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新年のご挨拶編 13 お触り、プリーズ
人のことをあんまりジロジロ見てはいけないと思うんです。
失礼ですよね?
あんまりじっと見ていたら。
怒られてしまいます。
でも、どうしても目が離せなくて。
僕は、成徳さんが話しているところをじっと見つめるのがすごく好きです。食べてるところも、すごくすごく美味しそうに食べるんですよ? 椎茸以外ですけれど。きっと知らないでしょう? 自分の食べている時の様子を鏡で観察なんて誰もしないと思うので、成徳さんは見たことないかと思います。僕はいつも見ちゃいます。僕はそれもあって、お料理頑張りたいなって思っています。まだ、全然上手じゃなくて、今日の成徳さんみたいに、パパッとトマトソースのパスタなんて作れないけれど。でも、いつか貴方に美味しいとたくさん褒めていただけるものをたくさん作れるようになりたいです。
それから、おうちでのんびり映画を観ている時の横顔も好きです。たまに、映画そっちのけで眺めてしまいます。
あと、案外、好きなのが、成徳さんが職場の新人さんに困って、ぼやいている時のお顔も好きです。なんて優しい人なんだろうと眺めてしまいます。
それから――。
「佳祐」
それから、こういうちょっとやらしいことをする時の成徳さんは心臓が止まってしまいそうにかっこよくて、つい、見惚れてしまいます。
あ、ほら、多忙すぎて少し伸びた髪がまたとても色っぽいんです。今みたいに、かき上げたりすると、もうもう、それだけでご飯を三杯ほど食べられちゃいます。
「何? そんなに俺の顔、ジロジロ眺めて」
あ、見つかってしまいました。
「かっこよかった?」
はい。すごく。だからコクンと頷くと笑いながら、おでこにキスをしてくれた。
「佳祐」
「は、ひ」
大胆すぎると笑われるかと思った下半身丸裸で部屋を徘徊するなんて変態みたいなことをした僕は、ベッドの上で座り方に迷ってしまって。
あの、自分でこんな格好しておいてなんですが、見えてしまうので、どうしたものかと、座り方を考えあぐねてる。
「あれ、犬、でっかいな」
「? ぁ、豆五郎ですか?」
「名前?」
「豆柴だと思ったら、普通サイズの柴犬だったので、名前の豆はいらないのですが、取ると、五郎、で、少し頑丈さが全面的に名前に出てしまうなとなりまして」
「あぁ、なるほど」
「? 犬、苦手でしたか?」
首を傾げると、小さく笑って、またドキドキするほどかっこいい仕草で、髪をかき上げてくれた。
目、が。
「いや、犬に一生懸命話しかけてるとこ、面白かったって思って」
目が、カメラになったらいいのに。造形的には想像すると怖いですが、でも、瞬きがシャッターの代わりになって、今、僕の前で微笑む貴方のことを写真に収められたらいいのに。
「癒しだなぁって」
「! 本当ですか?」
「あぁ」
「僕、癒しになれてますか?」
僕は成徳さんと一緒にいられるととても嬉しいし、幸せだし、元気になります。
「じゃ、あ」
喉奥がキュッとした。耳もきっと真っ赤です。頬も。
だから、その頬にそっと大きな手を引き寄せて、擦り寄るように首を傾げた。
「あの」
「……」
とっても恥ずかしいけど。
でも、貴方のことをその気にさせたかったからで。色気なんてものはないですけれど、拙く、貴方しか知らなくて恋愛事には疎いですけれど。
「触っ……て……」
貴方に触って欲しいです。
「僕、に……」
僕も貴方に。
「あっ……ン」
触りたい、です。
「いっぱい触って」
ずっとずっと起こさないように、邪魔しないように、我慢していたから。
「欲しい、です」
小さな声になってしまったけれど、ボソボソと聞き取りにくいかもしれないけれど、よかった。貴方にはきっと伝わった。
「ぁ……っ」
触ってもらえたから。
「ひゃ……ぅ」
自分からこんな格好をしたのに、恥ずかしくてずっと顔が熱くて熱くてたまらなかった。その僕の頬にキスをくれて、耳にもくれる。指先は太腿を撫でてからゆっくり服の中へと侵入してきてしまう。
触ってもらいたかったけれど、そのまま、手の侵入を許すのははしたないのでしょうか。でも、やっぱり触ってもらいたくて。
「……ぁっ、ン」
お腹撫でられると、なんだか、とろけてしまう。
「ン、ひゃ」
「佳祐」
「あっ」
ゾクゾク、する。
久しぶりに触ってもらえて、困ってしまうくらい。
「あ、の、成徳さんっ」
感じちゃう。
「ん?」
「成徳さん、も、その」
「……」
「僕に、その」
「……」
「触りたかった、ですか?」
おずおずとそんなことを尋ねてしまった。成徳さんは僕をじっと見つめながら、僕を自分の脚の上に乗せてしまう。ギリギリ、何も履いていない、その局部が見えるかどうかのギリギリ。僕は少し慌てて、少しどころじゃなく恥ずかしくて、向かい合わせで貴方の膝の上に座りながら、その肩にぎゅっとしがみついた。
「そりゃ」
まぁね、そう答えてくださると思った。そう言ってもらえると期待してた。
成徳さんの大きな手は僕の背中を撫でてくれる。気持ち良くて、ほろほろと恥ずかしささえ溶けてしまいそうな心地の中。
「触りたくてたまらなかったよ」
「!」
もらえた答えは予想していたものと違っていた。期待していた、言葉とは違うお返事だった。まぁね、じゃなくて、はっきりそう言ってもらえて。
「佳祐に」
「あ、ひゃぅっ、っ」
びっくりしてしまったんです。
「触りたかった」
言いながら、その手が僕の腰から背中を優しく何度も撫でて、その唇が服越しに、僕の胸にそっと口付けてくれた。まだ、たくさんじゃないのに。まだ服越しなのに、そこをたっぷり可愛がってもらえてはまだ、なかったのに。
胸の、あの、すごく感じてしまう、ち、ち、ちく、び、を口で布越しに可愛がってもらった、だけ。
「あっ、あ、待っ、あああああっ、っっっっ、ん」
「佳祐? まだ」
はい。まだ、ですよね。まだ、ちょっと触ってもらえただけなのに、ですよね。
「ん、ぁ」
だって、いつもの成徳さんなら、まぁねって、笑いながら、答えてくださったでしょう? 少し照れながら。なのに、包み隠さず、そのまま真っ直ぐ答えてもらえるなんて思っていなかったから。
「あっ……成徳さ……ン」
ただその優しくて大きな手に包み込まれるように引き寄せられて、抱き締められただけで。
「大好きです」
達してしまうくらい、嬉しいんです。
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