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第2話 拒絶

「何度も言うが、私の妻はお前だけだ!」  イライラとコウイチは怒鳴りつけた。 「そんなコト… ベータの男性である私には法律で、アナタの妻になる資格さえ無いのですよ?!」 「そんな時代遅れの法律は、何十年も大昔に死んだ差別主義者たちが、後世の人間たちへの迷惑など考えず、勝手に決めたコトだ! 私たちがお互いを伴侶だと思えば私たちは夫婦で(つがい)なんだよ、いい加減、私の全てを受け入れろ、ルイ!」  腹をたてたコウイチは、再びルイに怒鳴った。  コレと同じやり取りを過去に何百回、何千回と繰り返していて、コウイチはウンザリしていたからだ。 「ですから、それは…」  今までには無かったコウイチの激しい怒り方に、ルイの声が弱々しく揺れた。 「ルイが私を嫌いになって、私よりも愛する相手が現れたというのなら… 私だって少しは考えたさ! まぁ私はアルファだから、私の執着心は簡単に退(しりぞ)けられないだろうがな!」 「コウイチさん…」 「私はルイを愛してる… それは20年経とうが、30年経とうが変わらない自信がある… ルイはもう、私を愛していないのか?」  コレ以上の言い逃れは絶対に許さないと、コウイチは瞳を鋭く光らせて語っていた。 「その質問は… 狡いですよ! コウイチさん」  だがルイは、視線を逸らしコウイチの鋭い視線と、愛から逃げようとした。   「なぁルイ… お前は何度、私の心を切り裂けば覚悟を決めるんだ?」 「・・・っ」 「ルイは法律で認められた結婚ができなければ、私の愛を受け入れられないのか?」 「ですが、コウイチさん…」 「私を幸せに出来るのは、この世界でルイ… お前ダケだと知っているだろう? ソレでも私を拒み続けるのか?」 「アナタを拒んだことなど… ありません… 私は自分の立場を(わきま)えているだけです」 「・・・・・・」  期待した答えは得られずコウイチは落胆し、額を押さえて顔を伏せると… フゥ―――ッ… と大きなため息を漏らす。 「コウイチさん、どうか… 聞き分けて下さい…」  顔を上げられないルイの声は、コウイチを傷つけた自覚があり、子供の泣き声のように弱々しく、今にも消え入りそうだった。 「…わかったよ、ルイ… お前に縁談を用意したから、必ず結婚しろ! ルイ、ベータの女を抱いて子供を作れ! その子を私の息子の世話役にする」 「ちょっと待って下さい!! ナゼそんな話になるのですか?!」  ハッ… と息を吞み、ルイが顔を上げると…  いつもは真っ直ぐルイを見つめるコウイチの視線が、二度と見つめる気はないと宣言するように、横へ向けられていた。 「それがお前の最後の仕事だ… 私の世話役と秘書の職を解き、明日から田中を第一秘書にする、お前は本家に帰れ市ヶ谷」 「…コウイチさん?!」 「私の前から消えろ、ルイ! お前がいては忘れたくても忘れられない!」 「・・・・っ!!」  コウイチが本気なのだと知り、ルイは青ざめ言葉を失った。 「子供の頃からの世話役を、成人した後も使っているのは、私ぐらいだからな…」  椅子を回しコウイチはルイに背を向けた。 「コウイチさん!」 「今までご苦労だった、市ヶ谷下がって良い」 「コウイチさん…」 「・・・・・・」  ルイは呆然としながら、コウイチのオフィスを出た。

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