36 / 73

ほわいとでー 第1話

 真島蒼は、カレンダーを眺めて悶々としていた。 (三月十四日、か)  言わずと知れた、ホワイトデー。バレンタインに如月からチョコをもらった真島としては、当然お返しをしたいところである。とはいえ、如月の性格からして、果たして受け入れてもらえるか不安だったのだ。 (『お互い贈り合ったんだから、それで終わりでいいじゃない』とか言いそうだもんな、あの人)  確かに真島も、如月にさきいか(彼が甘い物嫌いなため)をプレゼントした。だから、そう言われたら反論の理屈が見つからない。 (あ~、でも! 俺的には、祝いたいんだよう、ホワイトデー!)  真島は、ジタバタと足を踏みならした。要するに真島は、大のお調子者のお祭り好きなのである。対する如月は、イベントには無関心と来ていて。もちろん真島の誕生日はきちんと覚えているし、他の気配りは満点なのだけれど。 (ま~、しょうがないか。自分の誕生日も忘れるくらいだもんな、あの人)  仕方ないと無理やり自分を納得させた、その時。スマホが鳴った。当の如月からであった。 「はい!」 『実は蒼君に、是非頼みたいことがあるんだけど』  何だろう、と真島は思わず背筋を伸ばしていた。まるで見ていたかのように、如月がクスッと笑う。 『そんなに緊張しないで。大したことじゃないから。今度社長が会食される店の、下見をしに行く予定なんだけれどね。調べたら、女性客がほとんどのようで。男性一人では、入りづらいんだよね。どうかな、付き合ってくれないかな? 二人なら、ビジネス目的も装えるし』 「もちろんです。俺でよければ」  真島は、即答していた。 『ありがとう。助かるよ』 「いつがいいんです?」  如月が告げた日付は、次の火曜だった。 『場所は、××ホテル内。じゃあ、悪いけど頼むね』  如月は、明るくそう言ったのだった。

ともだちにシェアしよう!