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身体に刻まれた記憶
イキ過ぎと泣き過ぎで朦朧としている。頭の中も視界もぼんやりしていて、男達が何か喋ってるけど凄くどうでもいい。
「ゆいとくん、泣きながらイッてんね。すっげ、可愛い。··やべぇ、俺この子ハマりそう」
「おい、マジになんなって。流石にめんどくせぇわ」
「だって可愛くねぇ? このまま持って帰っちゃおっかな」
「マジかよ。誘拐してレイプだけでもやべぇのに、監禁までとかお前つよ〜」
「ここまで来たら一緒だろ。うっし、決めた。俺この子持って帰るわ」
「「マジかよww」」
「持って帰んのは勝手だけどさ、俺らはそこまで関与しねぇかんな?」
「わーってるって。バレなきゃ問題ないっしょ」
勝手な事ばかり言う男達。やはり、僕は誘拐されたらしい。だけど、何処に誰と居たかも思い出せない。助けなんて来るかも分からない。
現状を悲観した僕は、抵抗する力もなく男たちに弄ばれた。
何時間経ったのか、男達が休憩だと言って水をくれた。けれど、それは水と偽ったお酒だった。
「ゲホッ、ゴホッゴホッ····こぇ··お酒 ····」
「あ、バレた? あっはは、ビックリしちゃってかーわい♡ ねぇねぇゆいとくんさ、アレ全部彼氏なの?」
「彼氏 ····? 僕、彼氏 いるの?」
「えぇ〜、彼氏でもないヤツらとヤリまくってたの? ビッチだね〜」
「びっち····僕が? 僕、えっちなんてシたことにゃい····ちゅぅも、さっき初めて····ひっく····ファーストキス らったのにぃ····」
僕がわんわん泣き出すと、男達は不思議そうに顔を見合わせた。
「これさ、もしかして記憶喪失ってやつ? ヤバくね?」
「パニクッてるだけだろ。そんな強く殴ってねぇよ」
「いやいや、結構な音してたって」
「マジ? あー、でもさ、だったら都合いいんじゃね?」
「それはそう。結果オーライじゃんね」
「お前らねぇ、ちょい楽観的すぎんだろ。まぁ、都合はいいけど」
この人達の話から、何となく僕の置かれた状況を理解した。僕は誰かとどこかに居て、酷い事をされてここに連れてこられたみたいだ。
どうも、一緒に居たのは彼氏と思われるほど仲の良い人らしい。そんな友達、僕には居ないんだけどな。
「そういや、ゆいとくんて何歳? 中学生くらいに見えんだけど、流石にだよな」
「えっと、高1····あれ? 僕、今何歳だっけ····うぅ····」
自分の年齢がはっきりと思い出せない。思い出そうとすると、頭にズキンと痛みが走った。特に右の側頭部が、ビリビリと痺れて痛む。
「あーあー、大丈夫? 頭痛い? ムリに思い出さなくていーよ。俺がちゃんと世話してあげっから、俺と一緒に帰ろうね〜」
「キッモ。お前、そんなんだからフラれんだろ。甘やかしすぎなんだよ」
「鬼畜なお前に言われたくねぇよ。お前はもっと女大事にしてやれって。いっつもどっか青くなってんじゃん」
「えー、俺に逆らうんが悪いんじゃん?」
4人の中で1番怖い人が怖い事を言っている。
他の3人に比べ、目が据わってると言うか、焦点の合ってない感じがするんだ。逆らえないと思わせるような、危ない雰囲気がある。
「そんじゃ、鬼畜な俺はもっかい抱いちゃおっかな。今度は加減ナシで♡」
「ぅえー··壊すなよ? お前に貸した女、基本返ってこねぇもんな」
「だよな。俺も何人か持ってかれてキレたことあるわ」
「なぁ、マジでゆいとくんは壊すなよ。俺持ち帰んだからさぁ」
「わーってるよ、うっせぇな。」
遼騎 と呼ばれていたその人が、ベッドに横たわる僕の足をガバッと広げる。そして、4人の中で一番大きなおちんちんを僕のナカにねじ込んだ。
あまりの大きさに苦しくて呻くと、可愛く啼けと言って平手打ちをされる。僕は、前で縛られている手で頬を押さえ、涙をポロポロ零して『ごめんなしゃい』と謝った。
リョーキさんが満足するように、抵抗せず奥を開く。最奥のぐぽっと入る場所で、くぽくぽと抜き挿ししているみたいだ。気持ち悪いのに気持ち良い。僕の身体なのに知らない身体みたいで凄く変な感じ。
これをされると、とりあえず吐き気が込み上げる。けれど、吐くとまた怒られるから、必死に堪えて飲み込む。リョーキさんがイクまで、ずっとこれが続くんだ。頼むから、早くイッてくれないかな。
リョーキさんがナカで大量に射精して、僕がボーッと眠気に抗っていると、今度はタバコ臭かった昴 さんが僕にキスをしてきた。
タバコを吸った直後で、絡められる舌が苦い。けど、何故だろう、この味に覚えがある。
「むぅ····煙草、やめたんじゃなかったの?」
「は?」
「んぇ··?」
僕とスバルさんは、顔を見合わせて頭上に疑問符を浮かべる。僕は、自分で言っておきながら何の話だか分からない。
スバルさんには『寝ぼけてんの?』と笑われたが、そうは思えなかった。なんだか、とてもモヤモヤした気持ちが込み上げたんだ。
スバルさんが、僕の足をガッと開いてぐちょぐちょのお尻に挿入する。ぬちゅっと嫌な音がして、その度ゾワッてするんだよね。
それから、僕に覆いかぶさり頭を抱えると、根元まで一気にねじ込んだ。どちゅっと奥を突かれて潮を噴き上げる。
僕が噴くと、皆同様にいやらしい笑みを浮かべて腰を激しく振り始める。ぱちゅぱちゅと腰を打ちつけ、時々奥をグリッと抉る、そういう動きのパターンがあるみたい。
奥にググゥッと押し込んで止まると圧迫感はあるけれど、まだ息はできている。僕の身体は、もっと酷い苦しさを知っているようで、まだ大丈夫だと直感している。
なかなかイかないスバルさんは、僕の疲れになど構わずイカせ続ける。嫌なのに、イキたくないのに、ひらすらイキ続ける身体が許せない。とても嫌な気分だ。
けれど、身体と心が別々になっていくみたいで怖いのに、ぱちゅぱちゅといやらしい音が脳まで響いてふわふわが止まらない。
「これ好き ····、もっと、奥··いちゅもみたいに、深いの、どちゅってシ てぇ····」
「あ? 誰と間違えてんだよ。い つ も とか知らねぇっつぅーのっ」
そう言いながら、どちゅっと奥を抉るスバルさん。僕だって、自分の言う“いつも”が何の事なのか、さっぱり分からないんだ。だけど、勝手に口から零れていく。
お互いに苛立ちながら、僕は少しずつ思い出してゆく感覚 を取り零さないように拾い集めた。なんだろう、僕はこの快感を知っている。
僕の身体に走る快感を拾う度、もっと違う心地好さを知ってるんだと脳裏に過ぎる。
(こんなのじゃない、もっと、もっと気持ちぃの····)
涙で滲む視界。ぼんやりと、僕を抱くスバルさんに重なって、誰か別の人が思い浮かぶ。同じ煙草の臭いを纏っていた誰か──。
「ゆいとくんさ、だいぶボーッとしてねぇ? 大丈夫かよ」
「知らねーよ。酒飲ませすぎたんだろ」
「ケツ緩んでねぇならいいんじゃね?」
「それな〜。ケツは締まりイイわ。女よか使える」
お酒を飲みながら、酷い事ばかり言う人たち。スバルさんが、もっと締まりが良くなると言って、僕の首に手をかけた。殺されちゃうのかな。
「くっ、ぅ゙····はっ··ぁ゙····」
「んぁー····締めすぎんなって。ちんこ千切れんだろぉ」
勝手な事を言って、僕の頬をぺちっと軽くぶつ。恐怖で震えが止まらない。
死を覚悟した僕は、スバルさんに重なって見えた人に助けを求めた。遠退く意識の中、口が記憶しているその名前を呼んで──。
「や、ちぉ····八千代 ····助 、け··」
知らない名前のはずなのに、するりと零れる呼び慣れた名前。誰なのだろう。分からないけれど、名前を呼ぶだけで込み上げる愛おしさ。
僕がうわ言のように呟くそれを聞いて、とても怒ったスバルさんは首を絞める手に力を込めた。
「うぜぇ〜。誰呼んでんだよ。何? 思い出した感じ?」
「八千代 ····八千代 ぉ····」
「だから誰だよ。無視してんじゃねぇぞ」
スバルさんに、もげそうなほど強く乳首を抓られて悲鳴をあげる。煩いと怒られたから自分の手で口を塞ぎ、お腹の底でビクビクとイッた。
(朔より強く引っ張るなんて酷いや····ん? 朔··って? さっきから知らない名前が浮かぶんだけど、誰なんだろう····)
僕を酷く扱うスバルさんに、タイヨウさんが『可哀想だろ』とイチャモンをつける。スバルさんは、鬱陶しそうに舌打ちをした。
そして、僕の頭上に胡座をかいて座ると、僕の頭を膝に乗せておちんちんを口に突っ込んできたタイヨウさん。これは、可哀想じゃないのかな。
咥えさせながら、タイヨウさんは『可愛いな〜』とか言って僕の頭を撫でる。りっくんみたいで気持ち悪い。
····って、りっくんってあ の ? なんで今、りっくんを思い出すんだろう。
分からないけれど、自分が大切な事を忘れているのではないかと思い始めてきた。もう少しで、点と点が繋がるような、もどかしい感じがする。
僕が忘れている何か、たぶん忘れてちゃいけないもの。それを思い出さなきゃ····。
気持ちの悪い快感の中で、僕は懸命にそれを手繰り寄せる。
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