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おまけのSS⑥(前編)
同棲している如月と真島の話第四弾。
真島蒼は、悩んでいた。
(何か、楽しいことしてぇ~!)
大のお祭り男である真島は、理由を付けては騒ぎたい性質である。とはいえ、かこつけるイベントが、当面何も無いのだ。
(俺の誕生日は終わったし、クリスマスもバレンタインも、修一さんの誕生日もずっと先。てか、何で修一さんて、バレンタインの翌日が誕生日なんだよっ。分散してくれよう)
言っても仕方ない不満を抱えながら、真島はふと思った。
(そうだ。イベントが無いなら、サプライズでもすっか)
幸か不幸か、今日如月の帰りは遅いらしい。彼が帰宅した際に、何か嬉しいびっくりを用意しておくのはどうだろうか。
(何がいいかな……)
真島は、あれこれ悩んだ。取りあえず、三枝に相談するのだけは止めておく。そのせいで、奴がタチかもしれないというとんでもない誤解をしてしまったのだから。
その時ふと、真島はソファの片隅に目を留めた。如月のワイシャツが置いてある。彼のお気に入りだが、急いでいたのか、無造作に置いてある。
(おお、いいことを思いついた。恋人へのサプライズプレゼントといったら、これだろ)
真島はにやりとすると、ブルーのそのシャツを手に取った。寝室へと駆け込む。
(ズバリ、彼シャツだ!)
意気揚々と服を脱ぐと、真島はそのシャツに袖を通し始めた。洗濯前なのか、如月の体臭がふわりと香って、それが嬉しい。
(これ着て、お帰りって……、ん?)
前のボタンを閉じようとしたその時、真島は嫌な予感がした。脇の辺りから、ビッという音が聞こえたのだ。
(まさか……)
おそるおそる姿見に映してみて、真島は青ざめた。脇からその下にかけて、巨大な穴が空いているではないか。
(俺の方が体格良いんだった……!)
肝心な事実に、今さら気付いた真島であった。
(続きます)
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