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ようやく日常へ

 お風呂から出ると、香上くんがベッドで寛いでいた。ぐぐぅっと身体を伸ばしているところだ。  改めて謝ろうとベッドの脇に立ったら、ギシッとベッドを軋ませて香上くんが起き上がった。 「武居、お前マジで可愛いのな。高校ン頃と変わんなさ過ぎてビビったわ」  これは、褒められてる……でいいのかな。 「久々に会って思ったけど、俺さ、結構マジで武居のこと好きだったよ」 「うん。ありがとう、香上くん」  これが告白じゃないことは皆もわかっている。だから、さりげなく僕の手をとった香上くんを責めない。だって、これは香上くんの心の整理だから。それを邪魔しないように耐えてくれてるんだ。 「好きだったんだ。マジで……好きだったよ」  僕の目を見て、瞳を潤ませている香上くん。その言葉が嘘偽りじゃないことは、ちゃんと伝わってるよ。 「僕のこと、大切に想ってくれてありがと」  酷いことをされたのも、今回酷いことをしたのも、水に流そうなんて都合のいいことは言えない。お互いにとって忘れられることじゃないから。  だけど、また何年かして会うことがあったら、その時はちゃんと“友達”としてお話したいな。  僕は、そう伝えて香上くんの手を離した。これで、本当に終わりだ。  皆の中でも何か吹っ切れたのだろう。やり切ったというのが正しいのだろうか。  ホテルの前で解散するとき、啓吾と香上くんなんて本当にただの友達と別れるみたいだった。何事もなかったかのように『じゃぁな!』と言って手を振っていた。  こころなしか香上くんもすっきりした顔をしていて、僕は何よりもそれにホッとしていた。 「毎回思うんだけど、皆のやり方ってホントに強引だよね。力尽くすぎるよ」 「しゃーねぇだろ。お前に惚れてまともに諦めれっかよ」  そう言って、僕の腰を抱き寄せる八千代。凄く照れくさいことを言われた気がするんだけど。  すると、背後からりっくんが抱きついてきた。 「そうだよ~、ゆいぴ。そこは俺たちがいっっっちばんよくわかってるんだから」 「もぉ……りっくん、歩きにくいよぅ」 「えぇ〜? まだ足もつれちゃう? 抱っこしてあげよっか?」  白々しいりっくん。そうじゃないんだけど、なんだか今は甘えてやりたい気分だ。 「ん」  僕は、立ち止まって振り返り、手を広げた。 「え、マジで?」  信じられないって顔をしながら、りっくんは機を逃すまいと僕に手を伸ばす。そして、そそくさと僕を抱き上げた。  まだ薄暗さが残る早朝の街中、僕たち以外誰もいないのをいいことに、車までの数十メートルを僕はりっくんに抱っこされてあげた。他の皆が不服そうだったのは言うまでもないよね。  家に着くなりヤリ部屋へ放り込まれる。だけど、今日はえっちするためじゃなく皆で一緒に眠るため。それは、僕を1人にしないためなんだろう。  起きたらまた犯されちゃうんだろうけど、今はただ身体を休めるために眠るんだ。濃厚な一晩だったものね。  僕は八千代に顔をすり寄せて、啓吾を小脇に抱えながら眠った。足にはりっくんが絡みついている。後頭部に当たっているのは朔のおでこかな。啓吾が邪魔なのか、頭だけ僕に寄せているみたいだ。  皆でくっついて寝るの、大好きなんだよね。僕が真ん中にいて、ずっと皆を感じていられるんだもん。まぁ、起きてるときも大して変わらないかもしれないけど。  それでも、こんなに温かい気持ちで眠れるのは幸せなことなんだ。ずっとこうしてたいな。  なんて幸せに浸ったのも数秒。僕は本当に秒で寝落ちていたらしい。  次の瞬間、目が覚めた時には10時間経っていた。もうおやつの時間だ。  パンケーキのいい匂い。 ——ぐぅぅぅきゅるるぐぅぅぅぅ…… 「ぶはっ……すっげぇ腹鳴いてんじゃん」  吹き出したのは啓吾だ。まだ僕の腕の中にいる。  いや、すっぽんぽんになってるから、一回抜け出してシャワーを浴びたのだろう。髪からシトラスの香りがする。それからまた戻ってきたんだ。可愛いなぁ。 「僕も、シャワー浴びたい……」 「あ、じゃぁお風呂で食べる?」  部屋の入り口には、ちょうどパンケーキを持ってきてくれたりっくんが立っていた。  クリームもりもりの山積みパンケーキとミルクティーがジョッキでトレーに乗っている。僕は生唾を飲み込んで、今すぐ食べたいと声を漏らした。 「だぁら風呂で食やいいだろ」  そう言って、八千代が僕を抱えた。おやつを食べながらなら、2階のお風呂だね。  皆で入って、食べ終わったらそのまま犯された。そのあとはまたヤリ部屋に戻って仕切り直し。  香上くんに見せつけるためのえっちで、皆が満足するはずないんだよね。  僕を徹底的に甘やかして、徹底的にイジメて、徹底的に愛してくれる。そういういつものじゃないと満足できないのは、僕だって同じだ。 「んふ……」 「なんだ? 乳首、くすぐったかったか?」 「んーん。なんかね、幸せだなぁって」  朔に、ぎゅーの合図を送った。奥をぐりっと抉られ、甘い声を溢れさせながら抱き締めてもらう。 「結人が幸せなら俺も幸せだ」  と、朔は耳元で声を響かせる。お腹の奥がきゅぅぅっとして、心臓もきゅぅぅっとして、僕は幸せをおちんちんからも漏らしながら朔に抱きついた。  香上くんのことをなかったことにはしない。けれど、ようやく日常に戻れた気がして緩んでしまう。だって、こんなに甘くてトロけちゃう毎日なんだもん。気を引き締めなきゃって思うんだけど難しいや。  でもね、僕にはいつか叶えなきゃいけない夢があるんだ。それを実現させるために、そろそろ動き始めなくちゃ。  そう自分に言い聞かせながら、僕は朔の腕の中でまた気を失った。

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