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バレてる····よね

 リビングからの喧騒をBGMに、僕は蕎麦とマロを所定の位置に戻す。  何故だかついてきたりっくんが、背後から僕を見張っている。さりげなく逃げようとした事がバレているのだろうか。 「ねぇゆいぴ····」  背後から抱きつき、シャツに手を忍ばせてきたりっくん。なんだ、えっちな事がシたかったのか。 「ひぁ··やぁっ、おへそほじらないでぇ」 「なんで? イッちゃうから?」 「ンあぁっ····」  容赦なく、ぐりっと深く挿れられた。キンとする痛みの様な感覚と共に、下腹の辺りに甘イキしてしまいそうな快感が走る。 「そ、そうだよぉ····」  何度となくイかされても慣れない恥ずかしさ。だって、おへそでイッちゃうなんて変態過ぎるじゃないか。  りっくんは、恥ずかしがる僕を見てさらに興奮する。反対の手で乳首を弄りながら、耳輪をハムハムして、えっちな声が出ちゃう僕の耳元で囁くんだ。 「ほら、マロが見てるよ。可愛いゆいぴの可愛く喘いで可愛く甘イキしてるトコ♡」  何かがぞわわっと腰の辺りから込み上げてくるような、快感に似た感覚が走り抜けた。これが背徳感ってやつなのかな。 「やっ、りっくんのばかぁ····こんなの見せちゃダメだよぉ」  顔を覆って隠すけれど、僕の手首を掴んだりっくんに退かされてしまう。手首を掴まれただけでえっちな気分になっちゃう僕も悪いんだけど、分かっててやるりっくんはもっと意地が悪い。 「だったら早く戻ろうね。はぁ〜··やっぱり真尋と2人きりにしたのは失敗だったなぁ」  僕の服を捲ったりっくんは、脇腹に薄く残っている痣を指で軽く押して言った。やっぱり、逃げようとしてたのはバレてたんだね。  そして、こういう痛みを余裕で快感に変換できてしまう、ドM極まりない僕。りっくんは、僕が悦ぶ心地良い痛みをくれる。 「ぃあっ····」  だけど、このままいくと、ここでお説教が始まってしまうのではないか。そう思った僕は、なんとか話を逸らそうと話題をひねり出す。 「え、映画さ、主役がハムスターじゃなくネズミだって知ってたの?」 「んふ····知ってたよ。ゆいぴがあんまり楽しみにしてたから、皆言い出せなかったんだ」  なんて和やかに言いながら、りっくんは乳首を緩く摘まむ。 「んぁ····優しいのか意地悪なのかわかんないよ····」 「可愛いゆいぴが見たかっただけだから意地悪じゃないよ」  くすぐったいような甘い雰囲気で、僕はまんまと油断してしまったんだ。このままお説教を回避してえっちをするのだと思ったその時、りっくんがまた痣に指を這わして耳元で囁く。 「意地悪っていうのは、こういうのじゃない?」  さっきよりも強く、指先でぐりぐり押し込むように痣を押すりっくん。今度こそ痛みを与えたいのだろう。それでも僕の脳は、都合よく快感を拾ってしまう。  だけど、ひとつ分かっている事がある。与えられる痛みを快感へ変換できるのは、好きな人に触れられた時だけって事。 「ンあっ♡」  痛みが強ければ、快感も大きくなる。 「あは♡ これでも感じちゃうんだ。意地悪になんないや」  そう言って、耳輪に歯を立てる。もう、痛いのか気持ち良いのか分からなくなってきた。  堪らず僕は、振り返ってりっくんにしがみつく。 「本気でイキたくなった?」 「にゃ、なった····りっくんのおちんちんでイキたいよぉ」 「ン゙ッ··ふぅ····ダーメ。俺のちんちんが欲しかったらしゃぶ····じゃないや。真尋との事、ちゃんと話してからね」  懸命に理性を奮い立たせながら、りっくんは僕の頬に手を添えて笑顔で言った。自分だって、僕のこと欲しいって顔してるくせに。これこそ意地悪じゃないか。  僕はふわふわしたまま、りっくんに手を引かれリビングへ戻る。 (まだ喚いてる。もう····煩いなぁ)  ふわふわした気持ち良さの所為で、急激に眠気が迫ってきた。立っているのもやっとだ。だけどやっぱり、僕がこの話に参加しないわけにはいかないんだよね。  僕は、ほとんど開かなくなっている瞼をこすり、懸命に喧騒の中へ飛び込む。 「皆、この度は痣にちゅぅされてごめんなさいでした」  ペコッと頭を下げてお詫びする。 「ちょっと結人さん? 半分寝てんじゃん」  啓吾が笑ってる。喧嘩は終わったのかな。 「いっぱい甘イキしてフワフワしてたもんね」 「莉久(おまえ)の所為かよ。こんなんじゃ話し合いになんねぇじゃん」 「話し合いも何も····真尋が悪さしただけなんだから、俺らからリンチ食らうだけでしょ?」  なんだか怖いワードが飛び出た。これは止めないとダメなやつなのか、それとも冗談なのか判断がつかない。思考が柵を飛び越える羊に占領されている。 「チッ····結人、起きろ」  不意に唇を奪われた。食べられるようなキス。激しく舌を絡められ、脳内の羊が散り散りに消えていく。 「八千代(ひゃひぉ)····ふ··ぁ····ン····」  お尻がきゅんきゅんして眠気は去った。けど、余計にふわふわしてしまう。 「それ逆効果じゃね?」  啓吾が僕の背後に立った。そして、千切れちゃうんじゃないかってくらい強く乳首を抓られた。勿論、八千代は唇を離してくれない。 「ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙っ!!」  大粒の涙が零れ、乳首でイッて潮を噴いてしまった。ズボンも履いたまま、まるでお漏らしだ。  挙句、腰が抜けて自力では立っていられない。八千代が腰を支えてくれたおかげで、なんとか崩れ落ちるのは回避できた。  しっかり目が覚めた僕は、真尋と並んでソファに座らされている。皆は狭そうに、向かい合ってソファに座った。  僕がリンチなんてダメだって言ったら、朔はそれなら話を聞いてやると言って、この状態に至ったのだ。  皆からの圧が凄くて顔を上げられない。 「真尋、早く謝ってよ。昨日言ってたでしょ」 「····やっぱヤダ。俺だって結にぃが酷い目にあった時、傍にいて助けたかったし癒したかった」  真尋は、悔しさを剥き出しに歯を食いしばった。   「お前の言い分も気持ちも分かるけどな、上書き(それ)は俺らしかしちゃいけない事だって分かるよな」 「····わかんない」  不貞腐れた顔で言う真尋に、朔の舌打ちが炸裂する。  昨日、真尋の成長に感動したんだけどな。気のせいだったのか、そうでなければ幻を見ていたのかもしれない。もしくは別人格だ。  そう思ってしまうくらい、今隣に居る真尋の勝手さや拗らせっぷりは、中学生の頃とたいして変わらない。 「真尋さ、なんも成長してなくね? それで結人狙ってるとか笑えんだけど」  啓吾が真尋を煽る。真尋は、啓吾をギロッと睨んで、ソファにふんぞり返って座った。 「結にぃの痛々しい可哀想な痣に上書きしようとしてすみませんでしたぁ」  謝罪する気持ちなんて1ミリも感じられない。思春期反抗期真っ只中丸出しだ。皆も呆れている。 「真尋! ちゃんと謝りなさい」 「謝ったじゃん。つぅかさぁ、アンタらがちゃんと守ってれば──」 「真尋、ストップ」  何を言わんとしているか、そんなものは僕でも分かる。それだけは言わせまいと、僕は怒りを露わにして制止した。 「な、なに?」  僕がこんなトーンで話すのなんて、真尋は聞いたことがないだろう。ギョッとした顔で僕を見ている。 「それは昨日も言ったでしょ。皆、それぞれ全力で僕を守ろうとしてたし助けてくれたんだって。皆だから助けられたんだって····忘れたの?」 「お、覚えてる。ごめん、調子に乗りました」  その後、真尋はきちんと謝罪し直した。  真尋の気持ちを汲んで表向きは許してくれたけど、また痣への上書きやヤキモチえっち大会が開催されるのかと思うと怖いや。皆、まだまだ神経が過敏になっているから、また酷く抱かれちゃうのかな。····ワクワクなんてしてないもん。  また意地悪されちゃうから、お尻がキュンとした事は黙っていよう。  真尋は罰として、1階で1人ぽつんとシャワーを浴びている。  僕たちと一緒に、2階のお風呂に入るとゴネていたけれど、今回は僕が『ダメ!』と言ってやった。さっきの態度には、僕だって腹が立っていたんだ。少しは反省させないといけないからね。 「お前、他にも真尋となんかあっただろ」  のんびり寛いでいると、八千代に突然聞かれた。油断していた僕は、上手く誤魔化さなきゃと思うのに目が泳いでしまう。 「ぅえっ!? な、ないよ〜」 「お前なぁ····」  八千代が呆れている。すると、啓吾が核心を突いてきた。 「どうせ、俺らに言えない約束とかしたんじゃねぇの? 真尋の決意表明的なとかさ」 「なっ、なんで分かるの!?」 「「「「やっぱり····」」」」  僕は、真尋との約束を守らなくちゃいけない。これは、真尋の覚悟を守るためなんだと言って、それ以上を聞かないよう頼んだ。  複雑そうな表情で了承してくれたけど、皆は小さな溜め息を吐いていた。なんだか、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。  そうして、今日は真尋にヤリ部屋の存在がバレないようそれぞれの部屋で就寝····のはずだったんだけど、夜中にこっそり啓吾が来た。  そして、夢現な僕を抱えてヤリ部屋に連れ込んだ。  見れば、皆揃っていてやる気満々らしい。眠いんだけどと言ったら、八千代が上書きだけだと言って僕の服をひん剥いた。  ホントに、揃いも揃って嫉妬しだすとおバカになっちゃうんだから。絶対に上書きだけで終わるはずがないじゃないか。まったく、隣の客室で真尋が寝てるっていうのに。  そういえば、この部屋って完全防音だから音は漏れないんだっけ。それなら安心····ってことでいいのかな。  眠くて眠くて、多少の事はどうでもよくなった僕は、されるがまま皆の欲望を受け入れることにした。

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