2 / 47

大罪人の罰 2(※)

 青年の鼻からくぐもった悲鳴が漏れた。ほとんど濡れていないそこに、本来は挿れるべきでないものを押し込まれたのだ。痛苦を伴わないはずがなかった。  どころか、後方の男は下卑た笑みをその顔に浮かべながら、紫色に変色する青年の尻を容赦なく叩いた。 「こちとら命がけで海に出てるんだ。体力回復させねえと、仕事にならねえんだよ」 「そう言って体力擦り減らすことしかしてねえけどなぁ!」 「おらっ! ちゃんと腰を振れ!」 「首が動いてねえぞ!」  傍から見れば、醜い大男達が美しい青年を使って犯すという、何とも酷い光景が繰り広げられているわけなのだが、その場にいる人間すべてが誰も彼を助けようとはしなかった。どころか、青年が犯されている様子を尻目に裸姿でカードゲームを楽しんでいる。 「ああ、くそっ! 負けたっ」 「よーし、次は俺だ! お前ら、とっとと終わせろ!」 「馬鹿野郎っ! 今、出そうなんだよ、邪魔すんな!」 「ふ〜……終わった、終わった。おら、こっち空いたから使えよ!」  まるで性の捌け口がそこにしかないかのように、男達はかわるがわる、たった一人の青年を弄ぶ。 「ああっ、出るっ、出るぞっ、飲めこめ!」 「んっ……んんっ、ぐむっ……!」  口淫を強いる男は己の昂ぶるがまま、青年の頭を自身に押しつけ射精する。強烈な臭いとともに放たれる白濁の体液は、青年の口から胃の中へと直接注ぎ込まれた。  それまでの硬度が嘘のように失せた男根が、青年の口からズルリと抜け落ちる。替わりにたっぷりの酸素が青年の肺を満たしていった。 「はっ……はあっ……はあっ……」 「おら、休むな! 動かせ、腰を!」 「あっ……んっ、ごめ……はあっ……なさっ……ああっ……!」  文字通り休む間もなく、青年は喘ぎながら腰を振る。  僅かに窓の外へ視線をやると、辺りは月明かりすらない漆黒の闇に包まれていた。  今夜の"罰"が始まったのは、昨日の日が暮れる前のこと。漁師として海に出る男達は、日の出が登る前に仕事にかかる。だとすれば、あと少し……と、青年は頭の中で自身に発破をかけた。 「これで全員、一回ずつ終わったかぁ?」 「え、二回じゃねえの?」 「つうか一回じゃ足りねえよ! 俺はまだまだヤれるぞぉ!」 「てめえの精力を聞いてるんじゃねえよ! 元聖女様に罰を与えたかって聞いてんだよ!」 「ここんとこサボって罰を受けてなかったからな、こいつは!」  罰、という単語に青年の胸は酷く痛んだ。 (そうだ。ちゃんと、償わなくちゃ……)  気を失っている間に見た夢が、青年が過去に犯した罪を再認識させた。  決して許されることのない、大罪を。

ともだちにシェアしよう!