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第4話

 五分後。如月と真島、そして治美の三人は、リビングの応接セットで向かい合って話していた。正確に言うと、如月が治美を説教していたのだ。真島は、もっぱら聞き役だった。 「まず何十回も言っているが、来る時は連絡を入れること。僕は仕事柄、休日出勤もある。第一、社会人として基本のマナーだ」  治美はソファにちんまりと座ったまま、こくりと頷いた。 「それから、僕が同性と付き合っているだの何だの、玄関先でわめくな。マンションの住人に聞かれたらどうする。余計なもめ事は作りたくない」  はい、と治美は神妙に答えた。それから、と如月がため息をつく。 「確かにこの真島君は、僕が今付き合っている人だ。お前が感付いたようにな。そして、同じ会社の営業部でもある。……で、その彼の前で、わざわざ過去の恋人の話を持ち出すか? 無神経にも程がある」 「う……。それは私も、言ってからしまったと……」  ごめんなさい、と治美はぺこりと頭を下げた。如月が、にこりともせずに続ける。 「もし勘が外れて、真島君がただの仕事関係者だったら? お前は、僕の性癖をバラしたも同然だぞ。会社で噂になったら、どう責任を取ってくれる!」 「すみません!!」  治美が縮み上がる。真島は勇気を振り絞って、口を挟んだ。 「あの、もうその辺でいいんじゃないですか。俺、ご飯を作ってたとこなんです。よかったら治美さんも、ご一緒に」  キッチンを指すと、治美は助かったという表情を浮かべた。 「すごーい。真島さんは、料理お得意なんだ? じゃあ遠慮無くご馳走に……」 「治美」  如月は眉をひそめたが、真島は、いいんですよとかぶりを振った。 「八割くらいできたとこですし……。あっ、でもみりんが無いんだった」 「そういえば、切らしていたっけ」  如月も、しまったという顔をする。そもそも、それを買いに出ようとしていたのだ。すると治美は、なぜかにんまり笑った。 「ちょうどよかった。このお祝い返しの中身、調味料セットだよん。早速使えるね!」 「……仕方ない。食べて行け」  如月は、渋々といった様子で頷いたのだった。

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