ルイが静まり返った、薄暗い新婚夫婦の寝室へ戻ると… 「やっと帰って来たなルイ、ドコまで散歩に出かけていたんだ？　もう少しでお前を、捜しに行こうかと思ったぐらいだ！」 　瞳をギラギラと血走らせて、コウイチがベッドに座っていた。 「…コウイチさん？！　なぜ、ココに…？」 　ハッ…　と息を吞み、久しぶりに愛する人の姿を見て、ルイの身体は歓喜で震えた。 　 「さぁ…　なぜだと思う？」 「アナタは…」 「私が選んだお前の妻は、良い女だろう？　どうだ、上手く抱けたか？！」 「・・・・・っ」 　ルイの顔が強張った。 「子供は出来そうか？　お前は大切な仕事を上手く果たせたか？！」 「・・・・・・」 ＜ああ…　この人は…　私が妻とこうなるコトを予想して、計画的に私をこの状況に追い込んだのか？！　恐らく、そうに違いない！！＞ 　フゥ―――ッ…　とルイは、大きなため息を吐いた。 　ルイの読み通り、コウイチは最初から妻役の女優を雇い、指示通りに演じさせていたのだ。 　婚姻届けも役所に届け出たと見せかけて、妻役の女優が回収しコウイチに渡していて、ルイは実際には結婚もしていない。 「…私が、アナタの命令通りに彼女を身籠らせていたら、アナタはどうするツモリだったのですか？」 「お前に限ってそれはありえないだろう？」 「確かに…　そうですが…」 ＜子供の頃から一緒にいるから、本当にこの人には何も隠せないなぁ＞ 　苦笑いを浮かべてルイは上着を脱いで丁寧にハンガーに掛けると、シャツとパンツも脱いで下着も全部取り去り、ベッドに座るコウイチのヒザの上に向かい合うように座った。 「私の負けです…　アナタの望み通りにします」 ＜コウイチさんの望みは私の望みでもあるから＞ 　広い肩に手を置き、ルイはコウイチの美しい瞳を見つめる。 「やっと理解したな？　ルイ！」 　満面の笑みを浮かべて、コウイチは自分のヒザに乗るルイの腰を掴み引き寄せた。 「はい」 ＜アルファの執着には敵(かな)わない…＞ 　ルイも笑みを浮かべ、コウイチの額に自分の額をピタリッ…　と付ける。 ＜いや、違う！　ベータの私だって、アルファに負けないぐらい執着しているのだから、比べたらいい勝負になるかも知れないなぁ＞ 「ルイ！　愛してる、私のモノだ！！」 「私も愛しています、コウイチさん！　本当はずっと、そう言えなくて苦しかった！　アナタを愛していると！！」 「コレでやっと私たちは、愛し合える！　そうだろう、ルイ？」 「いくらでも…　好きなだけ、私を愛して下さい！　私もアナタを愛しますから！！」 「やっと…　お前の全てが、私のモノになったな、ルイ！！」 　力いっぱい苦しいぐらいに、コウイチに抱き締められ… 　我慢していた涙が、ルイの瞳からあふれだした。 「ごめんなさい！　無神経でヒドイことをたくさん言って、アナタを苦しめてしまったコトを…　どうか許して下さい！」 　広い背中に腕を回し、コウイチに負けない力で、ギュウギュウとルイも抱き締めた。 「私を一生愛すと誓えるのなら、許しても良い！」 　笑いながらコウイチは、傲慢に言い放つ。 「ふふふっ…　誓います！　アナタの隣りでアナタを一生、愛します！　だからあなたも誓って下さい、私を二度と手放さないと…　アナタは私のモノだと！」 ＜もう二度と、どこかのオメガになんか、アナタを絶対に渡さない！！＞ 「私は一度もお前を手放したコトは無いが！　だが誓う…　お前を放さない！　お前はコレからも私のモノで、私はお前のモノだと」 　ルイは泣きながら笑みを浮かべ、自分が犯した過ちを、コウイチに許されたと知り安堵した。