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いつもの八千代がいい

「··っ! クソッ!! ······腹に違和感は?」 「んぇ? ······にゃい」 「ふぅぅぅぅぅ······分か(わぁ)った」  凄く大きな息を吐いてから、八千代はそう言った。もしかして、挿れてくれるのかな。そんな、僕の淡い期待は見事に空振りする。  僕は四つ這いのまま、八千代の指を2本くぷっと飲み込んだ。僕のナカを探るように、そして確かめるように、優しい刺激を置くように、八千代は慎重に指を奥へと進める。  何度も『痛くねぇか?』と確認しながら、いつも以上の丁寧さで解してくれた八千代。指で前立腺を揉むようにゆっくりと刺激して、置いてあった紙コップへ射精させた。  八千代の量に比べれば、まるで大人と子供みたい。同じ男として、これは未だに少し恥ずかしい。  どうやら、潮までは噴かさないつもりらしい。紙コップじゃ絶対に溢れちゃうもんね。なんて、まだ考える余裕がある。  僕の小さな喘ぎ声と、八千代がワザとらしく立てるえっちな水音が、静かな病室に響く。廊下も凄く静かだったけど、響いてないかな。そう思った途端、枕を抱き締める腕に力がこもった。  だけど、バカな僕はバカ丸出しで聞いてしまう。だって、挿れてもらえるかもって思っちゃったんだもん。 「八千代(やちぉ)挿れてくれない(いぇてくぇにゃい)の?」  緩い刺激が焦れったくて、もっともっと八千代が欲しくて、僕はどんどん欲張りになって我儘が止められなくなる。やっぱり僕は、バカで最低だ。 「挿れねぇつっただろ。今日は····今日だけは優しくシてやっから、明日まで我慢しろ」  僕は知っている。八千代のおちんちんが、また硬くなっている事を。それでも、僕の為に我慢してくれているんだ。  なのに、僕ときたら····。 「やらぁ····できない(れきにゃい)よぉ····」  両手でお尻を拡げ、僕は八千代に『寂しいのはここだよ』って示す。はしたないし、八千代の気持ちを無視してしまうのは分かっている。  けれど、全身に残るあの人達の感覚を、どうにか早く消してほしい。というのは、口実に過ぎない。けど、それはそれで事実だ。 「八千代のズンズンがいい····。違う感覚がお腹の中でぐちゃぐちゃになってて、すっごく気持ち悪いの。····お願い。早く··、今すぐ、八千代が消して?」  何も言わないまますくっと腰を上げ、おちんちんの先をアナルにあてがう八千代。迷っているのか焦らしているのか、先端を執拗くアナルに滑らせる。 「これ、お前が持っとけ」  そう言って渡された紙コップ。検尿をするみたいに、自分で持っておちんちんの下へ置く。  大人しく待つ僕のアナルを、まだまだ焦らす八千代。もう、僕はとっくに限界だ。 「ンンッ、ふぁぁ··んっ··ふぅ····や、八千代(やちぉ)、ね··、挿ぇて?」  いつもなら、このままどちゅっと入ってくる流れなのだが、今日は初めて時みたいに、ゆっくりゆっくり僕のナカを1ミリずつ確認するかの様に進む。  これはダメなやつだ。八千代の太さや硬さが凄く分かって、奥に到達するだけでイッちゃうやつ。 「やちっ、八千代(やちぉ)それダメ(そぇらめ)! 前立腺(じぇんりちゅしぇん゙)ん"ん"··ゆっくり(ゆっくぃ)潰すの(ちゅぶしゅの)()ちゃうぅ····」  びしゃっと紙コップへ潮を噴く。その後も、八千代が前立腺をコリコリするものだから、たらたらと垂れた潮が紙コップの半分を超えた。 「痛くねぇか?」 「ない(にゃい)··けど(けろ)、お腹、奥、変····」 「気持ちわりぃ?」 「違····僕から、八千代のおちんち、食べに行ってるみたいなの····」  何を言ってるか、分かってもらえるだろうか。自分でもよく分からないのだが、兎に角そういう感じなのだ。  皆に抱かれると、毎回の様になるんだけど、上手く言葉で伝えられなかった感覚。他の人に抱かれても、一度だってならなかった感覚なんだ。 「ハッ····子宮が降りてきてるってか」  子宮··なんて、僕にはないんだけどな。まぁ、それでいいや。 「ん··それ(そぇ)ぇ····」 「ふはっ、テキトーかよ」  八千代が笑うと、おちんちんがクッと跳ねて緩くイッた。とぷっと精液が垂れ落ちる。  零さないようにと、意識を紙コップへ向けた途端、八千代が僕に覆いかぶさって耳を支配した。 「んじゃ、俺の為に降りてきた子宮口にキスして、ここ····」  奥の扉に当てた先っちょで、ググッと押し開けようとしている。 「俺でいっぱいにしてやるよ」 「ひあぁぁっ♡♡」  甘々の朔みたいな言い方をする八千代。くぽっと奥を抜けると、また『痛くねぇ?』と確認する。  僕が『大丈夫だよ(らいじょーぶらよ)』と言うと、凄くゆっくりクポクポし始めた。  強く打たないように、早く振らないように、八千代は歯を食いしばって加減をしてくれているらしい。けど時々、後ろからギリッと歯を鳴らす音が聞こえるのはちょっと怖い。  本当は、いつもみたいに僕を求めてほしい。加減なんてしないでほしい。アイツらが本能のまま僕を弄んだんだ。八千代に我慢なんてさせたくない。  でも、八千代が僕を大切にしてくれるのは愛情で、それがあるから乱暴にされたって気持ちイイ。そんな皆だから、僕は全てを任せて快楽に溺れられるんだ。  矛盾していく思考と身体が、次第に心を苛む。僕だって、八千代や皆の気持ちを無下にしたいわけじゃない。  それなのに··、それなのに!  (だんま)りになった僕のナカを、八千代は焦らすかのようにゆっくり大きくピストンする。まるで、僕に我儘を言わせるように。  ようやく得た心から幸せな快感に、抗えなくして言わせるつもりなのだろうか。それとも、僕を壊す口実が欲しいのだろうか。  どちらにせよ、これ以上八千代の焦らしに耐えられるほど、僕は強靭な精神を持ち合わせていない。だから、頭や心とは別に、身体が求めるまま言葉を零してしまう。 「や、八千代(やちぉ)····、もっと、んんっ♡ あっ♡ そこ(しょこ)ぉ、もっと、(ちゅぉ)くシてぇ」 「····チッ、煽んな」  どっちも違った。八千代は、僕を滅茶苦茶にシたい本能へ抗っているだけだったんだ。 「ごめ、ね··」 「あ?」 「僕、我儘ばっかり()····。()も、もう、優しい()けの、八千代が我慢して()えっちじゃ、満足(まんじょく)できない(れきにゃい)の····」  僕は、ぎゅぅっと下腹に力を入れ、八千代のおちんちんを離さないようにお尻を締めた。八千代の硬さと太さを一層感じる。 「ンッ··おいバカ、締めんな」 「ふ、ぅ··んっ、やらぁっ····八千代(やちぉ)が、奥ズンズン(じゅんじゅん)()くれるまで(くぇぅまれ)離さないから(はにゃしゃにゃいかゃ)ぁ」  デッカイ舌打ちの後、八千代はものすっごく大きな溜め息を吐き、僕から紙コップを取り上げた。そして、備品であろう掛け布団を丸めて、僕のおちんちんの下に捩じ込んだ。お尻が持ち上げられ、その拍子に前立腺を刺激された。 「んぁっ、やっ、出ちゃっ····」  お布団を汚してしまわないように、我慢しなければとは思ったんだ。けれど、そんな事できるわけもなく、僕は潮をお布団に染み込ませてしまった。 「や、八千代(やちぉ)ぉ····」 「気にすんな。布団はどうにかしてやっから好きなだけ出せ」 「い、いいにょ··?」  僕は、少しだけ振り向き八千代に尋ねた。 「ハッ、我慢できるもんならしてみろ」  髪を掻き上げながら言う八千代。僕は、それを見ただけで── 「あ? お前、今なんでイッた?」 「んぇ··、八千代(やちぉ)、かっこいいなぁって····」 「そんだけでイッたんか。あー··もうムリだな。こっからのコト、アイツらに内緒にできっか?」 「はぇ? れ、できるよ(れきうぉ)」 「よし、ンじゃもう加減しねぇからな。声、できるだけ我慢しろよ」 「へぁ──ひぎゅっ♡」  僕の返事を待たず、八千代は奥までどちゅっと突き挿した。かひゅっと息ができなくなり、僕は顔を枕に落とす。  体重をかけて奥をぐりぐり潰し、背中や項を舐めたり噛んだりと、やっといつもの八千代だ。愛おしさが込み上げるだけでイッてしまう。  しこたま奥を抉って、満足したのか僕を半回転させる八千代。正常位になると、声を出させない為なのかキスで口を塞いだ。掛け布団を僕のおちんちんと腹部に乗せ、全てを吸収させる。  このお布団、どう処理するつもりなんだろう。なんて、考えていたはずなんだけど、気がついたら僕は眠っていた。

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