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第58話 好き
玄関でキスをして、それから、僕らはそのままバスルームに二人で入った。
二人でシャワーを浴びて、キスをして、それから、成徳さんの熱を今度は僕がしてあげたくて。
「ンっ」
下手、だろうけれど。それでもいいから、この人が僕に夢中になってくれないかなって、夢中にさせられないかなって、キスをして、口の中で、たくさん、彼のを――。
「小さい口」
「……ン、ごめっ」
「ホント……どうすんの?」
「?」
「あんないい縁談」
「……」
「話もらった時点で断るって即決だったじゃん」
「……」
「佳祐しか、いらないわ」
もっと。
「佳祐以上に可愛い奴、見つけられる気がしない」
もっと、たくさん。
「ね、ホント、どうすんの? 佳祐、俺みたいなのに」
「成徳さんが、好きです」
貴方が好き。
それを上手に、この心ごと伝えられる方法もまだわからないくらいに辿々しい。
そっと貴方の熱にキスをして、頬を擦り寄せながら、そっと、そーっと、その根本にもキスをする。まだ、僕は不慣れだから、キスくらいしかわからない。貴方と交わした性行為しか知らない僕はキスとあと貴方に抱きつくくらいしかまだ、この恋を行為で表す方法を知らないから。
だから、そっとその愛しい熱にキスをした。
「大好き……です」
「っ」
「ン、あっ……たくさん、好き」
だから、キスをしながら、たくさん言葉にして伝えるくらいしかできなくて。
「成徳さ、ンっ……好き」
「っ」
「好き」
恋って。
「好きです」
ちっとも、言うことを聞いてくれない。
貴方が欲しくてたまらなくて、貴方にたくさん可愛がられたくて、貴方に気持ち良くなってもらいたくて、硬いそれに両手を添えてそっとキスをした。先端に口付けて、小さく吸い付いて音を立てて。それから。
「好き……」
その熱にまた頬擦りしながら、成徳さんへチラリと視線を向ける。
バスルームでシャワーに濡れた髪をかきあげながら、僕のキスに眉を顰めて、喉奥で息を乱してくれるのが嬉しくてたまらなくて。
もっと。
こう、かな。
こう、ですか?
ここも、好き、ですか?
僕は……貴方の指でここを撫でられると、気持ち良くて、すぐにイッちゃいそうになるんです。
ここも好き。
好き。
「ン、んっ」
大好き。
「ン、ンく……ん、む」
恋はちっとも大人しくない。
「……佳祐」
「ン」
すごくわがままで。
「っ……ン」
すごく、欲しがりだ。
成徳さんのこと、欲しくて、仕方がない。ダメなのに。本当にこの人の幸せを思うのなら、僕はきっとふさわしくないのに。なのに、諦めたくない。
「成徳、さん」
この人のこと、僕だけの人にしたい。
「僕の、成徳さん」
この人のこと全部、独り占め。
「あっ……」
独り占めしたくて、お腹の底が彼欲しさにキュンって締め付けた。成徳さんのにキスをしていた唇が痺れて、おかしくなりそうだった。
「アッ……ぁ」
ベッドがきしむ。
「あ、んっ……成徳さんっ、成徳、サンっ」
二人分の重みに、今夜も僕一人が眠るはずだったベッドが少し戸惑って。
「あああああっ」
深く射抜かれた瞬間、爪先が朝ちゃんと整えたはずのシーツを掻き乱した。
「あ、あ、あ」
「中、すご……」
「やぁっ……ン」
「とろけてる」
「ン、ふっ……」
深く射抜いて、そこから少しだけ引いて、また同じくらい深くまで来る成徳さんの熱が気持ちいい。
「トロトロ」
「あぁっ……やぁ、ん」
「なのに、キュウキュウして」
ゆっくりなのに、もう気持ち良い。もう、こんなのどうしたらいいのかわからなくて涙が勝手に出てきちゃう。
「佳祐」
「あ、あ、あ、や、ぁっ……あんまり突いちゃ、や、そこ、ダメっ、変になる」
「いーよ、なって」
「や、顔、も、声も変、だから」
「可愛い」
「やぁぁっ」
奥を、トントンって、何度か小刻みにノックされて、仰け反った身体を成徳さんの腕が抱き締めてくれる。暴れる身体を抑えつけて、甘く閉じ込めて、それで、また。
「あ、あ、あ、あっ」
「佳祐」
「やぁっ……そこ、らめっ……せい、とく、さん」
「俺よりいい男いても、離してやれないからさ」
「あ、ン……ない、成徳さん以外、な、い」
「いるよ。たくさん。いるだろうけど」
「あ、あ、や、いないっ、僕、好きなのは」
「離してやらないから」
「あっ」
や、だ。
僕、貴方以外なんて、や。
「僕もっ」
僕は女の人じゃないし、本当は貴方の恋愛対象には入らないけれど、でも、や。
「僕の、成徳さんっ」
「っ」
「大好き、です」
腰をしっかりと鷲掴みしてもらえるだけでイッちゃう。
「や、ひゃぁっ……ン」
奥、そこ貫かれるの、すごく気持ちいい。
「あ、あ、もっと、奥まで」
「佳祐」
「あ、あ、あ、イっちゃう、僕」
「いいよ、何度でもイッテ」
「あ、あ、あ、成徳さんっ」
「今日は、離してやるつもりないから」
「あっ」
激しくなる動きに翻弄されるばかりだ。ただしがみついて、好きな人でいっぱいになる身体でギュッて貴方に抱きつくしかできない。
「あっ、イク」
「佳祐」
耳元で名前を呼ばれたら。
「っ、イクっ、あ、あああああああっ」
ただそれだけで感じて、達してしまう。
「あっ……」
中、お腹の奥がきゅうきゅうしてる。覚えたての口でする愛撫みたいに、貴方のこと離したくないって、しゃぶりついてる。
「っ」
「あ、成徳さん」
僕の。
「このまま……」
僕の、だもの。
そうお腹の奥が貴方にしがみつく。
「もっと、して、成徳さん」
「……」
「好き」
初めてだから。こんなにわがままな自分は。こんなに暴れてる恋は。まだ、貴方に上手に大好きだと伝える術を僕はたくさんは知らなくて。
上手じゃないけれど。
「好き」
「佳祐」
「大好き」
この好きを、この恋を表す方法をまだ数えるほどしか知らないけれど。
そっと、愛しい人の頬に触れて、その唇にキスをして、それから。
「大好きです」
それから貴方を抱き締めるくらいしか、まだ伝えた方を知らないから。
「成徳さん」
ただ貴方に一晩中、可愛がってもらいたいと、唇で、身体の奥で、辿々しく伝えていた。
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