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第12話

「みみみ、見ないでください!!」  真島は反射的に後ずさったが、狭い湯船の中では逃げ場は無かった。 「どうして。眼鏡スタイルより、こちらの方が好きなんだろう? いつも、そう言ってくれるじゃないか」 「いえ、そういう問題では無く……」 「だったらいいじゃない。これから君を抱く時は、必ず着けることにしようかな」  そんな台詞と共に引き寄せられ、真島は恥ずかしさで体が熱くなる気がした。そんな真島の耳元で、如月が囁く。 「ところでこのお風呂、何か違うと感じない?」 「……え?」  嫌な予感がする。如月は、クスッと笑った。 「前に社長に、強力な催淫剤をいただいたことがあるんだよね」 「まさか、この風呂って……」  やけに体が熱いのは、気持ち的なものでは無かったのか。案の定、如月があっさりと頷く。 「うん、それを入れてみた。ちなみに、三枝君に使ったものよりも効果が強いって」 「お仕置き、あれで終わりじゃなかったんですか!」  真島は、悲鳴のような声を上げていた。 「精神的なバージョンはね。でも今回、社長は三枝君に、二種類のお仕置きをするそうだから。秘書としては、尊敬するボスを見習わないとね」 (これから、性的なお仕置きが待ってるって……?)  がくん、と頭を垂れる真島であった。それでも内心では、それほど怯えていない自分がいた。如月が浮気するかもしれないというあの辛さに比べれば、これくらいずっとマシに思えたからだ。

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