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泣き言は甘い声で
理性を手放そうとしている八千代。これはダメなやつだ。そう思った次の瞬間、ぽふっと、僕はふっかふかのベッドに押し倒されていた。
「んぁっ····八千代、待っ──」
「るせぇ。事ある毎にンなコト思うんなら、二度と不安になんねぇようにしてやるよ」
それはどういう意味なのだろうか。ここで抱き潰すぞって意味かな。だったら、ダメだよって言わなきゃいけない。
なのに、八千代の瞳に吸い込まれるように、重なる唇を拒めず受け入れてしまう。僕のダメな所だ。
八千代がそっと唇を離した時、逸らすタイミングを逃してしまい見つめ合ったまま。柔らかい布団に沈められていて、さらに八千代の手が邪魔で左右どちらにも逃げられない。
微笑んでくれない真顔の八千代は少し怖い。顔や雰囲気が怖いんじゃなくて、真剣だから断りきれないんじゃないかって思うと怖いんだ。
だって、本能で僕を求めているのが分かるんだもの。
「八千代····」
「喋んな。ンな可愛いと最後までシちまうぞ」
何を言われたのか、一瞬理解できなかった。けれど、とりあえず今は、最後までするつもりはないらしい。まだ理性が生きていたんだ。だったら、さっきの言葉はどういう意味なのだろう。
大事な事は聞けないまま、お構い無しに八千代はキスで僕の全身を愛でる。特に、傷つけられた所を念入りに愛でてくれた。
本当は、汚いだとか触れたくないだとか、そんな風に思われたって仕方がない所なのに。八千代は、自分を責めるような顔で舌打ちをしながらそこを癒してくれる。
「嫌じゃなかったらケツ向けろ」
「そんな言い方、ズルいよ····。八千代は、嫌じゃないの?」
僕は動けず、涙を堪えて両手で顔を覆い隠す。ダメだ、八千代を困らせたくないのに声が震えてしまう。
「は?」
「き、汚いとか··、そういうの、嫌だって思わないの?」
皆は、僕が犯されたら綺麗にすると言って清めてくれる。それは、僕が汚された所を綺麗にするって意味だよね。それって、凄く嫌な事じゃないのかな。
皆に縋るばかりで、いつも気持ちいい事に流されて、聞くのも怖くて甘えたまま、ずっと聞けずじまいでいた事だ。だけど、いつも凄く気になっていた事。
「ンな事ァ思わねぇよ。ただ、お前を守りきれなかった、お前にこんな傷負わせちまった、お前に苦しくて怖い思いさせちまった、そういう悔しさとか不甲斐なさが止まんねぇだけ」
八千代は、僕の身体に浮き上がった紫色の痣を指の背で撫でて言う。
「俺があん時、気ぃ失わなかったらとか、さっさと朔呼んでたらとか、たらればばっかで情けねぇな」
「そんな事····」
指の隙間から見る八千代は、僕を見ているようで見ていなかった。
どうしてこんなにも、いつもいつも僕より苦しそうな顔をしてくれるのだろう。いつだって、僕が自分の傷を隠してしまえるほど、皆の傷ついた顔が胸を締めつける。
あの屈強な八千代が、僕を想って泣きそうになっているように見えるんだ。僕の他に慰められる人なんて居ないじゃないか。
「さっきの、お前が俺庇ったコト責めたんも。お前にそうさせたんは俺の弱さなのにな」
ゆっくりと指を絡めて手を繋ぎ、僕の顔から手をそっと退かす八千代。さっきとは打って変わって、優しく微笑んでいる。けれど、まだ少し悲しそうなのは、やっぱり僕の所為なんだよね。
「責めたし啓吾に先越されたけどな、トドメさした時の結人、すげぇカッコ良かった。流石、俺の自慢の嫁だわ」
そう言って、八千代は頬にキスをくれた。
一気に溢れる涙。止め処なく、ボロボロ零れ落ちる。
「ぅお、冷て··。ったく、結局泣き虫はなおんねぇんだよな」
「ふぇ··」
色々な感情が溢れ出して言葉にならない。そんな僕を、八千代は困った顔で笑った。
そして、とても満足そうに言う。
「な? お前の本質は変わんねぇんだよ」
いくら強くなっても、泣き虫だって事だったのか。なんだか悔しいな。でも、八千代が笑顔を向けてくれるのなら、僕は泣き虫のままでいいや。
「なぁ、いい加減ケツ向けろよ。気持ち良くしてやっから寝ろ」
「八千代のバカァ。ギュッて抱き締めてくれるだけで寝れるのにぃ」
「うっせぇ。バカはお前だろ。なんもシなかったら、どーせ腕ん中でも余計なコトばっか考えんだろうが。黙ってイキ疲れて寝ろ」
なんて言い草だ。僕より僕を理解して、僕より僕を上手く扱ってくれる。こうやって甘やかして、また僕を弱くしていくんだよね。
皆が強すぎるから、僕は一生弱さから逃げきれないままなのだろう。それで良しとする皆に、明日は文句を言ってやる。
そう思いながら、僕はズボンを下ろして八千代にお尻を向けた。
「されて嫌だとか痛ぇとか、絶対隠すなよ」
「ふぁい。分かったから、お尻拡げないでぇ」
「見ねぇでどうやって確認すんだよ」
「確認なら、さっきお医者さん にされたよぉ」
僕は、四つ這いでお尻を突き上げ、両手で顔を覆い隠して言った。思い出したら、耳までぽっぽと熱くなる。
お尻が切れていないかとか、ナカは大丈夫かとか、思い返せば色々と恥ずかしい検査をされた。皆が、目視での確認は自分たちですると言ったのが、ぶっちゃけ何より恥ずかしかったけどね。
だけど、お医者さんに『素人じゃ分からないでしょ』って言われて、皆が凄く渋い顔をしてたのはちょっとだけ面白かった。なんて、口が裂けても言えないけど。
「アホか。俺らが最終チェックすんだわ。ナカは明日な。確認しながら綺麗にシてやっから覚悟しとけ」
八千代はそう言って、アナルをペロンと舐めた。
「ひゃいぃっ····」
漸く感じる八千代の熱に、身体がビクンと反応する。ひと舐めされただけなのに、お腹の奥がキュンとして切ない。
自分の身体に困惑していたら、ギシッとベッドを期しませ、八千代が僕に覆いかぶさった。そして、アナルに指の腹をピトッと当てて、耳元で静かな声を響かせる。
「あんま激しくはシねぇけど、声、出すなよ」
「ひぅっ··、へぁい····」
「ふはっ、可愛 い声で煽ってんじゃねぇよ。こっちぁ挿れんの我慢してんだかんな」
意地悪く、甘い声を使う八千代。僕は、仕返しのつもりで言ってやった。
「じゃ、じゃぁ、先に僕が、口で、ヌ、ヌいてあげる····」
八千代の指が、アナルに少し食い込んだ所でピタッと止まる。
「チッ··煽んなつっただろうが。莉久に言われただろ、喉痛ぇの治るまで口使わねぇって」
耳元で鳴る低い声。苦しいのか怒っているのか分からなくなるような、ちょっとドスの効いた声だ。
「喉、シなかったら大丈夫でしょ。喉は使わないから、先っちょ、しゃぶるだけ····ダメ?」
「おま··それ··、クズの常套句じゃねぇか。····我慢できる保証ねぇぞ」
「ダメだよ。りっくんに怒られちゃうから我慢してね」
「はぁ····。やっぱ、お前のメンタルが最強だわ」
八千代は、溜め息の後にポソッと呟いた。
「え? どういう事?」
「なんでもねぇよ。わーったからこっち向け」
八千代に言われ、僕は起き上がってクルッと振り向く。そしたら、振り向いた途端、八千代に深い深いキスをされた。トロトロで、それだけでもイッちゃう激しいやつ。
いとも簡単にイかされ、蕩けた僕は八千代のおちんちんに手を伸ばす。そして、ズボンからボロンと飛び出したおちんちんに、僕はうっとりと挨拶のキスをした。
僕の邪魔にならないよう、今日はしゃぶってる間お尻を弄らないでいてくれるらしい。おかげで、八千代のおちんちんに集中できる。
唇を舐めて濡らし、鬼頭に口付けた。あぁ、八千代だ。ふわふわしていく中で、当たり前の事を思う。
裏スジを舌でなぞり、カリに沿って舐める。口に入りきらない付け根の辺りは、手で扱きながら唇を這わせて舐めていく。
しっかり濡れたら、じゅぶっじゅぱっと汚い音を立てて吸う。八千代はこれが好きなんだ。
「おい、もういいから離せ」
「ヤだ ····このまま イッて ?」
「··っく、加減難しいっつーのにお前はァ」
八千代は僕の頭を押さえ、とても苦しそうに言った。そして、飲むのはダメだと言って、抜くと同時に僕の顔へたっぷりぶっかけた。
この量を、いつも僕のナカに注がれているんだと思うと、お腹の奥が勝手にきゅんきゅんしてしまう。
「モノ欲しそうな顔してんじゃねぇぞ··。おら、満足しただろ。ケツ向けろ」
少しご立腹な八千代。ツンと言い放ち、僕がお尻を向けると、思う存分揉みしだいた。それだけで、ナカが刺激されて気持ちイイ。
枕で口を隠しているけれど、時々耐えきれずに声が漏れてしまう。流石の八千代も、病院なので手加減はしてくれているが、どうにも僕の身体がオカシイらしく我慢ができない。
入り口の浅い所しか弄ってくれない八千代に、痺れを切らした僕は情けない声で求めてしまう。
「八千代 ··、我慢できない ····お願い··、挿ぇてぇ····」
泣き言。甘えた声で、我儘を言って八千代を困らせる。
こんな僕でごめんね。なんて謝ると、また怒られちゃうんだろうな。
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