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第1話-6
「君って、魔法は信じる?」
まただ。
ウェインは嫌気がさしてきた。チャーリーもそうだが、魔法だと?あるものか。
「信じてくれないと話ができないんだ。魔法がある前提のお話になるからね」
「はぁ……なら、信じますよ、今だけは」
医師は口角を上げた。
「アレに遭ったのは災難だったね。もう分かっていると思うけど、アレは君たちの世界のものじゃないんだ」
「君たちの世界……?じゃあ魔法の世界のものとでもいうのか?」
「そうだね。ただこちらの住人も手を焼いているんだ。最初は人の念が暴走したものだと思ってたんだけど、どうも違うみたいだし」
「は……」
魔法の世界?こちらの住人?人の念?
何を適当な事を言っているんだ。半信半疑どころか全て嘘に聞こえる。タチの悪い宗教団体の施設にでも連れてこられたのか?
ウェインがそう訝しむと、医師がヘラヘラ笑いながら言った。
「あっ、今ここをタチの悪い宗教団体の施設だと思ってるだろ」
「えっ!?」
「オレはね、その気になれば人の気持ちを読むことができる魔法使いなんだよ。レアな魔法使いなんだよ〜良いでしょ?」
「……」
「信じてないね。最近になって魔法使いとそうでない人たちとの距離は近づいたと思ってたけど、まだまだ君の反応が一般的なんだろうね」
さて、と医師は続ける。
「ともかくアレね。アレの正体は分からないんだ。人の頭に潜り込んで幻覚を見せたり、頭の中を真っ暗にして人として生活出来ないようにしたり、そんな事をしてしまう。君はラッキーだよ。チャー坊に助けて貰って、病院にまで来てくれたんだから」
ウェインは何が何なのか、いよいよ分からなくなってきた。色々聞きたいことはあったけど、頭の中がぐちゃぐちゃで何から聞けば良いのか分からない。「治療はしておいたよ。アレを思い出せなくなる薬も処方しておく。何か聞きたいことある?」
あ、あ、聞きたいこと?聞きたいこと……ええと、
「チャーリーはっ?」
予想外に間抜けな声が出てしまい、ウェインは恥ずかしくなった。
「チャーリー、あいつどっか行っちゃったけど!平気なんですかね!?」
「チャー坊?うん、平気じゃないよ。君の代わりにアレのほとんどを頭に取り込んじゃったから」
「ま、魔法使いでもアレを、その、出来ないんですか?」
「……?ん?ああ、そうか。…….あの子は魔法使いじゃないんだ。魔法は使えるんだけどね。オレやあの唐変木……マシューとかならまだアレをどうにか出来るけど、あの子はダメだよ」
今は治療室にいるんじゃないかな。待っててあげたら?
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