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悪戯に惑わせて
せせらぎよりももう少し賑やかしい、そこそこ流れの早い渓流。けれど、思っていたよりも細くて、流水音が心地良い小川みたいだ。
この先はもっと幅が広くなっていて、万が一にも僕が落ちたら危ないと判断したらしい。落ちるとしたら、間違いなく僕だもんね。
森の中を突っ切るように流れているのだけれど、凄く浅くて魚なんて居るのかなって感じ。水深は僕の膝下くらいまでしかないような、ここならちょっと遊べそうだなって雰囲気の川だ。
「ねぇ、ここに魚なんているの?」
「いるよ。見てみ」
落ちないよう啓吾に手を繋いでもらい、川べりからそっと覗き込んでみた。小さい魚が数匹、仲良さげに泳いでいる。
「わぁ! ホントだ、結構いるんだね。浅いから居ないのかと思ったよ」
「浅いつっても、お前の膝上くらいまではあんぞ」
と、八千代が言った。いや、どう見ても膝下くらいまでしかないよ。
僕が反論すると、じゃぁ入ってみろと言われた。なので、今度は八千代に手を繋いでもらい、ズボンの裾を捲って入ってみる。
油断していた僕は、何も考えず川べりから数センチの所へぴょんと飛び込んだ。
「わっ、えっ、うわぁっ!」
川底がズボッと沈み、水面は僕の膝上くらいになった。膝まで捲っていたズボンがずぶ濡れだ。
「な? 見た目よか深いだろ」
「うん。なんか····うん、僕の足が短いんだろうなって今思ってる。皆だったら余裕で膝下だよね」
八千代は、大笑いしながら僕を引き上げる。
「お前の足が短ぇんじゃねぇよ。単純にチビなだけだわ」
そう言って、引き上げた僕を軽々と肩に担ぐ八千代。
「んわぁっ····むぅ··チビじゃないもん! 八千代のばぁぁぁか!」
「へいへい、チビじゃねぇよな。ちっこいだけだもんな」
「むぅぅっ····八千代のばかぁぁっ!!」
僕の声は森に響き渡り、驚いた鳥たちが飛び立った。八千代は、怒りに震える僕を抱えたまま、着替えの為にキャンピングカーへと向かう。
「降ろしてよ。自分で歩けるもん」
「靴置いてきちまったなぁ」
棒読みの八千代。絶対にわざとだ。
「八千代のばか」
「お前、今の自分の状況分かってっか?」
小さい子供みたいに足を閉じたまま抱っこされて、僕は八千代の首に抱きついている。
少し汗ばんだ八千代の首元が、八千代の匂いでいっぱいだから離れられないんだ。どうせ、バカは僕のほうだよ。
「ふんっ! 八千代のばかばかばかっ」
「ふはっ····『バカ』以外ねぇのかよ。かぁいいな」
「他にもあるもん! えっと··えっとぉ····、八千代の····えーっと······あっ! 八千代のえっち!」
「ははっ、褒めてどうすんだよ」
ケタケタとわらう八千代。
だって、僕のお尻に触れてる指が、時々えっちに撫でてくるんだ。まか、悪口と言うより現状を指摘しただけだよね。
「ほ、褒めてないもん。今だって、ほら、指····えっちなんだもん」
「これか?」
確認と見せかけて、八千代は僕の玉裏をズボン越しに指でなぞる。
「ひぁぁっ♡ そ、それ、ぞくぞくしちゃうのぉ」
「うん、知ってる。お前の弱ぇトコ全部知ってんだよ」
耳元で甘く囁く八千代。僕の足先に触れる股間が硬くなっている。僕は仕返しのつもりで、それに爪先を当てて刺激した。
もう結構しっかり勃ってるんだよね。爪先で亀頭に触れられるくらい。
調子に乗って、親指でぐりっと押したら反撃を食らってしまった。八千代が、ズボン越しに指をアナルへ挿れちゃったんだ。
「へぁぅっ」
「ぶはっ····なんつぅ声出してんだよ」
「だ、だってぇ····びっくりしたんだもん」
「だけか?」
「うぅ〜〜····っ、き、気持ちぃです」
「ん。んじゃ着くまで感じてろ。あと、そのまま足で上手に俺のちんこ弄ってろな」
そう言って、八千代は僕の耳介をベロンと大きく舐めた。突き出した舌を舐められた時みたいに。
こんな事をされて、足で弄るなんて器用な事ができるわけないじゃないか。
「ひゃぁん♡ み、みみ耳ぃっ」
「お前、ンっとどこ食っても美味 ぇな」
バカみたいに甘いセリフを、吐きそうなくらい甘い声で流し込んでくる八千代。八千代の思惑にハマっているのか、僕はまんまと耳でイかされてしまった。
着くなりキャンピングカーに押し込まれ、扉を閉めるが早いか掬い上げるようなキスを受ける。僕は2段高い所へ降ろされて、八千代を見下ろす位置に立っているからね。まるで下から食べられているみたいだ。
キスをしながら1段ずつ上がってくる八千代。同じ段に立つと、今度は上から貪るようにキスを続ける。段々足に力が入らなくなって、壁に追いやられていた背中がズルズルとずり落ちていく。
座りこんでもやめてくれない。僕に跨り、両頬を包んで口を犯す。僕はもう、何度もイッてしまった。息も上手くできない。八千代の肩袖にしがみつく手にも、あまり力が入らなくなってきた。
絡み合う舌と熱い吐息が、この狭い空間の温度を上昇させていくみたいだ。
「シャワー、浴びるか?」
「ン··いい、このまま····」
僕が、このまま抱いてほしいと言いかけた時、車の扉が勢い良く開いた。
「このまま··じゃねぇだろ」
そう言って、ズカズカと乗り込んできたのは朔だった。どうやら、忘れ物を取りに来たらしい。
「朔 ····」
「場野、さっさと着替えさせろ。このままお前と俺で犯してたら、釣りする時間なくなるぞ」
「ハッ··、お前もヤる気かよ」
八千代は顰 めっ面で笑った。カッコよすぎてまたイッちゃったじゃないか。
そんな八千代の首根っこを押さえて、朔が静かに言う。
「何当たり前のこと言ってんだ。そんなエロい結人見て俺だけ抱かねぇなんて選択肢があるわけねぇだろ。いいからさっさと結人の服整えて出てこい」
「しゃ、朔 ぅ····」
本能に抗う朔を、僕は熱を込めて呼ぶ。すると、朔は大きく勃ったそれの先を僕の手に握らせた。ジーパンが苦しそうだ。ファスナーを降ろし、出してあげようかと思った時だった。
唸るような声で『次、そんな声で呼んだら犯すぞ』と言い、あまり僕を見ないように忘れ物を回収して車を降りた。
「八千代 、朔 怒ってぅ?」
「怒ってねぇよ。ありゃ我慢してるだけだわ」
「ふぇ··そうなの?」
僕がえっちばっかりシてるから、呆れて怒っちゃたのかと思った。朔の少し冷たい態度に、ほんのちょびっとだけ焦ったんだ。
そうじゃないのなら良かった。けど、後で謝らないとだね。
八千代は特大の溜め息を吐き、キスを交えながら僕を着替えさせて車を降りた。外では朔が待っていて、僕の肩をむんずと抱いて歩き始める。
僕が慌てて『すぐにえっちシちゃってごめんね』と謝ると、朔は『それは俺らの責任だ』と言い、立ち止まって優しいキスをしてくれた。
「結人はそのままでいいんだぞ。俺らが死に物狂いでセーブして、お前を楽しませるのも気持ち良くするのもバランスとってやるから、結人はその場を全力で楽しんでくれたらいいんだ」
そう言って、また甘く唇を重ねて愛情を沢山注いでくれる。朔の優しさは、いつだって僕に振り切ってるんだよね。
(て言うか、セーブするの死に物狂いなんだ····)
いつも、所々で本音が漏れる朔。可愛いなぁ、なんて言ったら失礼かな。
そして、隙を見逃さない負けず嫌い王が、僕を奪還しようと試みる。八千代は僕の腰を抱き、項に噛むようなキスをしてくるんだもん。ビクンと感じて腰を反らしてしまう。
漸く川に戻ったけれど、皆待ちくたびれて川遊びをしていた。
素手で魚を捕まえようって話になったんだって。けどそれ、魚いなくなるんじゃないのかな····。
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