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僕のトラウマ

 身構える僕を見て、ふっと笑う香上くん。 「あぁ、わりぃわりぃ。髪、グラスにつきそうだったからさ」 「あ、ありがと。んへへ、香上くん優しいね」  優しく微笑んだ香上くんは、やっぱり僕たちの味方なんだと思わせてくれる。身構えてしまったのが申し訳ないや。  それじゃぁ、啓吾が言っていた“敵じゃないけど仲間でもない”ってどういう意味なんだろう。 「なぁ、ちょっとシモい話していい?」 「シモい? 別にいいけど」  シモい話ってなんだろう。 「あのさ、アイツらのちんこってどこまで入んの?」  なんだ、シモいってえっちなことって意味か。でもどうしよう、これって答えていいのかな。  分からないから黙っていたら、香上くんがすっと手を伸ばしてきた。下腹部に触れて『ここらへん?』と聞いてくる。  それがあまりに浅かったものだから、少しムッとして訂正する。 「むぅ····そんなに浅くないよ。んっと、ね····ンッ、りっくんと啓吾はこの辺で」  香上くんの手を持ち滑らせる。皆が先端で潰す所を外から触れさせて説明してるんだけど、香上くんの手が大きくて少しドキドキしてしまう。  だって、香上くんもイケメンの部類に入るんだもん。高校生の頃、皆ほどじゃないけどモテてたしね。だから、あんまり至近距離に来られたり、不用意に触れられるとドキッと反応しちゃうんだ。  だけど今は、そんなの気にしてられない。皆の正しい位置を知ってほしいんだもん。皆のおちんちんは香上くんの想像を超えてるって自慢したかったんだ。我ながら本当にバカだなって思うけどね。 「ふ··ン、八千代がこのくらい。で··ぁ····朔はここまで、だよ」  入っている時を思い出して少し快感が走った。外から触れているだけなのに、快感がナカで鮮明に蘇る。 「ふーん、へぇ、てかエッロ」  香上くんは、そう言って僕の下腹部に手を当てて軽く握った。思い出していた快感がナカで一瞬暴れる。  思わず声が出そうになり慌てて手で口を押さえた。 「そのままな」  香上くんがおへその数センチ下を優しく押す。 「俺のはたぶん、ここら辺までかな」  自分のおちんちんが入った時の話だよね? 啓吾やりっくんと変わらない位置だけど本当かな。 「ふぇ····」  そこを何度もゆっくり、ぐぃ、ぐぃっと押す。ダメだ、ちびっちゃいそう····。  そう思った瞬間、香上くんの手を誰かが掴んでひねり上げた。 「ドコ触ってんだよ。つぅか誰の許可得てゆいぴに触ってんの? お前に許可なんか降りるわけないんだけど。なに? またボコられたいわけ? 今度はマジで殺すからな」  りっくんだ。目が据わってるりっくんは怖いけどカッコイイ。騒ぎにならないようになのか、ほんのり笑ってるのが余計に恐怖を煽る。  香上くんの後ろには啓吾がいて、ヘッドロックをかけている。だから、カッコ良く凄んだりっくんの台詞は聞こえてなそうなんだよね。  香上くんが啓吾の腕にタップする。一見ふざけ合っているように見えるけれど、おそらく本気で絞めているのだろう。とても苦しそうだ。 「あははっ、啓吾(つぉ)ーい」 「え、ゆいぴ酔ってんの? なんで?」 「あ、やっぱ武居って酒弱い? さっき渡したの酒なんだけど──うぐっ····マジでギブギブ!」 「お前、結人酔わせてナニするつもりだったんだよ」  啓吾も目が据わっている。ここで喧嘩なんてしたら、折角の同窓会が台無しになっちゃう。僕が止めなくちゃだよね。 「啓吾、暴れちゃだめだよ。ね?」  僕はフラフラしながら啓吾のもとへ駆け寄る。そして、できる限り耳に寄ってコソッと言う。 「暴れるのは僕のナカでだけにしようね」  啓吾が香上くんを離した。どうやら上手く宥められたようだ。  と思ったのだけれど、啓吾は何も言わないまま僕の手を引いて歩き始めた。 「ちょっと啓吾、どこ行くんだよ」 「結人がトイレだって。連れてってくるわ。すぐ戻るから食うもんいっぱい取っといてあげて」  振り返ってそう言った啓吾の顔は、りっくんさえ騙してしまうほど完璧に作られた笑顔だった。  僕が香上くんを庇ったと思って怒ってるのかな。そうじゃないと説明したいんだけど、何度呼び掛けても啓吾は返事をしてくれない。  トイレに着くと、まっすぐ個室に入って鍵を掛けた。 「啓吾、僕おしっこない····」 「あってもなくてもいいけど、ケツ向けて」 「ふぇ?」  キョトンとする僕の腰を抱き寄せ、後ろ髪を掴んで首筋に吸いつく。 「結人んナカで暴れっからケツ向けろつってんの」  えっちな声で出される命令に、僕の身体は素直に従う。  便座に手をつきお尻を向けた。そして、緩んだままの穴を自分でくにっと拡げて誘う。 「お昼まで啓吾が入ってたからね、まだ(やぁ)らかいよ」 「だな。一気に突いていい? それか、ゆっくり焦らしてほしい?」  耳をしゃぶりながら聞く啓吾。アナルを指先で撫で、僕の指ごと挿れようとする。啓吾の指と僕の指、くぷっと4本入ってしまった。  どっちでもいいから早く啓吾が欲しい。そう言うと、啓吾は一気に奥を目指した。 「ンあ゙あ゙ぁ゙ぁっ♡♡」  噴き出した精液が飛び散る。啓吾が激しく突くから、まっすぐ飛ばないんだ。 「ッハ····声ヤべぇ。めちゃくちゃエロ可愛いんだけどさ、俺のちんこにもキツいし我慢な」  なんて無理難題を言う。そして、容赦なく奥を潰された。便座に肘をつき、結腸を抉られて吐く。 「け、ご····ゔえ゙ぇ゙ぇぇ····ぁ、ンぉ゙、奥゙ッ、(ぢゅぉ)っ、んえ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇぇ····」  突き上げたお尻に、加減もせず腰を打ち付ける啓吾。これは、啓吾が気持ち良くなる為だけのセックスだ。そう、僕は今、完全にオナホなんだ。  そう思うと、ゾクゾクして深くイッた。 「吐いてっとすげぇ締まんだけどさ、今のちげぇよな。オナホなの自覚して興奮した? 奥やばいくらいうねってんだけど」  どうして分かってしまうのだろう。僕は何も喋れないでいるのに。  啓吾は僕のナカに怒りを吐き出すと、ポケットから取り出したプラグを挿した。結構太めの苦しいやつだ。 「これ、挿れとくの?」 「俺のザーメン溢れるトコ、香上に見せたいの?」 「だ、誰にも見られたくないよぉ!」 「なら栓しとかねぇとだろ。それに····」  啓吾は下腹部をギュッと握って続ける。 「これ入ってたらさ、香上に触られて感じちゃう悪い子な結人でもずっと俺で頭いっぱいになんだろ?」  やっぱり怒ってたんだ。僕がお酒を飲まされてえっちぃ感じになっちゃったから····。 「ご、ごめんなさい····も、えっちくならないから、怒っちゃやだぁ」  僕が泣き出すと、啓吾は優しく抱き締めてくれる。 「ん、もう怒ってねぇよ。俺が勝手に妬いただけだからさ、結人はこのままえっちくていいよ。その代わり、俺らもう結人から1ミリも離れねぇから覚悟しとけよ」 「覚悟······あぃ。啓吾とりっくんと離れないの、僕嬉しいから大丈夫!」 「も〜わかってねぇな〜♡ ま、いいや。莉久に怪しまれねぇうちに戻ろっか」  そう言って、啓吾は僕の服を整えると手早く片付けてくれた。あまりに早いものだから、僕の酔いは醒めないまま。  まだフラついている僕を、まるで赤ちゃんみたいにお世話してくれる啓吾。さっきまでの雄々さはどこへやら、今はもうお母さんみたいだ。  席に戻ると、りっくんと香上くんが向かい合って険悪なムードのまま無言で飲み続けていた。だけど、りっくんは僕を見るなり優しい表情に戻る。  そして、僕を呼びつけると座ったまま抱き締めた。啓吾とのことがバレないかヒヤヒヤする。 「······ゆいぴ、気分悪くない?」 「大丈夫。ね、りっくん····あのね、み、見られてるよ」  周囲から視線が刺さる。特に香上くんからの視線が痛い。 「堂々とイチャついてっと、そのうち嫉妬した女に刺されんぞ」  嫌味っぽく言う香上くんに、飲み物を持って戻った啓吾がツンと返す。 「刺されねぇよ。俺らが刺されたら結人が悲しむじゃん」  イチャつく僕たちを横目に、香上くんの隣に座る啓吾。警戒しているのだろうか。 「バーカ。武居が刺されるってケースもあんだろ」 「「あ゙?」」  啓吾とりっくんが声を揃えて唸る。 「ンなことさせるわけねぇだろ。結人は俺らが守んだよ」 「カッコイイこと言ってっけどさ、現にさっき俺に酒飲まされてんじゃん。それって油断してんじゃねぇの?」  痛いところを突く香上くんに、啓吾は苛立った様子で答える。 「確かにな。お前のことナメてたし同窓会(ここ)ならある程度大丈夫だろって思ってたわ。けど、俺らだって対策してねぇわけじゃねぇんだよ」 「考えたらここが1番危険だもんね。俺らの元カノいっぱいだし。だから来たくなかったんだけど。ま、ゆいぴに嫉妬する子がいても不思議じゃないってことだよね」  やっぱり。だけど、りっくんは慌てる様子もなく続ける。 「だからさ····」 「ボクの出番がきたってことなんだよね」  背後から聞こえた覚えのある声。知った声なのに、身体がビクッと強ばる。  この声の主に心当たりがある。けれど、振り向いて確かめるのが怖い。すると声が耳元に近づいてきて、後ろから伸びてきた細い指で顎を持ち上げられた。 「童貞(ハジメテ)、まだ捨てる気になってない?」 「ぴぁぁっ」  思わず叫んでりっくんに抱きつく。 「あはは。相変わらず可愛いね」 「ちょっと、あんまゆいぴのコト揶揄わないでよ」 「ごめんごめん。武居くんを見るとつい、ね」 「お前までコイツらの味方なんかよ。えっぐ····どんだけ周り固めてんだよ」 「おや、信頼が厚いみたいで光栄だね。ボクは君みたいな輩やじゃじゃ馬な女の子から武居くんを守るために、今日ここに居るんだよ」  刺々しい言葉がツラっと並んだ。一触即発な雰囲気にりっくんと啓吾が溜め息を零す。  彼女の王子様は健在だ。恐る恐る振り返り、その妖艶な笑みを見て背筋が凍りそうになった。  そう、声の主は僕のトラウマ、王子こと嵩原さんだ。

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