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第22話

 ふむ、と如月は腕を組んだ。 「飽きが来ないからかな」  真島が、眉を寄せる。 「……それって、褒めてるか微妙なんですけど」 「じゃあ、言い方を変えよう」 眼鏡のブリッジをぐいと押し上げると、如月は真島を真っ直ぐに見つめた。 「蒼君には、僕がいないとダメだ。そう思ったからという理由では不満かい?」  真島の頬が、ぱあっと赤くなった。 「ヤバい。嬉しすぎる……」  ごにょごにょと呟いた後、真島は突如ガッツポーズを決めた。 「よしっ。取りあえず今夜の夕飯、張り切っちゃいますね。和風ステーキ、どうです? 疲れた時には肉が一番、ですもんね?」  褒め所の見つからない三枝の料理を何とか持ち上げようとして、苦肉の策で吐いた台詞だ。伝わっていたのか、と如月は肩をすくめた。 「今日は引っ越しやら何やらで疲労しまくった一日だし、ピッタリでしょ。あ、俺の場合は見た目も麗しいですからねっ」  あの修羅場の中でも、三枝の料理を素早くチェックしていたのか。どう忠告しようが、真島の三枝への対抗心は、無くならないらしい。 (そういう所も全部含めて、愛しいんですけどね……)  信号が、青に変わる。愛しいパートナーとの新生活の場に向けて、如月は軽やかにアクセルを踏んだのだった。 同棲大作戦・了 ※この後は小ネタが続きます。

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