんは、変態と言う以外に表現できないほど変態っぽい。  りっくんは、『跳ねさせんな』と八千代に怒られながらも、お漏らししている僕の痴態を動画に収めている。メンタルが強いと言うのか、図太いと言うのか、撮るのはやめないながらも軽く拭いてくれた。  そして、仕上げだと言わんばかりに、後ろからロープを引く八千代。首と腕が引っ張られる。そうか、繋がっているんだ。  この状況に興奮している自分がいる。縛られているだけなのに、どこかを弄られているわけでもないのに、凄く気持ち良い。  しかし、だ。ここまでしてもらって物凄く言いにくいのだけど、“緊縛”という物を知らなかった無知な僕が悪いのだけど、後になって言うのも嫌なので正直に本当の事を伝えておこうと思う。 「あ、あのね、僕ね、腕縛るだけだと思ってたんだ··。いつも僕が自分で解けるようにしてくれてるでしょ? それのね、解けないバージョンくらいのを想像してたの。でもね、これね、んふふ··気持ちぃ」  皆は、呆気にとられているようだ。そりゃそうだろう。今更すぎる。  言い訳させてもらえるなら、何が始まっているのかよく分からなかったのだ。けど、皆が凄く愉しそうだったから、されるがままでいいやと思ってしまった。  まさか、こんなえっちに縛られるなんて、予想していなかったものだから、鏡で自分のこの状態を見て耐えられなくなった。だから、これは僕の本意ではなかったと、せめてもの逃げ口上を張っておきたかったのかもしれない。  真意がどうであれ、もはや作品の如く縛り上げられた僕。りっくんは、まだスマホで撮影しながら妖艶な笑みを浮かべている。 「ん··、やっぱり紫合うね」 「すげぇな。器用だとは思ってたけど、これは芸術の域だな」 「まだまだ(あれ)ぇわ。今度は吊るしてやっからな」 「ならフックとか取り付けねぇとな。にしてもイイ色だな。俺も、紫が良いと思ってたんだ」 「でしょ? 赤と迷ったんだけど、ゆいぴのギャップ狙ったエロさ際立たせたかったんだよね。ふふ····ゆいぴ、凄く綺麗だよ」  僕に、スマホと蕩けるような視線を向けて、とても柔らかく頬へ手を添え撫でる。そこに神経が集中し、頬を撫でられただけで軽くイッてしまった。  両手は後ろ手に上腕を重ねて、足は折りたたんだ状態で縛られている。どうなっているのか分からないけれど、どう頑張っても足を閉じきれない。倒れてしまったら、自力では起き上がれないだろう。  僕が自分の可動域を確認していると、約束通りおっぱいを弄び始めたりっくん。少しふくらんだ胸を持ち上げるように手を添え、一心不乱に吸いついている。赤ちゃんみたいだ。  頭を撫でたいけど、手が動かせないので仕方がない。頑張って顔を寄せ、キスを試みる。けれど、届かない。  それに気づいたりっくんが、ふわっとキスをしてくれる。そして、僕のおちんちんを弄り、本格的に深いキスへ変わってゆく。  縛ってもらう為、ベッドのヘリに正座していたのだが、バランスが取りにくくて押されたら一緒に床へ落ちてしまいそうだ。すると、朔が後ろに来て肩を持って支えてくれた。耳元で愛を囁くおまけ付きで。  前をりっくんが占領し、朔が後ろから挿れようとお尻を開く。出遅れた八千代は、舌打ちを置いて部屋を出て行ってしまった。  僕が不安そうにしていたからだろう。りっくんが安心させてくれる。 「大丈夫だよ、ゆいぴ。もうすぐ啓吾が帰ってくるから··ね」  そうか、夕飯を温めに行ったのか。いつも口からは文句しか出ないが、行動はそれに伴っていない。八千代らしい優しさだ。  りっくんに扱かれ、精液を出し切った僕は潮を噴き続ける。引き腰になっているところに、朔が捩じ込んで突き上げた。腰がグンと前に突き出され、信じられない勢いで潮を噴いて撒き散らす。  2人とも、縛られた僕を見て興奮しているらしい。いつもより、かなりハイペースで責めてくる。朔なんて、ろくに奥を解さないまま貫いた。沢山イッてゆるゆるだったから、くぽっと簡単に抜けてしまったのだろう。  もうグデグデな僕とは違い、余裕でピストンを強める朔は、太腿を縛ったロープと肌の間に指を添わせる。腰の動きとは真逆の、ゆっくりと撫でる柔らかい刺激に、意図せず深くイッてしまった。  そうこうしていると、帰ってきた啓吾がヤリ部屋に顔を出した。   「け、ご····お、おかえ──んぁ゙っ」  僕をベッドに押し倒したりっくんが、腰を持ち上げて挿入した。ぐぷぷと奥を潰すように、体重を乗せて深く押し挿れる。 「え〜なになにぃ? めっちゃ楽しそうなコトしてんじゃん」  帰るなり、ただいまも言わずに混じろうとする啓吾。りっくんに『先お風呂入ってこい』と言われ、唇を尖らせてお風呂へ向かった。  きっと、八千代に捕まり、オムライスを食べてから戻るのだろう。その間も、僕はりっくんと朔に愛され続ける。    予想通りオムライスを食べ、デザートにアイスまで堪能し戻った啓吾。仕事終わりのアイスがとても美味しいのだと言いながら、僕の足を広げて固定する。  どうやら、完全に足を閉じられないようにしたいらしい。以前、気絶している間にやられた、棒付きの足枷で固定される。  そして、啓吾が僕に見せたのは、洗面器に張られたローションとガーゼだ。それで一体、何をする気なのだろう。  大きくて分厚いクッションに上体を乗せ、僕を仰向きで寝かせた啓吾。僕の半勃ちしたおちんちんを、りっくんが優しく持って支える。しっかりと皮を剥いて亀頭をむき出すと、啓吾がそこへローションに浸したガーゼを当てた。  冷んやりしていて、下半身がピクッと反応を示す。何が始まるのかと、不安いっぱいに見つめる。  啓吾は、両端を摘まんだガーゼをゆっくりと滑らせた。 「ん゙!? あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙!! 何しょぇっ、や、あ゙っ、らめ出ちゃ··ん゙ん゙ん゙ッッ」  左右に一往復、擦られただけで潮を噴射してしまった。亀頭を、味わったことのない強い刺激が襲う。  特段、強く擦られたわけではない。それなのに、ひと滑りで完勃ちするくらいの快感が走り抜けた。 「ローションガーゼ♡ 知らねぇ?」 「知ら、に゙ゃぁッ!! ん、やぁっ! も、らめっ、み゙ゃっ、お(ちお)、止まんにゃ、ひぅぅっ!!」 「あっは♡ ゆいぴ腰ガックガク♡♡ やば、見てたらまた勃った」  そう言って、りっくんは啓吾と場所を代わり、腰の下に小さめのクッションを挟んで浮かる。ぽーっ焦点の定まらない僕を見下ろし、ナカの壁を押し拡げるようにぐちゅぬちゅっと音を立てながら挿れた。  よく見るとりっくんは、いやにニコニコ笑みを浮かべながら黒い帯を持っている。そして、ふっと笑顔を薄め、そこに凄艶さを加えて言う。 「じゃぁ、そろそろ目隠ししよっか。これも、()()()()()、ね♡」  言葉尻は軽いが、物凄い圧を感じる。否応言わせる気などなく、僕に目隠しをした。

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