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第1話-2

今日は寝坊してしまい、ショートカットできる通行人の少ない裏道を歩いていた。……何度も通っているはずだが、今日は薄暗かった。大通りにもう少しで出るといったところで異変が起こった。……なにか、黒くて邪悪な影が見えたのだ。そこから目の前が……クソ、思い出したくも無い。 「思い出しちゃダメですよ。アレはまだあなたの頭の中にいます」 びく、とウェインの体が分かりやすく跳ねた。 「俺が荒療治したので今のところは大丈夫です。病院を紹介するのでそこに行って……ああ、でもアレの半分は俺の中にも居るので一緒に向かいましょうか。ウェインさん、この後ご予定は?」 「ま……おい、勝手に話を進めるなよ。何の話をしてるんだよ」 「ウェインさんは、魔法って、信じますか」 「は?魔法なんて……」 「信じてないならそれで良いです。そういう人もたくさんいますから。でも、今回だけ俺の言う事を信じて一緒に病院に行きましょう」 アレを忘れたいでしょう。 ウェインは訝しげにチャーリーの目を見た。黒に近い緑の瞳は嘘を言っているようには見えなかった。 「忘れられるのか、アレを」 「ええ、おそらく思い出せなくなるくらいには。思い出すとまた呑まれます」 あいつらには手を焼いているんです。俺たちを襲わないから。 チャーリーは深く息をついて、カフェオレを飲み干すと立ち上がった。 「さ、落ち着いたようだし行きましょうか」

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