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第2話

 当日。如月とそのホテルを訪れた真島は、ぽかんと口を開けていた。 「デザートビュッフェ、ですか」  確かに如月が言った通り、会場のレストラン内は女性客であふれかえっていた。 「そう。好きなだけ食べてね。僕が無理を言ったんだし」 「無理なんて、そんな。むしろ、めちゃくちゃ嬉しいです。美味そう!」  色とりどりのスイーツの群れに、真島は目を輝かせた。ケーキにクッキー、プリン……。そこで真島は、おやと思った。 「何か、チョコ系多くないですか」 「その時によって、テーマが変わるんだって。今回のテーマは、チョコレートらしいよ」  ますますラッキー、と真島はよだれが垂れそうになるのを必死で我慢した。スイーツの中でもっとも好物なのが、チョコなのである。 「僕は、席で待っているから。自由に選んで」  そう言うと如月は、さっさと行ってしまった。予約したらしき窓際のテーブルに着き、一人待つようだ。 (そっか。匂いも嫌なくらい、チョコは苦手だっけ……)  バレンタインの際の記憶が蘇る。ならば違うテーマの時にすればよかったのでは、という疑問もかすめるが、仕事上急いでいたのだろうと納得する。 (といっても。何も食べないってのもなあ……)  そんなことを考えながらビュッフェ台を見回していた真島に、ある名案が浮かんだのだった。

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