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第2話-2
「だったら見せてやろうか?」
よく通る低い声でマシューが言った。
ウェインはマシューの方を見ると、彼はかけていたサングラスを取り、ウェインの方を見つめていた。……サングラスを取ると、この男はますます端正な顔立ちをしていることが分かる。よく見ると体つきも逞しく男らしい。愛想のかけらもないが、こりゃモテるだろうな、とウェインは思った。
「魔法をですか?」
「ああ。魔法を、だ。おれのは他のと比べると派手で分かりやすいからな」
「種類があるんです?あ、炎の魔法とか氷の魔法とか?属性的な?」
「なんでも」
「なんでも?」
「おれは、そういった単純な魔法なら大体のことは出来る。何が見たい」
「なら、炎の後に氷を見せてくださいよ」
思わずそう答えたが、ウェインはまだ半信半疑だった。チャーリーといいさっきの医師といいこの男といい、胡散臭い。胡乱な連中にしか見えない。本格的におれは怪しい宗教施設に拉致られてしまったんじゃないか?
マシューは小さくため息をついて立ち上がり、来い、とこちらを振り向きもせず歩き出した。
1階分階段を降り、裏口らしき扉を開けて中庭のような場所に出る。病院にこんなところがあったのか。
「離れていろ。見せてやるから」
「あ、はい」
マシューが中庭のちょうど真ん中あたりに移動し、ウェインの方を振り返ったと同時に彼の周りに火花が散った、ように見えた。
「ちょっとまって。調節する」
マシューは斜め下を見て、しばらく自分の頭の上で火花の弾ける量を強くしたり弱くしたりしてパチパチ飛ばした。
そしてまたウェインの方を見た。
「見てろ」
そこから見た景色は幻想的すぎて、ウェインはこれは白昼夢なのではと疑った。
頭の中で描いた花火や炎を使った曲芸を、そのまま宙に描いたようなパフォーマンスだった。
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