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第7話
「……俺、自信を持っていいんですか」
おそるおそる尋ねれば、如月は、もちろん、と力強く頷いた。
「そして治美の言った通り、僕はこう見えて情には厚い方だから。君がもし僕から離れたくなっても、容易には許さないだろうね。ま、それ以前にありとあらゆる対策を講じて、離れられないようにするつもりだけれど」
「修一さん……」
カッと、顔が熱くなっていく。治美は、そんな真島と如月を見比べると、スッと席を立った。
「お邪魔虫って感じになってきたから、私はそろそろ退出しよっかな。じゃ、ごゆっくり」
「最初からお邪魔虫だ。それから次回は、必ずアポを取れよ!」
如月が釘を刺す。ハイハイ、と治美は明るく答えると、あっさり帰って行ったのだった。
二人きりになると、真島と如月は、思わず顔を見合わせていた。
「今日は、悪かったね。まさか、あいつがいきなり来るとは思わなくて」
真島は、慌ててかぶりを振った。
「いえ! 俺だって、勝手に来てたわけですし」
「君はいいの。そのつもりで合鍵を渡したわけだし。……それにしても、本当にあいつは台風だな。それも、たちの悪い台風だ。引っかき回して、去って行く」
如月が、ため息をつく。
「そんなこと無いですよ。明るくて楽しい方でしたし」
顔も性格もまるで如月とは似ていないけれどな、と思いながら真島は言った。すると如月は、そんな真島の心を読んだようだった。
「正真正銘、実の兄妹だよ?」
「べ、別に疑っているわけでは……」
あたふたしている真島を、如月は楽しげに見つめている。
「僕らの父は、寡黙な人なんだけどね。治美は完全に母親似なんだよ。二人の女性に共通するのは、お喋りということ。とにかく、頭に浮かんだことをすぐ口にするんだ。後先を顧みずにね」
さすがにフォローに困ってきた。
「えーと。珍しいですね。女の子はお父さんに似るって、よく言いますけど……」
「でもね。僕は治美には、頭が上がらないんだ」
如月が、静かに真島の言葉を遮る。その表情は妙に真剣で、真島は思わず口をつぐんだ。
「新婚と言ったろう? 旦那さんは、如月家に婿入りしてくれるそうだ」
まさか、と真島は思った。如月が、真島の瞳を見つめる。
「最近、両親と治美に話した。一生を共にしたい、同性の恋人がいると」
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