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今日だけ、だから

 背後から聞こえたカチッという音の正体。それを確かめる為に僕は、意地悪く大きなストロークで快感をぶち込んでくる八千代に『待って』と頼む。けれど、待ってくれるはずもなく、八千代は奥の柔らかくなった口をとちゅとちゅ押し上げる。  やはり振り返る余裕はなく、息も絶え絶えに喘いでいたらふわっと苦い臭いがした。これは煙草のにおいだ。僕は力を振り絞って振り向く。  やっぱり。えっちしているとは思えないほど、眉間に皺を寄せてめちゃくちゃ険しい顔で煙草を咥えていた。煙に目を細めるのが渋くてカッコイイのは相変わらず。  て言うか、歯を食いしばってフィルターを噛んでるように見えるんだけど。雰囲気は物凄く怖いのに、カッコ良すぎて心臓が持っていかれそうだ。 「八千代(やちぉ)、なんれ、煙草····。やめたんじゃなかったの?」  なんだかデジャブだ。あぁ、あの人たちの誰かにも同じ事を言ったっけ。 「うるせぇ。今日だけだから黙って犯されろ」 「ひぁっ、んぅ゙っ、あ゙ぁ゙ぁっ!!」  僕の脳裏に一瞬だけ過った他の男を掻き消すように、強く深いひと突きを食らった。そして、怒気を孕んだ八千代の声が脳を痺れさせる。  例の動画を見て、誰よりも八千代が怒っているのだと分かった。あの人たちへの怒りと、自分への怒りだ。僕の腰を掴む、八千代の手に力が入る。 「いぁ゙っ··八千代(やちぉ)、痛いよぉ」  腰の痛みを訴えると、八千代は僕の両手首を掴んで引き寄せた。角度を変えられ結腸口がぐりんと抉られる。それでも、奥は抜きそうで抜かない八千代。重い快感と緩い快感を交互に流し込んでくるんだ。  さらに身体を引き起こすと、八千代は強引に僕の顎を持ち上げて上からキスをした。絡められる舌が苦い。思わず顔を顰めてしまう。  キスをしながら前立腺を浅く擦られ、ビクンと跳ねたら仰け反っている腰が折れそうになる。いっそ、奥に強い一撃が欲しい。なのに、気持ち良すぎて八千代のキスを拒めない。 「ン····八千(やひ)··んんっ····」  だけど、流石に首も腰も限界だ。だって、たぶん5分くらいずっとこの体勢でキスしてるんだもの。僕は、何とか体勢を変えようと、顎を固定しているほうの腕にしがみついた。  必死に降ろそうと藻掻いてみるけど、笑えるくらいビクともしない。すると、抵抗する僕に苛立ったのか、八千代は思いきりお腹の奥を突き上げる。と言うか、おちんちんで僕を持ち上げた。八千代がしゃんと立つから、また脚が着かないんだ。  勿論、声を上げないよう奥まで舌をねじ込んで。おかげで、声を出せないまま深くてエグいイキ方をしたから、目も脳もチカチカするし耳もぼわんぼわんしてよく聞こえない。  八千代は朦朧とする僕に、くぐもった声で『もっと奥、ぐちゃぐちゃに掻き回してやる』と言った。これだけ充分トドメだよ。  そして、僕の限界を見越してラストスパートに入る。もうとっくに限界なんて超えてるんだけどね。  八千代が少し落ち着いてくれたら、ほんのちょびっとでもいいから休ませてもらおう。なんて思っていたら、まさかな展開に。   「チッ··、煙草臭ぇな。結人が副流煙で病気になったらどうするんだ」 「だぁら(わり)ぃつってんだろうが。どう頑張っても我慢できなかったんだからしょうがねぇだろ」 「煙草で気分を落ち着けるっつぅのがそもそも良くねぇと思うぞ」 「っせぇな! おら、(だぁ)って突っ込めや」  そう言って、八千代は僕の脚を抱えて持ち上げた。 「八千代(やひぉ)、待っへ、も゙ッ··無理(むぃ)····」  「ムリじゃねぇよ。加減しねぇつっただろうが」 「そうだぞ結人。それにな、酷くて痛くて怖い記憶消すために、酷くて死ぬほど甘い記憶で塗り替えてやろうって話になったんだ。だから頑張ろうな」  王子スマイルをかまして『頑張ろうな』なんて言われてもなんだけどな。  十中八九、りっくんと啓吾の発想だ。けど、今まさに実行しようとしているのは八千代と朔であって、僕は今から殺されちゃう感じで····。  ぼーっと朔と八千代の声を聴いていたら、八千代が拡げているアナルに、朔が完勃ちしてるっぽいおちんちんをねじ込み始めた。亀頭がギリギリ入っただけで、アナルがみちみちと悲鳴を上げている。 「んぎゅぅ····ぉ゙、お(ぢり)(あぢゅ)ぃぃ······」 「キツいな。結人、ケツの力抜けるか?」  無理に決まっている。無理だと言えないくらい苦しいんだ。絶対に無理だよ。けど、そう思っているのは僕だけで、ふふんと鼻を鳴らしながら寄ってきた啓吾が僕の乳首を思いきり抓った。 「んぎぃぃっっっ!! いだいいだいいだいぃぃっ!! 乳゙首゙取゙れ゙ぢゃうぅぅ!!!」 「っは♡ すっげ噴くじゃん。キツい時はぁ、定番のコレな♡ イキきったら一瞬力抜けんじゃんね? 結人、ちょ~お利口さんだもんな~?」  亀頭が食い千切られそうだと言って呻く朔。ごめんね、自分ではよくわからなくて、啓吾の所為で思いきり締めちゃってるんだと思うんだけど、どうにもならないんだ。  と、僕は声にならない思いを伝えようと口をパクパクしながら、ぼとぼと涙を落としてイキ続けた。  そして、ふわっと脱力する。啓吾の思惑通り、イキきって緩んだらしい。この隙にと、朔が進行を開始する。 「うっは♡ 潮止まんないね。えっろ♡」 「ゆいぴ、また締めちゃわないように甘イキしてようね」  そう言って、りっくんが右の乳首を舌先で転がし始めた。反対側は任せろと言って、啓吾が左の乳首に吸い付く。抓られてジンジンしていた乳首に、甘い刺激が留まる。  真昼間だぞ? 屋外なんだぞ? 破廉恥にもほどがある状態に、僕はしょろしょろと漏らしながらイッてしまう。 「チッ··、お前ら邪魔。朔が挿れきったら退けよ」  朔が奥を目指しやすいよう、腰を止めていた八千代が言う。りっくんと啓吾は、乳首を貪りながら『へぁーい』と軽い返事をした。  そろそろ、朔がおちんちんを全部挿れてしまう。朔の完勃ちしたおちんちんは、根元まで挿れる前に奥をぶち抜いちゃうんだよね。さほど大きさの変わらない八千代と2人で、一緒に奥を貫かれたらどうなるのかな。  やっぱり、僕のお腹が壊れちゃうのかな。そう思ったらすごく怖い。けど、まだ味わった事のない快感に目が眩んだ僕は、八千代の首へ手を回して受け入れ態勢に入った。  お尻の安否なんてどうでも良くなるくらいイキまくったから、アナルが痺れている。でも、ナカはしっかり2人の大きさと硬さを感じていて、まだまだイクのが止まらない。僕の受け入れ態勢(覚悟)がキマったところで、朔がいよいよ根元まで一気にねじ込む。  奥の扉の前で待機していた八千代を巻き込み、2人で奥をこじ開けた。一気に込み上げる吐き気。胃液すら出ないのに、何かを絞り出そうと嘔吐く。  嘔吐くとお腹の底は開くみたいで、2人はさらに一歩先へ入ってくる。もうダメだ。意識がどうこうの次元じゃない。脳ミソが弾けてしまいそうだ。 「ねぇちょっと。それ流石にゆいぴでも無理じゃない?」 「見てて怖いわ。加減しねぇつっても加減しろよ?」 「あ? 何意味わかんねぇコト言ってんだ。結人が『嫌い』って言うまで手加減しねぇつったの啓吾だろ」 「いや、言ったけどさ。限度っつぅもんがあるでしょうよ。お前らのくそデカチンコ化け物級だかんね? 最低限の加減はしてやんなよってハナシだよ」 「死なねぇようには加減してっけどよぅ、朔とじゃクソ(ムジ)ぃから喋りかけんな」  皆が危ない橋を渡りたがるのは若さ故なのだろうか。もう少し大人になったら、落ち着いたえっちができるようになるのかな。  今はまだ、そんなの想像できないや。それに、ずっとこのままでいいやと思ってしまう。   「八千代··、朔··、僕、壊れても、いい。死んじゃっても、いいから、もっと、一つ(ひとちゅ)になりたい」  うわごとのように言った僕の言葉に、2人は素直に従う。グンと腰を突き上げ、限界を超えて奥を抉る2人。脳も心臓も爆ぜてしまいそうなほどの衝撃に、僕は絶叫する。  誰かに聞かれたって構わない。しょうがないじゃないか。少しでも快感を逃がさないと、本当に死んでしまうと思ったんだ。  夢中になって全力で腰を振る朔に引っ張られたのか、最低限の加減はしていると言っていた八千代も負けじと高速でピストンする。今この瞬間は、僕の安否よりイク事に集中しているんだよね。えっちの時、僕は何よりこの瞬間が好きだ。  2人は、僕のナカをタプタプにして満足したらしい。朔がおちんちんを抜くと、ぽっかり空いたアナルから噴き出すように精液が溢れ出た。それを、カメラを手に構えていたりっくんと啓吾がハァハァしながら撮っている。  ハァハァしている2人に急かされて、八千代が見せつけるようにぶぽんっとおちんちんを抜いた。ぐしょぐしょだもんね、何か分からないけど飛び散った液体が2人にかかって騒いでいた。まったく、騒々しくて可愛いんだから。  抜いた瞬間、おちんちんと一緒に内臓がズルンと飛び出したのかと思ったけど、強靭な僕のお腹とお尻は無事だった。りっくんに『逞しいね。ゆいぴカッコイイ♡』と頭を撫でられて、ふわっと気持ちの緩んだ僕はガクンと意識を落としてしまった。

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