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第5話-8

「空を飛べない事も無いですが、好き好んで飛ぶ魔法使いを俺は見た事ないですね」 軽快に笑いながらチャーリーは言った。 炎や氷を出せる魔法使いは山ほどいますが、と彼は付け足した。 「魔法使いって箒で空を飛ぶもんじゃ無いのか?」 「いいえ、まあ、飛行機がありますからね」 「そんな夢のない……」 ファンタジーは所詮ファンタジーだったか、とウェインは残念に思った。炎や氷を出せる魔法使い、はマシューのような人のことだろうか。あのパフォーマンスは確かに手品で出来るクオリティでは無かった。 チャーリーは「俺も全容は把握できていないんですけど」と前置きをしてこの世界に存在する魔法の説明をした。 「魔法使い、の素質のある人の体の奥深く……脊椎に沿っている事が多いらしいんですけど、魔力が流れてる血管が普通の人より1本多くあるんです。それが魔法の元なんです」 「ゲームのMPみたいなもんか」 「MP……?」 「すまない、続けてくれ」 「ああはい、その……魔力の道、って俺たちは言ってます……それが無ければ魔法は使えないんです」 「へぇ〜じゃあおれが必死に練習をしたところで骨折り損ってわけか」 「ええ。それで……まず前提として、魔力っていうのは物質の力を増長させる手伝いをする不思議な力、なんです」 「は?どういうこと?」 チャーリーはうーーーん、と目を瞑り眉間に皺を寄せて考えた。考えがまとまったのか、「たとえば」 「鍋に水を入れる」 「うん」 「魔力を使えば、石炭や火や電力の代わりにその水を沸騰させる事ができるんです」 「ふー……ん?へぇ」 「とか、冷たい……キンキンに冷えたビールを冷たいままにしておけます!」 「お前未成年だよね?」 「マシューが良く飲むんです……」 ウェインはなるほど、と頷いた。炎や光を本人から出すのはその応用って事?とチャーリーに聞くと、その通りです、と笑顔で頷いた。 「あの先生は何なんだ?人の気持ちが読めるとか言ってたけど」 「あ〜……あの人の魔法は系統が違うんです。南国の呪術で、あまり詳しく分かってないんですよ」 分かっていない事もあるのか。 それから魔法に関しての話を色々と聞き、ウェインは頭が締め付けられるように痛くなるのを感じながら要点をまとめた。 ・魔法は物質の力を増大させるもの(基本)。 ・魔力の道(魔力が流れている血管)の大きさによって使える魔法のレベルが変わってくる。 ・ざっくり、物理的な魔法と、精神的な魔法が存在し、後者の方がタチが悪い。 ・今回の黒い影の事件は後者の魔法使いが主犯の可能性が高い。 こんなものか。 ウェインはチャーリーに例を言うと、すっかり冷めたコーヒーを一気に飲み干した。 昨日今日で事件に巻き込まれたり、彼の想像を超える世界の話をされ、正直結構参っていたのだ。

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