18 / 73
言いたかったんだもん(『台風襲来』後日談)
一週間後<@蓮見宅>
蓮見「なるほど。つまり真島君が持っていたその指輪が、羨ましかったと」
翔馬「はい……。あっ、もちろんこのペアウォッチも、すごく気に入ってるんですよ? でも、やっぱり指輪って特別な気がして……(しゅん)」
蓮見「(かわいそうにっ……。はっ、そうだ)翔馬、そろそろ誕生日が近かったな。三十という節目の年齢でもあるし、ここは一つ、いつもとは趣向が違うプレゼントをあげよう」
翔馬「何ですか??」
蓮見「沖縄に、素敵な無人島があるんだ。それを」
翔馬「えーっ!? 冗談ですよね?」
蓮見「本気だ。前から別荘が欲しいなと思っていたし、いい機会だ。クルージングも楽しめるよ。どうだ?」
翔馬「そりゃあ、憧れますけど。でも、一体いくらすると思ってるんです? それにそういうとこって、ライフラインが通ってないですよね。その準備とか大変じゃないですか」
蓮見「翔馬のためなら、それくらい安いものだ。それに、手配なら適任者がいるから、気にしなくていい」
翔馬「悠人さん……(キュン)」
蓮見(如月君にさせよう。そもそもの発端は、あのカップルなんだから)
さらに数日後<@如月宅>
如月「蒼君」
真島「……はい」
如月「あれほど言ったのに、三枝君に指輪を自慢したね?」
真島「してませんて! 俺は、ただ『偶然』、三枝の前で指輪を落としちゃっただけなんです。で、『あっ、大切な贈り物が~』とは言いましたが、修一さんからだとは言ってませ……」
如月「蒼君!!」
真島「すみませんでしたあ!!」
如月「幸福は他人と比べるものではないと、よくよく言い聞かせたつもりなんだけどねえ。君には、ちっともしみ通っていなかったみたいだな」
真島(やばい。この目つき、マジギレ中だ)
如月「(にこにこ)でもその点は、僕に責任があるよね。僕の愛の伝え方が、不足していたということなんだから(にこにこ)」
真島「いえ、全くそんなことは(逃げなきゃ)……」
如月「ということで、蒼君に伝わるまで、愛情を示すとしよう」
真島(ぎゃーっ)
結局その後、考えを変えた蓮見は、翔馬に指輪を贈った。翔馬は大感激し、無人島の管理を免れた如月はひと安心した。真島一人が、一週間腰痛に苦しむことになったが、もちろんこれは自業自得である。
ともだちにシェアしよう!