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それぞれの思うところ
約束を守れるか不安そうな香上くん。皆は、守るわけがないと決めつけている。
どうにかしないと、本当に壊されるまでこの見せつけ大会は終わらないだろう。というか引っ込みがつかなくなってる感じっぽい。
少しずつ酔いも醒めてきて、りっくんと啓吾はめんどくさそうにしている。ボルテージがはちゃめちゃに上がった勢いで来ちゃったんだろうな。
八千代は僕を抱いて少し気持ちが落ち着いたみたい。香上くんへの怒りは少し引いて、単純に僕を抱きつぶしたいだけな気がする。まぁ、怒ってないわけではないんだろうけど。朔もそんな感じなのかな。
とにかく、これ以上香上くんを拘束しておくのは可哀想すぎる。りっくんをもう一押しして、なんとかロープをほどいてあげられないかな。
「それはダメだよ、ゆいぴ」
「へ?」
「ゆいぴ、考えてることが全部顔に出てて可愛い♡」
ベッドに転がったままの僕を見下ろして、りっくんが目にハートを浮かべていた。そして、僕の手をキュッと握って悶えてる。
「ダメなの?」
「ダーメ。もし拘束といて香上がゆいぴに襲い掛かったら····マジで場野に殺されるよ」
八千代じゃなくても····って、りっくんの冷ややかに落ちた視線が物語っていた。
これじゃ下手なことは言えない。どうすればいいんだろう。
「結人がマジでやめたいならやめっけど、条件厳しいよ」
ぼふんと隣に腰かけた啓吾が言った。
困り果てた僕の頭を、ふわっと撫でる優しい手。だけど、酔いが醒めて飽きたわけじゃないんだってわかる。それくらい、りっくんと啓吾の香上くんに対する怒りが見えた。
「結人は狙われ続けてもいいのか?」
不意に、朔に聞かれ戸惑ってしまった。僕の頭には真尋がよぎる。
「困るよ。でも····」
香上くんを否定したら、真尋まで拒絶してしまうような気がした。朔がそれを含めて聞いたのかは分からないけれど、すぐに嫌だとは言えなかったんだ。
困惑する僕に、香上くんが追い討ちをかけるように聞く。
「武居は、俺のこと嫌い?」
「嫌いじゃない····けど、好きにはなれない」
あの日の恐怖は忘れられないから。
「だよな。わかってんだけどさ、俺はあれからずっとお前の····その····いろいろ忘れらんなくてさ」
皆の雰囲気がぴりっと張り詰めた。僕は慌てて、最後まで聞いてあげようと制止する。
「お前らの中に割って入るとか、現実的に無理なのもわかってんだよ。けどさ、他にいこうとしても武居がチラついてどうしようもねぇの。って、武居には迷惑な話だよな」
「そうだな」
僕よりも先に朔が答えてしまった。
「お前の気持ちはわからなくもねぇ。俺も、はじめは結人が人のモンだったからな。そこに割って入んのはダメな気がして、それでも諦めらんねぇから割って入った」
あれ、脅されてたんじゃなかったんだ。そんなことをする人じゃないって今だから分かるけど、あの時は状況が状況だったから、流石に少しくらい脅しが入ってると思ってた。
「けどな、それを許してくれたのは結人自身とコイツらの総意だ」
そう言って、朔は皆を見回す。
「流れが悪かっただけで、そうじゃなかったらお前も俺ら側だった可能性は否定できねぇ。でも、現状入る余地がねぇのはお前自身が一番わかってんだろ?」
視線を香上くんに戻し、核心に迫る朔。香上くんは、視線を朔から逃がし俯いてしまった。
「ここまでやっといて言うのもなんだけどな、潔く諦めたらどうだ?」
言葉が出ないのか、黙りこくってしまう香上くん。
痺れを切らせた八千代が不機嫌に言い放つ。
「結人相手に諦めろっつぅのが無理なんは分かってんだよ。それでも諦めろつってんの。意味わかんだろ」
いや、わかるわけないでしょ。
呆れ顔の啓吾と、共感の嵐な顔をしてる朔とりっくん。雰囲気が柔らかくなったのは嬉しいけど、変な方向に向いていないか不安だ。
「自力で諦めらんねぇのわかってっから俺らが強制執行してんの。真尋んときもそうだったっしょ?」
わかんないって顔をしてたのだろう。啓吾が説明してくれた。捨てきれない恋への単なる強制じゃなかったんだ。
諦めさせるってことの本当の意味が、今やっとわかった気がする。本当に手伝ってあげてるつもりだったんだね。
「そっか、そうだったんだ。それなら····」
香上くんをじっと見つめ、霧が晴れていくような頭で考えを整理する。
こんなカオスな状況なのに、妙に心が落ち着いていく。僕の酔いも随分醒めたみたいだ。
「コイツになんか言ってやれんのか? ンな勘違い野郎にゃはっきり言ってやんねぇとわかんねぇぞ」
八千代の不機嫌が薄れていく。イラつかせていたのは、やっぱり香上くんだけじゃなかったんだ。
言葉は相変わらず乱暴だけど、八千代の優しさがわかっちゃったから許してあげなきゃだね。
「香上くん、皆が酷いことしてごめんなさい。それと、香上くんの気持ちは嬉しいけど、絶対に好きにはなれないから諦めてください」
僕たちの歪んだ関係と、僕の曖昧さが香上くんに無駄な期待を持たせてたんだろう。
それに、香上くんと真尋とじゃ全然違うのもわかった。どちらかというと、香上くんの想いは昂平くんに近い感じだ。ただ僕を手に入れたくて、それはきっと、心より身体ってことなんだと思う。
だけど、香上くんなら言葉でわかってくれるはず。それなら、ちゃんとお断りしなきゃと思ったんだ。
真面目な話が続いて、香上くんの香上くんも収まってきている。
これで全部丸く収まってくれたらいいんだけどな····。
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