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第4話 悔恨

 妻に体調が悪く上手く出来ないと、丁寧に謝罪した後…  ルイは一人になりたくて、寝室を出て深夜の公園へと散歩に出かけた。 嫌がるコウイチをルイが説得して、結婚させた時… 愛する人を、オメガに渡さなければならない屈辱に耐える自分の方が、絶対に辛くて苦しいのだと、思い込んでいた…  ただの使用人であるルイから見れば、コウイチの亡き妻も、その実家との縁組みも、全てが完ぺきに見えたからだ。  自販機で暖かい缶コーヒーを買い、ベンチに座ると…  ルイは甘いコーヒーを一口飲み、考えに耽る。 『私は三男だから、無理に子供を作る必要は無いさ』 『いいえ、コウイチさんだって、この結婚が大切な政略結婚だとわかっているでしょう? 最低1人は必要ですよ、コレも大切な仕事だと思って頑張って下さい!』 『大切な仕事か…』 『はい』 <あの時、コウイチさんはどんな顔をしていただろうか?>  怒った顔だったか? 傷ついた顔だったか? それとも、ルイを嘲笑いバカにしたような顔だったか? 今になってルイは酷く気になった。 <思い返せば… 結婚した頃から、コウイチさんは短気になり、私への八つ当たりが酷くなった> 『奥様とまたケンカをされたのですか? 次の休日にお2人でデートに出掛けてみてはどうです? きっと奥様のご機嫌も良くなるでしょうから…』 『ウルサイ!! 黙れ、ルイ! お前が口を出すな!!』 <無神経なコトを、良くもぬけぬけと私は言えたものだな…> 「謝れるなら… コウイチさんに、謝りたい!」 <彼のコトだから、きっと今さらだと、嫌な顔をするだろう… 謝罪など、私の自己満足なのは分かっている… 嘲笑(ちょうしょう)されるに違いない> 「きっと私を恨んで… 憎んでいるかもしれないなぁ…」  自分でポツポツとつぶやいてみて、自分自身の言葉に狼狽(うろた)え、ルイに重くのしかかって来た。 「こんなふうに… 私はずっと後悔をしながら、生きて行くのだろうか? ふふふっ… 本当にバカだなぁ…」  自販機の明かりのせいで、あまり綺麗には見えない夜空を見上げ、瞳を閉じると…  不意に眼の奥が熱くなり、ルイは慌てて目蓋の上から掌で押さえて、あふれそうな涙を堪えた。  冷たくなった甘い缶コーヒーを飲み干して、空き缶をゴミ箱に捨て…  苦痛に満ちた新居へと帰る。

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