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優雅(?)

―森加瀬宅 「朝飯、うまかった」  ちーちゃんの家から帰ってきてすぐにテレビをつけた。すると古の時代劇の再放送があった。まだやってるんだな、と思ってリモコンに手を伸ばす。 ポチッ  小さなボタンを指の腹で押し、録画リストを開く。するとそこにはしっかり整理された今までの録画番組が並んでいた。確か先週の日曜日に画面を整理したんだっけな。 「いつから見てないんだっけ?」  ボタンを操作しながら前回の記憶をたどる。あまり詳しいことは覚えていないが前の話は主人公が亀とすっぽんを間違えてリーダーの献上する回だった気がする。一目見ればわかりそうな亀とすっぽん。笑いのツボが浅いというのもあって爆笑した気がする。 「ああ、ここだ。」  手元をカチャカチャしていると最後に見たであろうシーンで止まっているのビデオを発見した。よし、これだ。早速真ん中の決定ボタンを押すと過去のシーンから流れ始める。 流れる映像を何も考えずに見ていた。今は主人公が前回負けてしまった相手を見返すために剣術の修行をしている所だった。 ブーブー  ダイニングテーブルの上に放置していたスマホがバイブで身を揺らしながら着信を伝えた。誰かと思って画面を見ると勤めている会社の社長からだった。 「はい」  流れ続ける画面を一旦停止させて電話に出る。 「あ、もしもし森加瀬くん?」 「はい、森加瀬です。何かありましたか?」 「あのね、暇だったらでいいんだけど、ランチ一緒に食べない?」  まさかのお昼のお誘いでした。なんで俺?!  善し悪しの前になんで自分なんだろうという疑問の方が大きい。俺は知らない間に何かやらかしてしまったんだろうか…… 「俺でよろしければいくらでも!!」 「そっか。よかった~。じゃあお昼に駅前集合ね」 「は、はい!了解しました。失礼します」  やばい……心臓が、おかしくなりそうだ……  特に何かした記憶もないし、社長の側近でもない。仕事の話とかじゃなくてただのお茶会とかだったらいいなぁ。  バクバクする心臓を抑えながら再びソファーに戻る。さっきの続きを見たけれど、社長の呼び出し(?)の件が怖すぎて内容はあまり入ってこなかった。

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