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新年のご挨拶編 12 大胆すぎますか?
大胆すぎ、でしょうか?
そんな心配をしつつ、真っ赤なほっぺたになってしまっているだろう僕はそっとお風呂場を出た。
パスタ、とっても美味しかったです。成徳さんはお料理も上手で僕はいつもすごいなぁって感心するばかりです。お仕事だって、工事の立ち会いなんてすごいことです。かっこいいです。
そんな人の「癒やし」係になれて、僕はとっても幸せで。
舞い上がっちゃっているんです。
だから、その――。
「成徳さん……」
お風呂に先に入らせていただいた僕は、キッチンにいる成徳さんを見つけた。
成徳さんは紳士だから、僕に先にあったまって来いって言ってくれた。
「風呂、ちょうどよかった? 入浴剤、昨日、買い物に行ったら売ってて、キャンペーンしてたから、買ってみたんだ」
彼は僕がお風呂から上がってきた気配を感じて、こちらに背を向けたまま、話しかけてくれる。お風呂はどうだった? と、優しく。きっと、僕がパジャマをしっかり着て、髪も乾かして、すっきりさっぱりしただろうって思ってる。
「疲れに良いってあったから。気に入ったら、また買って」
「成徳さん……」
髪は、乾かしました。ちゃんと。風邪を引いたら大変なので。でも。
「あの……」
こんなことをしたら、大胆すぎますか?
「佳…………」
「っ」
声、詰まっちゃいましたか? 言葉、失っちゃいますか? その、今の僕に。
「すみません。あの、こんな格好でおうちの中を徘徊して、しまい、ました」
ドキドキしすぎて、喉奥で言葉が止まってしまった。そして、破廉恥な! って、叱られてしまうかもしれないと、とても緊張しながら、縋るような気持ちで、そっと、成徳さんの洋服の端を指できゅっと握った。
下着、履いていないんです。足もたいして長くないのですが、胴体もたいして長くないらしくて。だから、こうしていたら、下着を履いていないことはきっとどうにか見えずに済むとは思うんです。
でも、一目瞭然です、よね。
「あのっ、すみません。変態っ、みたいな格好をして、その、癒しと言ってもらえたことが嬉しくてっ。ちょっと舞い上がってしまってっ。だから、そのっ」
ぎゅっと肩をすくめて、俯いていた。肩に力を入れすぎたのか、パジャマの上の丈が上がってしまって、慌てて、それを手で引っ張って。
やっぱり、破廉恥すぎたに違いない。
色っぽいわけでもないし、妖艶の、よ、の字ほどのものも持っていないのに、嬉しくて、つい。
「すみません」
「なんで? 謝んの?」
「ちょ、調子に乗ってしまいましたっ、あの、今すぐ、」
今すぐ下もちゃんと履きますって言って、引き返そうと思った。
「…………」
けれど、ぎゅっと服を下へと引っ張り下げていた僕の手に成徳さんの手が重なった。重なって、握ってもらって。僕に、キスをくれた。
「……ぁ」
「?」
「あの、引かないでくださってありがとうございます」
お辞儀をしたかったけれど、お顔が近くて、できなかった。
「佳祐の実家まで会いに行ったのに、引かなかった?」
「ま、まさかっ! とっても嬉しかったです」
「そ? 俺も今、嬉しいけど?」
「!」
本当ですか?
「でも、まぁ、セーブはできなくなりそうだけど」
「……ぁ、わっ」
首筋にもキスがもらえた。
びっくりして、くすぐったくて、首を傾げたけれど、僕の肩に鼻先を埋める成徳さんと、こちん、ってぶつかってしまって。
それで。
「わっ」
引き寄せられたら、あの。
「わ、ぁ」
成徳さんの、ちょっと当たる。
「まぁまぁ……じゃないな」
「?」
「かなり、だな」
「ほわぁぁ、あっ」
突然、足が地面からふわりと浮いてしまった。抱っこ、していただいてしまった。
「あのっ、僕、重いです! 多分、お正月に食べるくらいしかしてなかったので」
「大丈夫。重さ、感じないくらいには、佳祐に夢中だから」
「!」
そんなわけないのに。本当に、お餅をいっぺんに四つも食べたりしちゃったんですって言っても、そのまま歩き出してしまう。僕らがいつも眠っている寝室へ。
僕は、暴れて成徳さんを怪我させてしまわないように、その肩に手を置いたまま、じっとしていた。
「やっぱ、おも……」
「はぎゃあああ! 申し訳ないです。おろしてください! その運んでいただいて楽しようとじっとしていたわけじゃなくて、暴れて怪我をさせてしまうと申し訳ないので、なので」
「なんてな。重くないことないけど、おろさない」
お互いに仕事は忙しくて、でも、それでも、帰るところは、眠る場所は一緒で。
僕は貴方の寝顔を見ると頑張ろうって思えました。
「寝顔もいいけどな」
「!」
「けど、やっぱこうしてるのが一番、だな」
成徳さんも、そうですか? 僕が眠っている顔見るの。
「佳祐、寝てる時、白目だしな」
「ひゃああああ、そ、そうなんですかっ? それはなんて恥ずかしい」
「冗談だよ。可愛い顔して寝てる」
「!」
明日も頑張ろうって、思えましたか?
「成徳さん」
「?」
「大好きです」
突然、伝えたくなった。
「あぁ……」
そして抱っこされたままキスをして。
とても久しぶりに、二人で一緒にベッドに入れて。
成徳さんに触りたいのをずっと我慢していたごうつくばりな僕は笑われてしまうくらい、ずっとぎゅっとしがみついていた。
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