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第2話-3

「分かりやすい魔法は、これくらいかな。分かった?」 いや全然。 とはとても言える雰囲気ではなかった。マシューの「もう終わって良い?」の圧が重すぎたからだ。 マシューは携帯端末を確認すると半ば放心状態のウェインを通り過ぎ、一人で病院の中に消えた。 ウェインも慌てて彼の後を追うが、歩くのが早すぎて追いつけない。何をそんなに急いでいるんだ。 途中でマシューを見失い院内を彷徨い、最終的に彼を見つけた場所は受付だった。 受付のベンチに座った誰かと、立ったまま言葉を交わしている。 「あっ、ウェインさん!」 ベンチに座っていたのは治療を終えたチャーリーだった。ウェインに気付き、手を振った。マシューはウェインを見て、あからさまに嫌そうな顔をした。 ウェインはチャーリーに思わず駆け寄り、大丈夫なのか?と尋ねた。先程の溌剌さとは打って変わって顔色が真っ青だったからだ。目の下のクマも酷い。三日間不眠不休で働き詰めたような不健康さだ。 「ええ、少し良くなかったみたいですが、まあ平気ですよ」 当の本人はヘラヘラしている。ヘラヘラしているフリをしている、と言った方が良いかもしれない。それから急に思い出して、 「ああそうだ、さっきリダクナさんが来てウェインさんに伝え忘れてたって……完全に取り除けてない可能性があるから、来週も来院してって」 「取り除く?……アレを?」 「うん、あれ、気付かなかった?取り除く時結構気持ち悪くなるはずなんだけど」 「いや、全く……」 そっか、とチャーリーは呟いた。それなら良かった、とも。 「なら、ほとんど治療は済んでるのかもしれませんね。来週再発してないか経過観察して、終わりじゃないかな」 「チャーリー……さんは、どうなんだ?」 「あはは、そんな丁寧に呼ばないでくださいよ。チャーリーで良いですよ。俺はアレをかなり取り込んでしまったみたいだから、しばらく通院が必要です」

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