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休憩

―公園 「…ぷっはぁ!生き返ったー!!」 「ごめんな森加瀬。自分のペースで走ってた。」  ほんとだよ。一緒に走ってるときも何事もなかったような涼しい顔して速く走るし。俺の事誘った割に話さないし。追いつくのも大変だったよ、全く。 「別に……てか、お前日課って言ってたけど、毎日走ってんの?」 「まぁな。なんか、サッカー部だった時の癖が抜けないっていうか。」 「あー、確かに。なんか高校の時に俺も走ってたわ。」 「森加瀬って高校の時は陸上だったんだ。」  間違ってはない。陸上部に入ったときは短距離がやりたくて入った。が、実際やってみると顧問にそそのかされて長距離やらされたのは俺の苦い思い出の一つだった。 「そうだよ。知らなかったの?」 「今知った。なんか、文化系やってるイメージ強くて。」 「なんでだよ」  確かに今の会社って文系だよなぁ。理系も入るときあるけど、基本文系じみた事が多い気がする。考えてみたけどちょっと違ったり。俺の勤めてる会社が割とハイスペックな人材が多いのはその為か。納得。 「そろそろ走るか。」 「だな。てか、どこまで走るん?」 「俺のコースなら池まで走って折り返して、この公園まで。」 「遠っ。毎回そんなの走るとかお前体力モンスターだろ!?」 「そう?なんか、走ってると慣れちゃった。」  てへっと舌を出すがさっきの発言のインパクトが強くてそれどころじゃない。すごい奴と走ってる事に気が付いた。もうヤダ、帰りたい。またあのペースで走るのやだぁ! 「森加瀬?」 「ゆっくり、走ってくれるなら、一緒に行く。」  黙っている俺を不思議に思ったのかちーちゃんの美形が俺の顔を覗き込む。男でも落ちそうなそのビジュの耐性は俺についていない。 「じゃあ、ゆっくり走るわ。」 「お手柔らかに。」  公園を出て、真っ直ぐ池のある方を向く。ちょっと遠いけど、頑張って走ってみる事にした。 「森加瀬、大丈夫?」 「大丈夫。さっきよりマシ」 「なら、このまま走りきろーな。」  あの公園から出て10分ぐらいたっただろうか。さっきは遠くに見えていた池が近づいてきた。 「ちーちゃん。ここってこんなにきれいだったっけ?」 「そうか?毎日通ってて見慣れてるからわからん」  ちーちゃんはこういうが俺はきれいだなって思った。なんでかって?晴天に恵まれて池が反射してるからだよ。まぁ久しぶりに来たっていうのもあるけど、きれいな事に変わりはない。 「森加瀬」 「ん?何?」 「あのさ、この後暇?」 「多分暇。」 「そっか、じゃあ俺んちで飯食わねぇ?」  まさかの飯のお誘いでした。いや、俺は早く家に帰って撮りためた朝ドラ見たい……。そう言ったらちーちゃんは悲しむだろうか。いや、むしろ強引に自分の家に連れ込みそうだ。 「いいけど……」 「やったー!実は実家から大量のほうれん草とベーコン貰っちゃってさ。消費するの手伝ってよ。」 「まじ?じゃあご相伴にあずかろうかな。」 「ありがと。じゃあ、最後に頑張ろ!」  優しく俺の背中を叩くちーちゃんに不覚にも励まされ、やめろと言ってしまった。まぁ、大した事じゃないんだけど。てか、さりげなくスピードアップするな。俺を殺す気か。 「おい、バカ!スピード上げんなって!」 「あ、ごめん。」  無意識に挙げられたスピードに少しむかつく。それがたとえ故意であったとしても腹立つが。でも、家出る時は一人で走るつもり満々だったけど、誰かと走るのも思ったより悪くない。

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